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カチカンノソウイ
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「死んだらだれもが同じあの世に行くではないですか」
と、目の前のご婦人が紅茶のスプーンをかき回すのをやめた。
「はぁ」
わたしはのんびりと答えると、
「あの世でも、嫌いな人と顔を合わせるなんて、本当に嫌ですの」
本当に、が、とても強めで冷たい斬った断言で、喉を潤すようにカップに口をつけた。
熱いのか、ずずっとすする音に私は幻滅しながらその口元から目をそらした。
蒸れたまつ毛に露でもかかりそうなほどのさまを見つめて、カウンター越しに聞こえてくるサイフォンのごぼっという音だけに集中する。
たぶん眠いのだ。
「塩分が入りますよ」
と、冷たく言うほどには。
「誰かに喋りたくなったのかもしれません」
わたしのこの胸の内をと。
誰でもいい、誰にも知られたくはないけれど、誰かに喋りたい、誰かに喋っても害がないと言い切れるほどの第三者にと。
だから、なぜ私が?とは聞かない。
「今日はなぜだか、紅茶が甘いわ」
と、晴れ晴れと泣きはらした目でそういうので、「ほんのひとつまみの塩ですね」と言えば、キョトンとされる。
「わたくし、料理は得意な方じゃありませんの。お手伝いさんに来てもらってるか、できあいをいただいておりました。昔はねえやがおりましたの」
「そうですか」
「ええ、昔はね」
良き時代だったと。
娘のような顔を一瞬だけされて、きりりと顔をあげた。
『だから私は地獄に行きたいの』
生きて地獄、死んでも地獄と。
その後ろ姿は晴れ晴れとして…。
テーブルの上に何もかも落としていったように。
そのご婦人は立ち去って行ってしまった。
わたしの注文の品はその後、テーブルに来た。
「魂すら分離されて元素に戻り、遥か時間軸に戻るかどうかも立証が不明だというのに、ヒトとは人の姿に酷使したいのか」
「君も昔はそういう考えだったじゃないか」
と言われたみたいだった。
と、目の前のご婦人が紅茶のスプーンをかき回すのをやめた。
「はぁ」
わたしはのんびりと答えると、
「あの世でも、嫌いな人と顔を合わせるなんて、本当に嫌ですの」
本当に、が、とても強めで冷たい斬った断言で、喉を潤すようにカップに口をつけた。
熱いのか、ずずっとすする音に私は幻滅しながらその口元から目をそらした。
蒸れたまつ毛に露でもかかりそうなほどのさまを見つめて、カウンター越しに聞こえてくるサイフォンのごぼっという音だけに集中する。
たぶん眠いのだ。
「塩分が入りますよ」
と、冷たく言うほどには。
「誰かに喋りたくなったのかもしれません」
わたしのこの胸の内をと。
誰でもいい、誰にも知られたくはないけれど、誰かに喋りたい、誰かに喋っても害がないと言い切れるほどの第三者にと。
だから、なぜ私が?とは聞かない。
「今日はなぜだか、紅茶が甘いわ」
と、晴れ晴れと泣きはらした目でそういうので、「ほんのひとつまみの塩ですね」と言えば、キョトンとされる。
「わたくし、料理は得意な方じゃありませんの。お手伝いさんに来てもらってるか、できあいをいただいておりました。昔はねえやがおりましたの」
「そうですか」
「ええ、昔はね」
良き時代だったと。
娘のような顔を一瞬だけされて、きりりと顔をあげた。
『だから私は地獄に行きたいの』
生きて地獄、死んでも地獄と。
その後ろ姿は晴れ晴れとして…。
テーブルの上に何もかも落としていったように。
そのご婦人は立ち去って行ってしまった。
わたしの注文の品はその後、テーブルに来た。
「魂すら分離されて元素に戻り、遥か時間軸に戻るかどうかも立証が不明だというのに、ヒトとは人の姿に酷使したいのか」
「君も昔はそういう考えだったじゃないか」
と言われたみたいだった。
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