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第十章_空白と余白
有栖_10-8
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「ということで、まずは出来ることを探す為に、情報を展開するわ。みんなも知っている情報があれば教えて。もちろん、佐倉さんも」
京の言葉に有栖と反保、そこにまだ残ってくれている佐倉も頷いた。
「まずはデータの改ざん『レシエントメンテ』について」
そこから京は一色誠と真木が調べていた『レシエントメンテ』の情報を全員に話した。
当然、驚きはしたが、それでも現状のデータ改ざん能力を見れば納得せざる得ない。
「実質、証拠は変更し放題だし、改ざんするために証拠を作ることもできるってことですよね? 思っていた以上に、治安の崩壊も待ったなしって感じですね」
有栖は苦笑いでそう言った。
「でも『対抗策』もあるらしいの。それも調べていたみたい……見つかってないようだけど」
京の発言は唯一の希望だった。
「あるとしたら警察ですかね……でも、今、警察に対して探るのは即アウトですよ。できるだけ水面下で動かないと」
「反保の言う通りだ。そこは注意する点でもある」
佐倉が難しそうな表情で言葉を添えた。
「今回の件、中心で動いていたのはあの天使という男だろう。ここに直接来て、方針を話したぐらいだからな。そうなると、『レシエントメンテ』については、アイツが関わっている……そうなると我孫子が使えるか?」
「我孫子?」
その言葉に有栖が不快な表情を浮かべたが、佐倉は気づかない振りをして続けた。
「警察の内通者として我孫子をずっと怪しんでマークしていたんだ。天使とも知り合いのようだったしな。だが……」
「どうしました?」
「今回のデータ改ざんの際に我孫子が内通者として疑い、集めていた証拠類も消されているんだ。警察には秘密裏に動いていたから、言及もできてはいない」
「ですが、めちゃくちゃ怪しいですね」
「そうだ、怪しいんだ。その怪しさに拍車をかけることがある。過去にも警察への内通者は数人いたと思われる。だが、それらは不自然なタイミングで死亡し、新たな内通者が設けられてきた。いわゆるリレーのような方式だ。その周期は三年。しかし、我孫子だけは妙に長く既に五年以上は内通者として存在している。だから、証拠も多く集まってきていたんだが……」
「妙ですね。我孫子さんは戦闘能力が異常に高いわけじゃない。これまで同様に消せないわけがない――つまり、『消したくても消せない』ということですか?」
反保は自身の推理を述べる。それに佐倉も頷いた。
「我孫子、という人物は警察に死なれたら困る『何か』を持っている。『レシエントメンテ』の構想があったならば、例え殺害してもその死すら改ざんすることも、消すことも出来るはず。それなら、尚更問題はないはずなのに実行しない。つまり、その『何か』は『レシエントメンテ』に関すること――そう考えるのが自然ですね」
京が理路整然と考え、言葉を発する。皆の方向性は同じ方向を向いていた。
「我孫子から『レシエントメンテ』の対抗策に関する情報を見つける。そして、警察のデータ改ざんの能力を無効化か明るみ出来れば、目的は達成とも言える。だが――」
「どうかしましたか?」
ポジティブな方向へと思考がまとまりそうだったが、佐倉が言葉を濁す。
「現時点では我孫子は怪しい、というだけで、勾留することはできない。正式な理由で捕まえておかないと逃げられる。何か犯罪まがいのことをしてくれていれば良いんだが……」
その言葉を聞き、真っ先に動いたのは有栖だった。彼女は自分のデスクへと駆け込むとパソコンでユースティティアのデータベースへとアクセスした。
京の言葉に有栖と反保、そこにまだ残ってくれている佐倉も頷いた。
「まずはデータの改ざん『レシエントメンテ』について」
そこから京は一色誠と真木が調べていた『レシエントメンテ』の情報を全員に話した。
当然、驚きはしたが、それでも現状のデータ改ざん能力を見れば納得せざる得ない。
「実質、証拠は変更し放題だし、改ざんするために証拠を作ることもできるってことですよね? 思っていた以上に、治安の崩壊も待ったなしって感じですね」
有栖は苦笑いでそう言った。
「でも『対抗策』もあるらしいの。それも調べていたみたい……見つかってないようだけど」
京の発言は唯一の希望だった。
「あるとしたら警察ですかね……でも、今、警察に対して探るのは即アウトですよ。できるだけ水面下で動かないと」
「反保の言う通りだ。そこは注意する点でもある」
佐倉が難しそうな表情で言葉を添えた。
「今回の件、中心で動いていたのはあの天使という男だろう。ここに直接来て、方針を話したぐらいだからな。そうなると、『レシエントメンテ』については、アイツが関わっている……そうなると我孫子が使えるか?」
「我孫子?」
その言葉に有栖が不快な表情を浮かべたが、佐倉は気づかない振りをして続けた。
「警察の内通者として我孫子をずっと怪しんでマークしていたんだ。天使とも知り合いのようだったしな。だが……」
「どうしました?」
「今回のデータ改ざんの際に我孫子が内通者として疑い、集めていた証拠類も消されているんだ。警察には秘密裏に動いていたから、言及もできてはいない」
「ですが、めちゃくちゃ怪しいですね」
「そうだ、怪しいんだ。その怪しさに拍車をかけることがある。過去にも警察への内通者は数人いたと思われる。だが、それらは不自然なタイミングで死亡し、新たな内通者が設けられてきた。いわゆるリレーのような方式だ。その周期は三年。しかし、我孫子だけは妙に長く既に五年以上は内通者として存在している。だから、証拠も多く集まってきていたんだが……」
「妙ですね。我孫子さんは戦闘能力が異常に高いわけじゃない。これまで同様に消せないわけがない――つまり、『消したくても消せない』ということですか?」
反保は自身の推理を述べる。それに佐倉も頷いた。
「我孫子、という人物は警察に死なれたら困る『何か』を持っている。『レシエントメンテ』の構想があったならば、例え殺害してもその死すら改ざんすることも、消すことも出来るはず。それなら、尚更問題はないはずなのに実行しない。つまり、その『何か』は『レシエントメンテ』に関すること――そう考えるのが自然ですね」
京が理路整然と考え、言葉を発する。皆の方向性は同じ方向を向いていた。
「我孫子から『レシエントメンテ』の対抗策に関する情報を見つける。そして、警察のデータ改ざんの能力を無効化か明るみ出来れば、目的は達成とも言える。だが――」
「どうかしましたか?」
ポジティブな方向へと思考がまとまりそうだったが、佐倉が言葉を濁す。
「現時点では我孫子は怪しい、というだけで、勾留することはできない。正式な理由で捕まえておかないと逃げられる。何か犯罪まがいのことをしてくれていれば良いんだが……」
その言葉を聞き、真っ先に動いたのは有栖だった。彼女は自分のデスクへと駆け込むとパソコンでユースティティアのデータベースへとアクセスした。
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