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奉日本-2

奉日本-2-2

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 有栖が慌てて飛び込んで来た日から二日後――彼女の探していた人物が来店し、彼は言付けをそのまま伝えた。その人物は驚きながらも、有栖の名前と彼女が所属する組織を聞いて、全てを受け入れた。
 そして、その人物から更にもう一人の人物に連絡が取られ、翌日には有栖が望む状況が整うことになった。
 スゴいな、と奉日本は素直に驚いた。彼の見立てでは有栖の望む状況は一週間以上はかかると思っていたからだ。当然、運要素の強いことではあるが、強運、という言葉で片づけるのが失礼なぐらいに有栖を中心に引きつけられているように感じた。
「高本さんには、この人が来たら言付けを伝えて欲しい。それで、上手く状況が整いそうなら自分に連絡してください。毎日、ランチはここに食べに来るんで。あと、お願いばかりで気が引けるんですけど、もう一つ――」
 有栖からの要望はそんなに難しいことではなかった。先程の言付けも彼女への連絡も奉日本にとっては日常の中で行えることだからだ。
 そして、最後の一つも、
「仕事の邪魔にならないなら」
 という条件で引き受けた。
 それは、ランチの時間が終了しバーへと切り替わる時間まで、店の一席を貸して欲しい、ということ。
 実際はそれほど邪魔にならないことは解っていたし、目の前で話が聞けるのなら奉日本にとっても興味深いことだった。

 そして、本日――ランチタイムが終了した奉日本の店のテーブル席にリザーブの札が置かれた。もちろん、外から見れば閉店状態なので必要はない。これは彼がバーへ切り替える仕事をしながらでも状況を確認できて、聞き耳の立てやすい場所へと座って欲しかったからだ。
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