2 / 3
バードソング2
しおりを挟む
兄貴が冒険しようぜとか、言うときは機嫌がいいときだ。進軍しようぜと言うときはたまに帰ってくる親戚も集まってごっこ遊びが過激になる。投てき、槍、石ころ、縄、網のすべての補修をおいて逃げて夕御飯には一番人気なんだ。
兄貴はとても見た目もいい男前と言われてはいたが、いつもの素行の悪さはそういうときには一切見せたことがない。
僕は今日も叱られた。靴下が左右対称になっていないことで。さっき兄貴におやつの実の殻を靴下に入れられて泣きながら直したとことだったのに。
兄貴は意地汚い笑いをしてぼくを見てはウインクする。ざまあみろというよう
に。
「凶悪な犯罪者が逃げている可能性がある」との領地書からの通達に兄貴は乗り掛かって読んでいた。通報だけで一週間肉が食えると叫べば、ママはいまは肉すら買える市場も遠いわ。と嘆いていた。捕まえればいいじゃん。一匹捕まえればこの家売りはらって町のアパートメントで暮らそう。町はまだ見ずも食料も治安だって安定している。僕らはヒーローとして迎えてくれるはずだ。バカなことをおいいいでないよ。ママはそれでも能天気で明るく顔のいい兄を僕より数倍可愛がっていた。
あの日、僕も家にたくさんの革靴の人が来た。折角洗った玄関は靴の足形で泥まみれに汚れた。
「森?キノコのシーズンは終わったし。これといって用のないただの暗い森だよ」
「君は詳しいのかい」
兄貴は自分が美形であることに誇りを持っていたけれど、どんどんその人たちによって自信と誇りがしぼんでいってしまった。「おやじ、もうしゃべな。親父より俺の方がここ数年は詳しい。水鳥の狩りだってそうだろぉ。な」今思えば、兄貴はだらしない肌着のシャツの父親が自分の誇らしい父だということを恥ずかしがる年だった。
あろうことか極端に歪んだ思考が暴走しいかにして美しい憲兵団に入れるかばかりを思い描くようになった。
村の女は下品で汚い、しみったれた根性で「ゲーテを読んでもアクビをするんだ」が彼らを笑わせる壺だった。
とうとう恐れたことに、聞いた話を自分が手柄を取るために見た話に変えていった。
「最近、あの森の木こり小屋は使われているのかい」
「夏なら数円のコインで立ち入り禁止させていますよ。村のものはほとんど知っていますが、地が腐ってきたのでもうだれも入り用には使いませんよ」
「ませているね」
「町と違ってそういう部分はオープンですしなにより勝手に決められた婚約者が嫁に来るまでは独身を謳歌します」
「ほぉ、使用日時とか金銭があるなら記録もあるのかね」
「そこまではいえませんが」
次の日の前には教会の牧師と町内会長が引かれて消えた。兄貴は気がつかなかった。兄貴が喋る本当と嘘の両方がかくじつに毎日間引かれていくというのに兄貴にとっては「君は素晴らしい人材だ」と誉められる方が枕を高くして眠れたのだ。
婚約者という女が噂で卑しいものと仲が良かったと又聞きしただけで憲兵に連れられていったことを知った兄は「ブスをめとらず棲んで楽になった」「お姉さんブスじゃなかったよ」「ふーん、ならわるいことしたな。はやく返してもらえればいいな」
「帰れないよ。もう二度と家にも田舎にもどこにも帰れないよ、僕らだって知っている」
兄は泣きながら殴ってくる僕にひどく恐れた。
「最近、山の向こうから黒煙が上がって風が変わると臭い臭い言っていたよね」
「ゴミ焼却場の臭いだろ」
「人の髪の毛の燃える臭いだよ」
ぼくは自分の髪の毛をむしり取って暖炉にくべた。
やっぱり焼却炉と同じにおいがした。
家族全員に殴られた。
僕は言ってはいけないこととやってはいけないことと示してはいけないことの全部をやってしまったから。
兄の婚約者は親類の元に帰ってきたかどうか僕は知らない。
僕は「今度は私らが迫害される番になった」と、最後の食事を持たされて家から追い出されたたのだ。山の向こうに家はあった。あそこら辺で火の粉が上がる度に自分も家が燃やされたのだと思い続けて遠くへ遠くへ逃げた。
兄貴はとても見た目もいい男前と言われてはいたが、いつもの素行の悪さはそういうときには一切見せたことがない。
僕は今日も叱られた。靴下が左右対称になっていないことで。さっき兄貴におやつの実の殻を靴下に入れられて泣きながら直したとことだったのに。
兄貴は意地汚い笑いをしてぼくを見てはウインクする。ざまあみろというよう
に。
「凶悪な犯罪者が逃げている可能性がある」との領地書からの通達に兄貴は乗り掛かって読んでいた。通報だけで一週間肉が食えると叫べば、ママはいまは肉すら買える市場も遠いわ。と嘆いていた。捕まえればいいじゃん。一匹捕まえればこの家売りはらって町のアパートメントで暮らそう。町はまだ見ずも食料も治安だって安定している。僕らはヒーローとして迎えてくれるはずだ。バカなことをおいいいでないよ。ママはそれでも能天気で明るく顔のいい兄を僕より数倍可愛がっていた。
あの日、僕も家にたくさんの革靴の人が来た。折角洗った玄関は靴の足形で泥まみれに汚れた。
「森?キノコのシーズンは終わったし。これといって用のないただの暗い森だよ」
「君は詳しいのかい」
兄貴は自分が美形であることに誇りを持っていたけれど、どんどんその人たちによって自信と誇りがしぼんでいってしまった。「おやじ、もうしゃべな。親父より俺の方がここ数年は詳しい。水鳥の狩りだってそうだろぉ。な」今思えば、兄貴はだらしない肌着のシャツの父親が自分の誇らしい父だということを恥ずかしがる年だった。
あろうことか極端に歪んだ思考が暴走しいかにして美しい憲兵団に入れるかばかりを思い描くようになった。
村の女は下品で汚い、しみったれた根性で「ゲーテを読んでもアクビをするんだ」が彼らを笑わせる壺だった。
とうとう恐れたことに、聞いた話を自分が手柄を取るために見た話に変えていった。
「最近、あの森の木こり小屋は使われているのかい」
「夏なら数円のコインで立ち入り禁止させていますよ。村のものはほとんど知っていますが、地が腐ってきたのでもうだれも入り用には使いませんよ」
「ませているね」
「町と違ってそういう部分はオープンですしなにより勝手に決められた婚約者が嫁に来るまでは独身を謳歌します」
「ほぉ、使用日時とか金銭があるなら記録もあるのかね」
「そこまではいえませんが」
次の日の前には教会の牧師と町内会長が引かれて消えた。兄貴は気がつかなかった。兄貴が喋る本当と嘘の両方がかくじつに毎日間引かれていくというのに兄貴にとっては「君は素晴らしい人材だ」と誉められる方が枕を高くして眠れたのだ。
婚約者という女が噂で卑しいものと仲が良かったと又聞きしただけで憲兵に連れられていったことを知った兄は「ブスをめとらず棲んで楽になった」「お姉さんブスじゃなかったよ」「ふーん、ならわるいことしたな。はやく返してもらえればいいな」
「帰れないよ。もう二度と家にも田舎にもどこにも帰れないよ、僕らだって知っている」
兄は泣きながら殴ってくる僕にひどく恐れた。
「最近、山の向こうから黒煙が上がって風が変わると臭い臭い言っていたよね」
「ゴミ焼却場の臭いだろ」
「人の髪の毛の燃える臭いだよ」
ぼくは自分の髪の毛をむしり取って暖炉にくべた。
やっぱり焼却炉と同じにおいがした。
家族全員に殴られた。
僕は言ってはいけないこととやってはいけないことと示してはいけないことの全部をやってしまったから。
兄の婚約者は親類の元に帰ってきたかどうか僕は知らない。
僕は「今度は私らが迫害される番になった」と、最後の食事を持たされて家から追い出されたたのだ。山の向こうに家はあった。あそこら辺で火の粉が上がる度に自分も家が燃やされたのだと思い続けて遠くへ遠くへ逃げた。
0
あなたにおすすめの小説
少年イシュタと夜空の少女 ~死なずの村 エリュシラーナ~
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
イシュタは病の妹のため、誰も死なない村・エリュシラーナへと旅立つ。そして、夜空のような美しい少女・フェルルと出会い……
「昔話をしてあげるわ――」
フェルルの口から語られる、村に隠された秘密とは……?
☆…☆…☆
※ 大人でも楽しめる児童文学として書きました。明確な記述は避けておりますので、大人になって読み返してみると、また違った風に感じられる……そんな物語かもしれません……♪
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
瑠璃の姫君と鉄黒の騎士
石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。
そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。
突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。
大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。
記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる