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そばへ もっとそばへ

贈り物

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 ヒトがほしいものなど、実のところわからない。
 昔、アメリカの結婚式には受付で彼らのほしいものが書かれた冊子が置いてあった。
 今で言えば、アマゾンのほしいものリストの公開だ。

 けれども日本人には「不粋」でしかなかった。
 数少ない結婚式には出席させられたがもらって嬉しがる引き出物は一切なかったので、家族は文句でそのひはたのしそうだったし、私は誰も食べようとしない折りの赤飯やら鯛やら、果物やらを独りで食べていた。

 けれども私は、誰がが「えー」という不愉快で笑いをとることを早々とやめた。

 歓ぶ顔を見たかった。センスが合えたらいいと願った。けれども「後で楽しみに見るね」「明日感想を聞かせて」の返しも、善部うそっぱち。本気で激怒された意外は返事はなかった。私の選びようが悪いのかと、どんどん雑学を増やすため東急ハンズやPLAZAも足しげく通うのが好きだった今もかもしれない。


 本当は違うんだ。
 ほっぺであいさつをしたいだけなんだ。
 くびにかけるネックレスも、腕輪もピアスも君に会うかもしれないリボンもシャツもかいものにつき合うことも。
 唇をぬぐうようにキスがしたかったんだ。
 さわぐことでもなかろうに。
 君は私を見ている。
 唇が離れてても私は笑っているだろう。
「だめだな、ちゃんと栄養のあるものを食べようぜい」
 緊張からなのか、あのこの唇はいつもガサガサだった。
「はい、とろろ昆布ととろろ芋ときざみオクラのトロロザンマイナとろろうどん」「うわー、栄養たっぷり」博学のド変態はそういっては笑う。
「私は君が冬しか食わないという鴨南蛮を食ってやるワイ」いつも決まって鍋焼うどんしか食べない私はここでは趣旨を変えるのだ。
 夏も暑さのなかで冷房中のお店でうどんをすする。かさつくくちびるはやがて濡れる。昼はめん類とルーチンな人に会わせることも苦にはならない。小さな唇がモグモグと上品に食事をしている姿は見目だけのいいはし使いの悪さや行儀のできていない都会に私はいまだに適応障害を発症せずにいるのだ。

『ああ、その柔らかくほぐれた唇がいとおしい』
 一つ一つの贈り物に一つ一つ取り出して笑う顔。人に言われて傷つけられていこうひとと目をあわさなくなった長いまつげの瞳。うどんを食べているのに曇らない眼鏡。
「どうかお願い、目を閉じないでいてほしい」
 夢ではないという事実に、私は初めて人前で笑っていた。
「瞳のなかに私がいる凄いすごいぞ、これは」
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