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第二章:開幕
奉日本_2-1
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『サイバーフェスの開幕です!』
そのアナウンスが響くと歓声とともに多くの人々が会場に流れ込んできた。そして、各々が興味のある展示へと足を運んでいく。
有象無象のように見える群衆も、詳細に見れば著名人が多数いる。このサイバーフェスに招かれている客人に一般人というカテゴリーは存在しない。
「盛況ですね」
キッチンカーの中で客が来たときに効率よく提供できるように準備をしながら高本――いや、奉日本はサイバーフェスの様子を見ていた。
展示場の詳細は彼のいる位置からは見えないが、様々な声が混ざり合い、重なり、大きな雑音となる様子は祭の雰囲気に似ている。伝統的なものではなく、空間を切り裂く色とりどりのレーザー光やロック調の音楽が流れる様子は大規模な音楽イベントに近いだろう。フェス、という言葉に偽りはないようだった。
――働いていますね。人もロボットも。
賑やかな喧騒の中でも、マザー・エレクトロン株式会社、警察、ユースティティアの人々は課せられた役割を果たすように業務に従事している。その中には客をナビしていたり、忙しなく往来を繰り返すロボットの姿もあった。
「時間があれば見て回りたいけど……」
サイバーフェスは最新技術が集まっているので、理論や理屈を知らなくても近未来の世界を体験ので見ているだけでも楽しめる。いち早く未来を経験できる、というのも希有なことだ。奉日本がそう呟いたのは純粋な好奇心からだったが――
「無理そうですね」
既にぞろぞろと休憩エリアに入ってきている客達を見て、彼はその好奇心を捨てた。広大なエリアで行われるショーに、それを見て回る多くの人々。必然的に休憩する人も多くなる。
一人に男性が奉日本のキッチンカーの前に来ると、
「コーヒーを一つ」
そう注文した。奉日本は笑顔で応え、準備を始める。ミルで豆を挽き、カップにドリッパーとペーパーフィルターをセットし、先程挽いた豆を入れて沸かしておいた湯を注ぐ。本日用意したブレンドの香りが漂うと、それ閉じこめるように紙コップに入れて蓋をする。
そして、予め用意していたキャンディ包みの丸いチョコレートと一緒に客に渡すと、
「今日は楽しんでください」
自分の気持ちを託すように、奉日本は笑顔でそう言った。
そのアナウンスが響くと歓声とともに多くの人々が会場に流れ込んできた。そして、各々が興味のある展示へと足を運んでいく。
有象無象のように見える群衆も、詳細に見れば著名人が多数いる。このサイバーフェスに招かれている客人に一般人というカテゴリーは存在しない。
「盛況ですね」
キッチンカーの中で客が来たときに効率よく提供できるように準備をしながら高本――いや、奉日本はサイバーフェスの様子を見ていた。
展示場の詳細は彼のいる位置からは見えないが、様々な声が混ざり合い、重なり、大きな雑音となる様子は祭の雰囲気に似ている。伝統的なものではなく、空間を切り裂く色とりどりのレーザー光やロック調の音楽が流れる様子は大規模な音楽イベントに近いだろう。フェス、という言葉に偽りはないようだった。
――働いていますね。人もロボットも。
賑やかな喧騒の中でも、マザー・エレクトロン株式会社、警察、ユースティティアの人々は課せられた役割を果たすように業務に従事している。その中には客をナビしていたり、忙しなく往来を繰り返すロボットの姿もあった。
「時間があれば見て回りたいけど……」
サイバーフェスは最新技術が集まっているので、理論や理屈を知らなくても近未来の世界を体験ので見ているだけでも楽しめる。いち早く未来を経験できる、というのも希有なことだ。奉日本がそう呟いたのは純粋な好奇心からだったが――
「無理そうですね」
既にぞろぞろと休憩エリアに入ってきている客達を見て、彼はその好奇心を捨てた。広大なエリアで行われるショーに、それを見て回る多くの人々。必然的に休憩する人も多くなる。
一人に男性が奉日本のキッチンカーの前に来ると、
「コーヒーを一つ」
そう注文した。奉日本は笑顔で応え、準備を始める。ミルで豆を挽き、カップにドリッパーとペーパーフィルターをセットし、先程挽いた豆を入れて沸かしておいた湯を注ぐ。本日用意したブレンドの香りが漂うと、それ閉じこめるように紙コップに入れて蓋をする。
そして、予め用意していたキャンディ包みの丸いチョコレートと一緒に客に渡すと、
「今日は楽しんでください」
自分の気持ちを託すように、奉日本は笑顔でそう言った。
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