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エピローグ

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「どうぞ、入ってください」
 ノックの音に反応すると天使はその発信源を招き入れた。
 その人物は無言のまま、椅子に座る天使の前まで進むと、一定の距離のところで立ち止まった。言葉を発しないのは警戒、というよりは怒りを表しているようにも思える。
「キミを呼んだのは他でもない。私の下について働いて欲しいんだ」
 天使は腰を上げ、机を回り込むように歩く。
「おそらくユースティティアの一部が不穏な動きをすることが想定される。それの対応をして欲しいんだ。キミにはうってつけの仕事だろう?」
 その言葉に、彼はぴくりと反応し、天使に睨むような視線を向けた。
「キミの心中は察するよ。とても不幸な事件だった。だからこそ、その気持ちをこの仕事にぶつけて欲しいんだ――飛田 晴太くん」
 天使は飛田に向かって優しく微笑んだ。その目に偽りの慈愛を浮かべながら。
「解りました。聖先輩を殺した組織を潰せるなら――俺は何だってやりますよ」
 飛田は天使の期待に応える言葉を、冷酷に言い放った。
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