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過負荷
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「こんなにも美しいネジの目つぶしを僕は、先人たちに申し訳ない」
と言いながら、配管を引っ張り出す作業のために壁を壊していました。
「船のかじ取りの再起動のシュミレーションのために最小限の付加で人工知能テレサを先に立ち上げてから再度計算の確認をしたいんだ」
退屈を紛らわす言葉をケニーは探しては語っている、アベイルには『頭の中で再々計算が起こっているのか』と感嘆したのを、少しばかり馬鹿にされたような感じに、また付け加えるのです。
「僕にとっても、すこしばかり厄介なことができたので、僕が一人ばかりではこの船の推進力不足になるのを防ぐための障壁の撤廃を申請するプログラムの書き換えを根底からするためだよ」
「君は常に煙に巻く政治家のような喋りをする。夜会ではないし、高度な弁論大会でもない、今のところこの船にいるのは私たち二人なのだよ、ケニアン。この私が、役立たずで申し訳ないと謝罪を求めているのかい」
「違う。僕の計算によると本当に時間がないんだ。目の前に迫っているアステロイドに何もせず手を休まって君を相手に講義をするわけにはいかない、」
「うむ、……船の推進力不足と言ったが、惰性で動力は無重力の波に乗っていると言うわけでもないと」
「それは半分正しい、今回はその反作用がエンジンルームの初期被弾で計算の半分以下まで落ちているのがこの前分かったばかりだ、そうなれば、僕のコントロールパネル計算では直線推進を止めて垂直落下しか出来ない」
「垂直落下?」
「僕は宇宙飛行士だ、絶望をカウントするのは徳ではない。それに僕が選ばれた理由は配線図の精密な暗記を最後まで更新できたからだ。僕は生粋のエンジニアだ」
憤慨はたまに力になる。疲れが消え、覚醒が増しているのを、アベイルは手を叩いて囃してみました。
「いやぁ、君はたまにすごく惚れるようなかっこいいことをさらりとのべるね。学生時代、モテただろう」
「スマナイがモテるとは意味が分からない」
「あ、いいや、そういうの。それよりも君がそのアストノートに志願した理由は他にあるのかい、天体が好きだとか星の物語やロマンスを語ることだったり」
ケニーはそれには答えませんでした。アベイルは仕方なく横に立ちつづけて作業を手伝いました。
「薄いフィルムのようなこれが船の配線ねぇ」
「僕が使っているマルチツールは髪の毛より薄い素材で切れ味も抜群だ」と辛辣に帰ってきます。アベイルには見ても分からないミクロの基板列の番号順の並び替えを補助的に手伝っているのです、ケニーが求めている微妙に違う基盤列のそれらの組み換えを一言一句間違えずに、阿吽の息ででした。それでも話しているとついつい脱線しては、喋るのでした。
最後の基盤を入れて、ランプが二度点灯した後、ケニーは少しだけ悲しい声を漏らしました。
「飛行士たちは全員が高いくらいの軍人の子どもだった。子どもといえるのは、出立式の時にそれぞれの親が二名来て航海の安全と祈願をしていたのを僕は見たから。彼らのはしゃぎようは、よく覚えている。…彼らは僕よりも、さらに言えば君ほども歳が上だと思う」
「私を前世紀の人間であるのに加算してくれてありがとう」
「誉めてはいないが、喜んでいるなら嬉しい」
「嫌みだよ、もうっ、この人はなんでこうも純粋培養に抜けているんだか」
事故防止の啓蒙活動で、習い、覚え、注意しあい、忘れるほど身に染みていました。なのに、突然、なんの予兆もなしに簡単に目の前の人が消えるのです。それは不運としかいえない出来事でした。
『おめでとうございます。第三エンジンを完全に切り離すことに成功しました。前方アステロイドの回避が可能となります』
AIの立体画像が進行状態の逐一報告を繰り返す中で、アベイルは左手をAIにかざして静かに言うのです。
「…テレサ、私の質問と回答を最優先で望む。君は現在、ロボット工学三原則の一を飛ばして、三の自己保持を持つ言動を優先したことを記録せよ」
「知ったことか」と、アベイルは呟いたのです。
「重力の重さは地球の三分の一。船内の重力を初期値に戻そう」それは火星に沿った生活を送るため。「僕は火星に行きたい」「そう」「君と行けるのが嬉しいといえば君は不快に思う」「何故」「君は望んで宇宙に乗ったわけじゃないのだし、君は突然こんな場面に出くわして…」「ああ、愛おしい人、君が身につけてしまった猜疑心で私の心が躍るじゃないか」「この人バカダ…この後、再起動が起きても心配しないで、システムが正常になったら船内はまばゆい光でしばらくはサングラスがいるかもしれないよ」「私と君の小指を離さないでいて、私は実はとてもさみしがり屋なのだよ」
「彼を生かせてくれ。私たちは明日結婚式をあげるはずだったのだ」
『お気の毒ですが』
「黙れ」
『…………』
悔やみの言葉など要らないのです。それは使ってほしくない絶望なのです。
「テレサ、私に力を貸してくれ。彼を目覚める方法を教えてくれ」
原因究明よりも処置が優先なのに、AIは同じ言葉を繰り返すだけです。
『もうしわけありません。その要求にこたえることはできかねます』
ああ、どうすればいい、どうしたらいい、数秒前の君じゃない、と、アベイルは体を震わせたのです。
『脳の破損により脳内の信号が微弱になりました。体の選択をお願いします』
「彼を僕がいたsleepに移せるか」
『再調整後、すぐにでも可能です。液体窒素の中に精子サンプルもいれておきますか』
「できる限りのことはしておいてくれ、彼のものはすべて」
『凍結に入ります。この先数時間は器械の安定に従い、棺を開けることはできなくなります。・・・何かお言葉でも』
開いている眼を閉じさせることが、こんなにも手が震えるとアベイルは笑いだしました。そして、言うのです。
「有り合わせで作ったにしちゃすごいだろ。私のコックリングで加工した君の目を盗んで作った工作だよ。いつか君が目覚めるとき私にウィットにとんだ罵倒をしてくれ」アベイルの手からケニーの指に指輪がはめられたのです。
と言いながら、配管を引っ張り出す作業のために壁を壊していました。
「船のかじ取りの再起動のシュミレーションのために最小限の付加で人工知能テレサを先に立ち上げてから再度計算の確認をしたいんだ」
退屈を紛らわす言葉をケニーは探しては語っている、アベイルには『頭の中で再々計算が起こっているのか』と感嘆したのを、少しばかり馬鹿にされたような感じに、また付け加えるのです。
「僕にとっても、すこしばかり厄介なことができたので、僕が一人ばかりではこの船の推進力不足になるのを防ぐための障壁の撤廃を申請するプログラムの書き換えを根底からするためだよ」
「君は常に煙に巻く政治家のような喋りをする。夜会ではないし、高度な弁論大会でもない、今のところこの船にいるのは私たち二人なのだよ、ケニアン。この私が、役立たずで申し訳ないと謝罪を求めているのかい」
「違う。僕の計算によると本当に時間がないんだ。目の前に迫っているアステロイドに何もせず手を休まって君を相手に講義をするわけにはいかない、」
「うむ、……船の推進力不足と言ったが、惰性で動力は無重力の波に乗っていると言うわけでもないと」
「それは半分正しい、今回はその反作用がエンジンルームの初期被弾で計算の半分以下まで落ちているのがこの前分かったばかりだ、そうなれば、僕のコントロールパネル計算では直線推進を止めて垂直落下しか出来ない」
「垂直落下?」
「僕は宇宙飛行士だ、絶望をカウントするのは徳ではない。それに僕が選ばれた理由は配線図の精密な暗記を最後まで更新できたからだ。僕は生粋のエンジニアだ」
憤慨はたまに力になる。疲れが消え、覚醒が増しているのを、アベイルは手を叩いて囃してみました。
「いやぁ、君はたまにすごく惚れるようなかっこいいことをさらりとのべるね。学生時代、モテただろう」
「スマナイがモテるとは意味が分からない」
「あ、いいや、そういうの。それよりも君がそのアストノートに志願した理由は他にあるのかい、天体が好きだとか星の物語やロマンスを語ることだったり」
ケニーはそれには答えませんでした。アベイルは仕方なく横に立ちつづけて作業を手伝いました。
「薄いフィルムのようなこれが船の配線ねぇ」
「僕が使っているマルチツールは髪の毛より薄い素材で切れ味も抜群だ」と辛辣に帰ってきます。アベイルには見ても分からないミクロの基板列の番号順の並び替えを補助的に手伝っているのです、ケニーが求めている微妙に違う基盤列のそれらの組み換えを一言一句間違えずに、阿吽の息ででした。それでも話しているとついつい脱線しては、喋るのでした。
最後の基盤を入れて、ランプが二度点灯した後、ケニーは少しだけ悲しい声を漏らしました。
「飛行士たちは全員が高いくらいの軍人の子どもだった。子どもといえるのは、出立式の時にそれぞれの親が二名来て航海の安全と祈願をしていたのを僕は見たから。彼らのはしゃぎようは、よく覚えている。…彼らは僕よりも、さらに言えば君ほども歳が上だと思う」
「私を前世紀の人間であるのに加算してくれてありがとう」
「誉めてはいないが、喜んでいるなら嬉しい」
「嫌みだよ、もうっ、この人はなんでこうも純粋培養に抜けているんだか」
事故防止の啓蒙活動で、習い、覚え、注意しあい、忘れるほど身に染みていました。なのに、突然、なんの予兆もなしに簡単に目の前の人が消えるのです。それは不運としかいえない出来事でした。
『おめでとうございます。第三エンジンを完全に切り離すことに成功しました。前方アステロイドの回避が可能となります』
AIの立体画像が進行状態の逐一報告を繰り返す中で、アベイルは左手をAIにかざして静かに言うのです。
「…テレサ、私の質問と回答を最優先で望む。君は現在、ロボット工学三原則の一を飛ばして、三の自己保持を持つ言動を優先したことを記録せよ」
「知ったことか」と、アベイルは呟いたのです。
「重力の重さは地球の三分の一。船内の重力を初期値に戻そう」それは火星に沿った生活を送るため。「僕は火星に行きたい」「そう」「君と行けるのが嬉しいといえば君は不快に思う」「何故」「君は望んで宇宙に乗ったわけじゃないのだし、君は突然こんな場面に出くわして…」「ああ、愛おしい人、君が身につけてしまった猜疑心で私の心が躍るじゃないか」「この人バカダ…この後、再起動が起きても心配しないで、システムが正常になったら船内はまばゆい光でしばらくはサングラスがいるかもしれないよ」「私と君の小指を離さないでいて、私は実はとてもさみしがり屋なのだよ」
「彼を生かせてくれ。私たちは明日結婚式をあげるはずだったのだ」
『お気の毒ですが』
「黙れ」
『…………』
悔やみの言葉など要らないのです。それは使ってほしくない絶望なのです。
「テレサ、私に力を貸してくれ。彼を目覚める方法を教えてくれ」
原因究明よりも処置が優先なのに、AIは同じ言葉を繰り返すだけです。
『もうしわけありません。その要求にこたえることはできかねます』
ああ、どうすればいい、どうしたらいい、数秒前の君じゃない、と、アベイルは体を震わせたのです。
『脳の破損により脳内の信号が微弱になりました。体の選択をお願いします』
「彼を僕がいたsleepに移せるか」
『再調整後、すぐにでも可能です。液体窒素の中に精子サンプルもいれておきますか』
「できる限りのことはしておいてくれ、彼のものはすべて」
『凍結に入ります。この先数時間は器械の安定に従い、棺を開けることはできなくなります。・・・何かお言葉でも』
開いている眼を閉じさせることが、こんなにも手が震えるとアベイルは笑いだしました。そして、言うのです。
「有り合わせで作ったにしちゃすごいだろ。私のコックリングで加工した君の目を盗んで作った工作だよ。いつか君が目覚めるとき私にウィットにとんだ罵倒をしてくれ」アベイルの手からケニーの指に指輪がはめられたのです。
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