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第二章:ファイティングプロレス
有栖_2-6
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そのあとはエレベーターで下のフロアに降りて、棚神選手からジムの紹介をしてもらった。
広々としたフロアには有酸素運動や筋トレを行える様々なマシンや機器が備え付けられていた。シャワールームも完備でそこら辺にある安っぽいジムとは比べものにならない豪華な仕様だ。
ジムのフロアは二つあり、階は違うが両方とも同じ設備があり、今の時間帯は使用している人はいなかった。
「予約システムがあり、選手は専用のアプリから使用する時間帯を予約できるんです。確か、もう少ししたら使用する選手もいますよ」
棚神選手がスマホにそのシステムであろうアプリを表示して見せてくれた。もしかしたら、彼は選手が使用していない時間を考慮していたのかもしれない。
「なるほど。これなら効率良く使用できますね」
「まぁ、それもありますが……」
「他にも理由が?」
明らかに言葉を濁す棚神選手に有栖が質問をする。
「いやぁ、相手を強く意識する選手もいますので」
「あぁ、なるほど。バチバチってやつですか」
「バチバチってやつです」
「もしかして、同じ設備のジムが二つもあるのって……」
「そういうことです。一昔はライバル同士の選手が鉢合わせてケンカってこともありましたよ。このシステムを導入してからは、そんなこともなくなりましたが」
その後、再びエレベーターに乗り一階へ。
「次は道場に行きましょう」
棚神選手に連れられ、オフィスビルを出て、隣接する道場へと向かう。中に入ると、少し汗の臭いが鼻を突き、体育館を思い出させた。
「棚神さん! チワッス!」
「棚神さん! チワッス!」
周囲を見渡す前に、元気の良い声が響く。
その声に有栖達が振り向くと、二十代前半であろうジャージ姿の若い二人の男性が頭を下げている。
「お疲れさん。えっと、彼らはウチに所属するヤングヒーローの中島と海野です。二人とも、こちらはユースティティアの有栖さんと反保さん。こちらに来た理由は事前に連絡した通りだ。自己紹介をしなさい」
棚神選手に言われ、中島と海野の二人は頭を上げ、有栖達を見ると、
「自分は海野翔(うみのしょう)です! 本日は宜しくお願い致します!」
海野が頭を下げると、続けて、
「自分は中島祐(なかじまゆう)です! 本日は宜しくお願い致します!」
中島が自己紹介をして頭を下げる。
顔を上げたときに見えた顔は、海野は少し海外の人のようにも見える堀の深い顔立ち、髪の毛は黒で肩ぐらいまで延びているさらさらストレート。中島は大きな顔に対して、目などパーツは少し小さめで髪の毛は黒で天然のチリチリパーマだった。
棚神選手が口にしたヤングヒーロー、というのはファイティングプロレスに所属する新人選手のことだ。下積み、と言っても過言ではない。各選手の雑用を行いながらも、トレーニングをし、試合にも出場する。この期間を数年繰り返した後、海外や他団体への武者修行を経て、再びファイティングプロレスに一流選手となって戻ってくる、というのが選手育成の流れだ。そのことを有栖はプロレスを見ていたことから、反保は彼女に教えられ知っていた。
だが、気になったのはそのヤングヒーローの二人が言ったことだ。
「本日は宜しくお願いします、とは?」
有栖が棚神選手に聞いた。
「ここから先はこの二人が案内します。その方が都合が良いので」
「都合……ですか?」
「えぇ、詳しい理由は二人から聞いてください。海野、中島、連絡した通りに頼むぞ」
「はい!」
「はい!」
気持ちの良い返事が飛んでくる。
「では、私はこのあと会議があるので失礼します」
そう言うと、棚神選手は一礼し、道場から出て行った。
広々としたフロアには有酸素運動や筋トレを行える様々なマシンや機器が備え付けられていた。シャワールームも完備でそこら辺にある安っぽいジムとは比べものにならない豪華な仕様だ。
ジムのフロアは二つあり、階は違うが両方とも同じ設備があり、今の時間帯は使用している人はいなかった。
「予約システムがあり、選手は専用のアプリから使用する時間帯を予約できるんです。確か、もう少ししたら使用する選手もいますよ」
棚神選手がスマホにそのシステムであろうアプリを表示して見せてくれた。もしかしたら、彼は選手が使用していない時間を考慮していたのかもしれない。
「なるほど。これなら効率良く使用できますね」
「まぁ、それもありますが……」
「他にも理由が?」
明らかに言葉を濁す棚神選手に有栖が質問をする。
「いやぁ、相手を強く意識する選手もいますので」
「あぁ、なるほど。バチバチってやつですか」
「バチバチってやつです」
「もしかして、同じ設備のジムが二つもあるのって……」
「そういうことです。一昔はライバル同士の選手が鉢合わせてケンカってこともありましたよ。このシステムを導入してからは、そんなこともなくなりましたが」
その後、再びエレベーターに乗り一階へ。
「次は道場に行きましょう」
棚神選手に連れられ、オフィスビルを出て、隣接する道場へと向かう。中に入ると、少し汗の臭いが鼻を突き、体育館を思い出させた。
「棚神さん! チワッス!」
「棚神さん! チワッス!」
周囲を見渡す前に、元気の良い声が響く。
その声に有栖達が振り向くと、二十代前半であろうジャージ姿の若い二人の男性が頭を下げている。
「お疲れさん。えっと、彼らはウチに所属するヤングヒーローの中島と海野です。二人とも、こちらはユースティティアの有栖さんと反保さん。こちらに来た理由は事前に連絡した通りだ。自己紹介をしなさい」
棚神選手に言われ、中島と海野の二人は頭を上げ、有栖達を見ると、
「自分は海野翔(うみのしょう)です! 本日は宜しくお願い致します!」
海野が頭を下げると、続けて、
「自分は中島祐(なかじまゆう)です! 本日は宜しくお願い致します!」
中島が自己紹介をして頭を下げる。
顔を上げたときに見えた顔は、海野は少し海外の人のようにも見える堀の深い顔立ち、髪の毛は黒で肩ぐらいまで延びているさらさらストレート。中島は大きな顔に対して、目などパーツは少し小さめで髪の毛は黒で天然のチリチリパーマだった。
棚神選手が口にしたヤングヒーロー、というのはファイティングプロレスに所属する新人選手のことだ。下積み、と言っても過言ではない。各選手の雑用を行いながらも、トレーニングをし、試合にも出場する。この期間を数年繰り返した後、海外や他団体への武者修行を経て、再びファイティングプロレスに一流選手となって戻ってくる、というのが選手育成の流れだ。そのことを有栖はプロレスを見ていたことから、反保は彼女に教えられ知っていた。
だが、気になったのはそのヤングヒーローの二人が言ったことだ。
「本日は宜しくお願いします、とは?」
有栖が棚神選手に聞いた。
「ここから先はこの二人が案内します。その方が都合が良いので」
「都合……ですか?」
「えぇ、詳しい理由は二人から聞いてください。海野、中島、連絡した通りに頼むぞ」
「はい!」
「はい!」
気持ちの良い返事が飛んでくる。
「では、私はこのあと会議があるので失礼します」
そう言うと、棚神選手は一礼し、道場から出て行った。
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