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第四章:三極-2-

反保_4-5

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 ――覚えていて、良かった。
 反保は会場のマップを記憶する際に、消火器の位置も覚えていた。だから、視界を奪われながらも、蹴られながらも自分の位置を明確にすることに努めた。大体の場所が解れば、消火器の場所も解る。あとは音切が自身にトドメを刺さないことを祈るのみだった。その点では、音切の痛めつけたい、という残虐性に助けられたことになる。
「次は……」
 反保は、目を拭いながら視界を確保する。まだ少しボヤケているが、先程よりは幾分は見える。しかし、白い煙が充満している現状では充分だった。
 ブン、ブン、と風切り音が聞こえる。どうやら、音切がナイフを振り回しているようだ。

 ――今、どこにいるかは大体解る。

 フロア全体の配置は記憶している。その記憶を頼りに動けば、正確な移動は可能だった。

 ――目指す場所は……あそこだ。
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