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バードソング
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ある日、私は少しだけ冒険をしました。入ってはいけない森の中に少しだけ入り少しだけ森の小屋をのぞき見したのです。
おばあちゃんは言っていました。
「夢を見たからといって夢の中で起きたことで、現実の相手に怒ってしてはいけない」
見知らぬ綺麗な人がたくさんうちにも来ました。その日から、私はおしのように全く口を利くことができなくなりました。
「ナニがあったかきちんとお話ししなさい」という両親と「台所を借りてもいいか」という綺麗な人たちが固まって話し合いをしていました。その人たちのひとりがお台所の冷蔵庫を開けたのを見てしまったからです。
「田舎の子供は金ほしさに虚言を吐く癖があると聞く、今回もそういう件だろうが、気を付けるに越したことはない」
その日、私はジャガイモ一つ貯蔵庫からないことにひどく怒られて、口答えすらすることなく折檻されて、夕食も次の日の朝食も昼食も抜きにされました。
おばあちゃんは言っていました。
「他人の家の貯蔵庫を開けてさもしい真似をするなんて、なんて、できの悪い紳士だろう」
って。なのに、おばあちゃんの言葉はいつも独り言として家族に無視されました。私の有色は今日も具のない底の出し殻でした。
まもなく、町は明るくなりました。春色の季節に私だけが灰色の服を着ています。知らない綺麗な女性に抱き締められました。
「あなたにお礼が言いたいの」
甘い甘い匂いのチョコレートケーキと珈琲は同じぐらいヘドロのように光っていました。
「そしてね。覚えているかしら私と同じときにいた人を探しているの」
あの日見たことを思い出して。と言うのです。
私はぐるぐると回る景色と空の色と甘い匂いが臭いにかわる気持ちの悪さで目を回して吐きました。
「思い出して」という声に私は「なんのこと、知らない。私は知らない」叫びました。
私は目が見えないといい続けました。
やがて目が見えなくなりました。
それでも、いつも見張る目が見ている気がしました。
私はやがて目が見えないことに安堵しました。
「そうだね」
「あの綺麗な人は違う匂いがしてた」
『あの人は一人私に助けてと言ったから。私に……小さい私に、だから小さい私はまもったの。かみさまにいのることをやめた人が同じ人間である私に言葉になく祈ったの。私は』ああかみさま、だから後生だからお願い。あの人が元気でいてくださるように。あの人と私が二度と関わらないようにしてください……。
ある日、高慢ちきな旅行者の流れが来ました。
人とぶつかっても誰一人振り向きもせず、綺麗な景色だけを見ては通りすぎていくのです。
「観光客」
「お金を落としてくれるありがたい客さ」
壁の銃痕も観ることはない。
汚い煉瓦も毎日のようにホースで洗われ土煙と石畳の排水溝に流れていきました。流れないものは木の枝のように取り除かれました。
私のように。
「なんてことを」
ぶつかった子供がバケットひとつ盗もうとして私が捕まりました。
「この子は違う」
「めくらがなにをいうか」
と、怒鳴る声を女性が静止させました。
「ええ、このこはちがう。ただ、ぶつかっただけ。そうでしょう」
私は腹をすかせていましたがうなずくだけです。
「ね、さあいきましょう」
女性の親指と人差し指の間に黒い十字の印がありました。
私も同じ十字の印がありました。
『同士』
その言葉にならない嗚咽にハンカチで口を覆い去っていったのです。
「ものがたりはこれでいいか」
と、言われたので下水溝の地面に耳を当てていた彼、彼女は笑っていました。皆、自分勝手に私を見、私を疑り創造し、最後も想像で終わった。面白い終わりにしてもらった。すごく面白くて笑いたいのに笑おうとしたら声がひゅーひゅーというだけで喉から声が出なくてそれすら面白くておかしい。と震え笑っているのです。
やがて柔らかな雪が降ることでしょう。
私は公園の水道で手を洗いました。
マジックで書いた字が消えました。
ものがたりはこれでおしまいです。
おばあちゃんは言っていました。
「夢を見たからといって夢の中で起きたことで、現実の相手に怒ってしてはいけない」
見知らぬ綺麗な人がたくさんうちにも来ました。その日から、私はおしのように全く口を利くことができなくなりました。
「ナニがあったかきちんとお話ししなさい」という両親と「台所を借りてもいいか」という綺麗な人たちが固まって話し合いをしていました。その人たちのひとりがお台所の冷蔵庫を開けたのを見てしまったからです。
「田舎の子供は金ほしさに虚言を吐く癖があると聞く、今回もそういう件だろうが、気を付けるに越したことはない」
その日、私はジャガイモ一つ貯蔵庫からないことにひどく怒られて、口答えすらすることなく折檻されて、夕食も次の日の朝食も昼食も抜きにされました。
おばあちゃんは言っていました。
「他人の家の貯蔵庫を開けてさもしい真似をするなんて、なんて、できの悪い紳士だろう」
って。なのに、おばあちゃんの言葉はいつも独り言として家族に無視されました。私の有色は今日も具のない底の出し殻でした。
まもなく、町は明るくなりました。春色の季節に私だけが灰色の服を着ています。知らない綺麗な女性に抱き締められました。
「あなたにお礼が言いたいの」
甘い甘い匂いのチョコレートケーキと珈琲は同じぐらいヘドロのように光っていました。
「そしてね。覚えているかしら私と同じときにいた人を探しているの」
あの日見たことを思い出して。と言うのです。
私はぐるぐると回る景色と空の色と甘い匂いが臭いにかわる気持ちの悪さで目を回して吐きました。
「思い出して」という声に私は「なんのこと、知らない。私は知らない」叫びました。
私は目が見えないといい続けました。
やがて目が見えなくなりました。
それでも、いつも見張る目が見ている気がしました。
私はやがて目が見えないことに安堵しました。
「そうだね」
「あの綺麗な人は違う匂いがしてた」
『あの人は一人私に助けてと言ったから。私に……小さい私に、だから小さい私はまもったの。かみさまにいのることをやめた人が同じ人間である私に言葉になく祈ったの。私は』ああかみさま、だから後生だからお願い。あの人が元気でいてくださるように。あの人と私が二度と関わらないようにしてください……。
ある日、高慢ちきな旅行者の流れが来ました。
人とぶつかっても誰一人振り向きもせず、綺麗な景色だけを見ては通りすぎていくのです。
「観光客」
「お金を落としてくれるありがたい客さ」
壁の銃痕も観ることはない。
汚い煉瓦も毎日のようにホースで洗われ土煙と石畳の排水溝に流れていきました。流れないものは木の枝のように取り除かれました。
私のように。
「なんてことを」
ぶつかった子供がバケットひとつ盗もうとして私が捕まりました。
「この子は違う」
「めくらがなにをいうか」
と、怒鳴る声を女性が静止させました。
「ええ、このこはちがう。ただ、ぶつかっただけ。そうでしょう」
私は腹をすかせていましたがうなずくだけです。
「ね、さあいきましょう」
女性の親指と人差し指の間に黒い十字の印がありました。
私も同じ十字の印がありました。
『同士』
その言葉にならない嗚咽にハンカチで口を覆い去っていったのです。
「ものがたりはこれでいいか」
と、言われたので下水溝の地面に耳を当てていた彼、彼女は笑っていました。皆、自分勝手に私を見、私を疑り創造し、最後も想像で終わった。面白い終わりにしてもらった。すごく面白くて笑いたいのに笑おうとしたら声がひゅーひゅーというだけで喉から声が出なくてそれすら面白くておかしい。と震え笑っているのです。
やがて柔らかな雪が降ることでしょう。
私は公園の水道で手を洗いました。
マジックで書いた字が消えました。
ものがたりはこれでおしまいです。
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