もんもんと汗

ふしきの

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時計したの探偵事務所

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「センセ、また先にクリーニング店に出しにいったでしょ」
 センセは、大袈裟なそぶりをして「しまった、ばれたか」と見栄を切って報告してくれた。この前、見聞に行った歌舞伎の真似事がおきに目下らしいが、観るこちら側からしたら、うざいことこのうえないのです。
「駐輪場で洗濯屋のばばあに呼び止められて、朝から説教自慢とかされたので、早引けしていいですか? 」
「え、来たのに帰っちゃうの」
「そういう気分ですってことです」
 わたしは、油紙に丁寧に包まれた包装紙を開けると、白いカッターシャツが出てきた。白蝶貝が三つならんだカフスボタンのない袖のシャツです。
「ああ、あのばばあ、やっぱりやりやがった」と愚痴ったのです。「一番奥のボタンが取れかかっているからアレほど置いといてくださいって言いましたよね。ほら、見てくださいよ。わざとらしく色を変えて補修してくれている。しかも、あの店で補修されるといつもボタンがバッテンなんですよ、ほんとに腹が立つ」
「君は、毎回それを怒っているねぇ」
「ボタン付けのルールをかってに変えられるのが腹が立つんですよ。もおお、がっちり留められて、ハサミがはいりにくくしてあるのがまた腹立つ」

「それはそうと、猫の張り紙剥がすの手伝ってくれる」
「三毛、見つかったのですか」
「うん、でさっきまで蚤取りしていたので、ワタシの体まで痒くて」
「よし、センセ、屋上に樽用意しますから、行水しましょう」
「やだ、銭湯行きたい」
「センセも猫も同時に洗えます、効率的です」
「君のだだっ広い合理主義と細かすぎる繊細さの落差はどこから来るの」

 センセは、わたしの憧れだ。
 迷い子を探し、迷い子を数倍の綺麗にしてふくふくに育ってから依頼者に返す。たまにそれを悪く言うひともいるけれど、わたしは合理に叶っていると思う。
 どれだけ死にかけていても、幸せになっていく顔を観るのがすきだ。依頼者に遠回しでなくきつめの嫌みを言うのも滅多にしないセンセが手塩にかけてさっきまでなつかない子が大きなおなかの上で寝ていたり「よし、センセの福耳を作るのだ」とけしかけ子猫の指しゃぶりを耳しゃぶりに変えては「はっ、う、うごけなじゃないか」「センセ、仕事のしすぎだから猫があきて寝るまでセンセも動かないで寝ててください、その間、くっさい事務所の掃除をしますから」
 なんて言えるのです。

 いまはまだ探し物、失いものばかりの探偵事務所ですが、あるところにいけばセンセの大きな顔と腹同様、大きく売れる人なのに世の中、まだたくさん埋もれているなぁなんて思うのです。
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