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Ⅰ章 予兆
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ふいー、今日も今日とて農作業である。
いやはや、素晴らしきかな、早朝からの労働は!
と、嘯くも、だらだら流れる汗は引いてくれない。
魔王クリエイターを使えば暑さに対する耐性も得られるが、そうなると炎天下で少しも汗を掻かないという軽く化け物じみた絵面が誰かに見られてしまう。
ペットのゼルエルちゃんはたまたまそんなカマキリがいたで通ったが、辺境ののんびり農家仲間達もさすがに、炎天下で汗を掻かない子供は不気味に映るだろう。
もしくは何かの病気かと無駄に心配をかける。
農家仲間達は母の父の代からの付き合いらしく、僕もまた自分の子供のように良くしてくれる。彼らに必要のない心配はかけたくないものだ。
そういえば。
魔王ヨトウガ達はどうしているだろうか?
魔王クリエイターの力を使えば、魔王化した生物のコンディションも簡単ながら把握できる。
魔王ヨトウガの項目を開くと、残存数、スコア、気分、現在地の4つが表示された。
名前 魔王ヨトウガ
残存数 約4850000
殺傷数 約2860000
気分 079/100
現在地 サドラン帝国南部
本当に簡潔にしか分からないが、まあこれだけの項目でも元気にやっているかくらいは分かる。いや、まあ、彼らが元気にやってるってことはつまりそれだけ沢山の人間をヤッちゃってるってことなので、元気にやっていて欲しいかと言われると言葉に詰まってしまうのだが。
それぞれの数値は順当なところ。
気分が若干減っているのは…なぜだろう?
おそらく、残存数全ての個体達を統合した際の平均値が表示されているはずだから反撃を受けたことによる怪我やストレスあたりかな?
割と人類は頑張ったみたいだ。本来ならば残存数はもっとあったのかも。
現在地はざっくりし過ぎてよく分からない。
殺傷数に関しては見ません。
見てません、気にしません、見なかったこととする!気にしてなるものかっ!
しょうがないんやあ、だってヴァ○先生が言ったから…いや、誰だよ○ァン先生って。知らないよそんな髭が似合うダンディな悪役なんてさ。
恨むなら僕にこんな力を与えて、やらせた声の主を恨んでくれ。なんまんだぶなんまんだぶ。
北を向いていると思い込んで実は真逆の南に手をすり合わせ、成仏してくれと祈っているとサボってるんじゃないよとゼルエルちゃんが両手の鎌を上げてわしゃわしゃする。
おお、ゼルエルちゃんは今日も可愛い。
が、その動きは流石にあざといぞ?と言うと、ビンタされた。痛い。
ただまあ、冷静に考えるとカマキリがわしゃわしゃしても昆虫感が強調されて気持ち悪がる人の方が多いかも。
今さらどうにもならないことを考えるのはこのくらいにして、畑仕事に集中だ。
今日は魔王クリエイターで作成したトマトの植え付けだ。
何を隠そう、僕の好物はトマトである。
前世では子供の頃からトマトをおやつ代わりにそのままムシャムシャしていた。
食感や味に独特なクセがあるため苦手な人は一定数いただろうが、僕は嫌いどころか特別好きな野菜の一つになる。
残念ながら、この世界…いや、この近辺なのか国なのかどの辺ならトマトが手に入るのかというのは農家の一人息子に過ぎない僕には預かり知らぬことだが、とにかくこの辺境には存在していなかった。
ゆえにまず、トマトが別の国から取り寄せることができないか市長に直談判してきたのだが、その返答は無理、だった。
「エル坊や、どこでそんな野菜があると聞いたかは知らんが、本当にあるのか?
…あと、あったとしても渡してくれるとは思わんのぉ。今は人が多すぎてただでさえ食い物が不足しとる。この国で生まれ育ったエル坊には分からんだろうが…他所にやるくらいなら自分達で食うじゃろう?」
「爺様でも知らないの?思い当たる節すら?」
「うむ。知らんの。エル坊はワシが嘘をつくような人間に見えるか?」
「見えるから聞いてるんだよ?」
「かーっ!お主は人を見る目がないのぉっ!!」
「だってこの前、デルタおじさんが言ってたよ。爺様は夜のオネェさん達に貢いでるのを家族に秘密にして、使ったお金は孤児院に寄付してるってウソを…」
「おばかっ!?そのことを不用意に口にするで無いっ!妻に聞かれたらど…あがぁっ!?」
「通りで孤児院に寄付するにしても、やたらとお小遣いをせびってくると思ったわけです。貴方、今晩は覚悟してくださいね?」
いつの間にか市長の背後からその奥さんがアイアンクローを喰らわせていた。
指がガッチリ食い込んで痛そうだ。
もう片方の手にはオボンがあり、その上には子供が好きそうなお菓子とお茶。
僕へのもてなしに来たら、市長の嘘を知ってアイアンクローという流れになったみたい。
ちなみにお菓子は美味しく頂いたし、市長ははその後、向こう1年間分のお小遣いを実際に孤児院に寄付することになったそうな。
人口が多い分、孤児院にいる子供も多く、なかなか大変だったらしいのだが今回の一件で子供達の笑顔が増えたのだとか。
それを聞いて、魔王ヨトウガ達を向かわせた土地の子供達のことが気にかかった。
…子供は襲わないようにと言っておいたが、子供だけ生き残っても生きていけるのだろうか?生き残ったとしても、大人がいなくなり、一切の教育を受けずに育った人間がどんな人間になるのか…ちょっとやばくないだろうか?
いっそのこと纏めてヤっちゃった方が優しかったかな?
近いうちにそれ専用の魔王を創って様子を見に行かせるか、教育させるかしたほうが良いかもしれない。
ちなみに魔王クリエイターの力をよこした声の主の話によると、今いる大人達の大半を皆殺しにするくらいの人数が最終的なノルマらしく、後から殺さなくちゃいけない数が足らないからと生かしてあげた子供をやっぱり殺すね、なんてする必要はない。
魔王ヨトウガ達をいまいる農業国家プラベリアで暴れさせなかったのは僕が住んでいるからという理由の他に、あくまで人類の間引き行為を依頼されているのであって、絶滅でないゆえに一国分ならノルマ的に何もしなくて大丈夫というのがある。
話を戻すが、トマトが手に入らないとなれば自ら探すしかない。が、そんな知識もなければ、時間もない。
しかし、魔王クリエイターという特殊な解決方法はある。
ゆえに僕は魔王クリエイターでトマトを自作することにした。
まずはナス科の植物を探すところからだ。
魔王クリエイターの力は対象からかけ離れた物にいじる事はできない。
その辺の雑草を毟って、トマトにするという無茶苦茶なことは不可能。
まずはナス科の植物を探すところから始めなくてはならない。
トマトはナス科の植物。
ナス科の植物さえ手に入ればなんとかなるはず。
そう思って、それっぽい植物をその辺の雑草や近所の山から探したり、すでに栽培している野菜も再度調べ直す。うちで栽培してる野菜はすでに魔王クリエイターを使っているために、トマトはできないと知っているが念のために全ての野菜を確認した。
結果は全滅。
ナス科の植物は比較的、特徴的な形をしているがぶっちゃけ前世で農家をしていたわけでも、家庭菜園を趣味としていたわけでもない僕からしたらうろ覚えだ。
探している最中にナス科を見つけていたとしても見逃しているだろうし、これはという植物に魔王クリエイターを使用してみるも全て外れだった。
1日ではまあ、探せなくても仕方ないと、それから畑仕事の合間に探し続けるもなかなか見つからない。
いい加減、別の手段が必要か。
魔王クリエイターの力を余すことなく使うしかあるまい。
魔王クリエイターの真価、ゼロからの創造を。
いやはや、素晴らしきかな、早朝からの労働は!
と、嘯くも、だらだら流れる汗は引いてくれない。
魔王クリエイターを使えば暑さに対する耐性も得られるが、そうなると炎天下で少しも汗を掻かないという軽く化け物じみた絵面が誰かに見られてしまう。
ペットのゼルエルちゃんはたまたまそんなカマキリがいたで通ったが、辺境ののんびり農家仲間達もさすがに、炎天下で汗を掻かない子供は不気味に映るだろう。
もしくは何かの病気かと無駄に心配をかける。
農家仲間達は母の父の代からの付き合いらしく、僕もまた自分の子供のように良くしてくれる。彼らに必要のない心配はかけたくないものだ。
そういえば。
魔王ヨトウガ達はどうしているだろうか?
魔王クリエイターの力を使えば、魔王化した生物のコンディションも簡単ながら把握できる。
魔王ヨトウガの項目を開くと、残存数、スコア、気分、現在地の4つが表示された。
名前 魔王ヨトウガ
残存数 約4850000
殺傷数 約2860000
気分 079/100
現在地 サドラン帝国南部
本当に簡潔にしか分からないが、まあこれだけの項目でも元気にやっているかくらいは分かる。いや、まあ、彼らが元気にやってるってことはつまりそれだけ沢山の人間をヤッちゃってるってことなので、元気にやっていて欲しいかと言われると言葉に詰まってしまうのだが。
それぞれの数値は順当なところ。
気分が若干減っているのは…なぜだろう?
おそらく、残存数全ての個体達を統合した際の平均値が表示されているはずだから反撃を受けたことによる怪我やストレスあたりかな?
割と人類は頑張ったみたいだ。本来ならば残存数はもっとあったのかも。
現在地はざっくりし過ぎてよく分からない。
殺傷数に関しては見ません。
見てません、気にしません、見なかったこととする!気にしてなるものかっ!
しょうがないんやあ、だってヴァ○先生が言ったから…いや、誰だよ○ァン先生って。知らないよそんな髭が似合うダンディな悪役なんてさ。
恨むなら僕にこんな力を与えて、やらせた声の主を恨んでくれ。なんまんだぶなんまんだぶ。
北を向いていると思い込んで実は真逆の南に手をすり合わせ、成仏してくれと祈っているとサボってるんじゃないよとゼルエルちゃんが両手の鎌を上げてわしゃわしゃする。
おお、ゼルエルちゃんは今日も可愛い。
が、その動きは流石にあざといぞ?と言うと、ビンタされた。痛い。
ただまあ、冷静に考えるとカマキリがわしゃわしゃしても昆虫感が強調されて気持ち悪がる人の方が多いかも。
今さらどうにもならないことを考えるのはこのくらいにして、畑仕事に集中だ。
今日は魔王クリエイターで作成したトマトの植え付けだ。
何を隠そう、僕の好物はトマトである。
前世では子供の頃からトマトをおやつ代わりにそのままムシャムシャしていた。
食感や味に独特なクセがあるため苦手な人は一定数いただろうが、僕は嫌いどころか特別好きな野菜の一つになる。
残念ながら、この世界…いや、この近辺なのか国なのかどの辺ならトマトが手に入るのかというのは農家の一人息子に過ぎない僕には預かり知らぬことだが、とにかくこの辺境には存在していなかった。
ゆえにまず、トマトが別の国から取り寄せることができないか市長に直談判してきたのだが、その返答は無理、だった。
「エル坊や、どこでそんな野菜があると聞いたかは知らんが、本当にあるのか?
…あと、あったとしても渡してくれるとは思わんのぉ。今は人が多すぎてただでさえ食い物が不足しとる。この国で生まれ育ったエル坊には分からんだろうが…他所にやるくらいなら自分達で食うじゃろう?」
「爺様でも知らないの?思い当たる節すら?」
「うむ。知らんの。エル坊はワシが嘘をつくような人間に見えるか?」
「見えるから聞いてるんだよ?」
「かーっ!お主は人を見る目がないのぉっ!!」
「だってこの前、デルタおじさんが言ってたよ。爺様は夜のオネェさん達に貢いでるのを家族に秘密にして、使ったお金は孤児院に寄付してるってウソを…」
「おばかっ!?そのことを不用意に口にするで無いっ!妻に聞かれたらど…あがぁっ!?」
「通りで孤児院に寄付するにしても、やたらとお小遣いをせびってくると思ったわけです。貴方、今晩は覚悟してくださいね?」
いつの間にか市長の背後からその奥さんがアイアンクローを喰らわせていた。
指がガッチリ食い込んで痛そうだ。
もう片方の手にはオボンがあり、その上には子供が好きそうなお菓子とお茶。
僕へのもてなしに来たら、市長の嘘を知ってアイアンクローという流れになったみたい。
ちなみにお菓子は美味しく頂いたし、市長ははその後、向こう1年間分のお小遣いを実際に孤児院に寄付することになったそうな。
人口が多い分、孤児院にいる子供も多く、なかなか大変だったらしいのだが今回の一件で子供達の笑顔が増えたのだとか。
それを聞いて、魔王ヨトウガ達を向かわせた土地の子供達のことが気にかかった。
…子供は襲わないようにと言っておいたが、子供だけ生き残っても生きていけるのだろうか?生き残ったとしても、大人がいなくなり、一切の教育を受けずに育った人間がどんな人間になるのか…ちょっとやばくないだろうか?
いっそのこと纏めてヤっちゃった方が優しかったかな?
近いうちにそれ専用の魔王を創って様子を見に行かせるか、教育させるかしたほうが良いかもしれない。
ちなみに魔王クリエイターの力をよこした声の主の話によると、今いる大人達の大半を皆殺しにするくらいの人数が最終的なノルマらしく、後から殺さなくちゃいけない数が足らないからと生かしてあげた子供をやっぱり殺すね、なんてする必要はない。
魔王ヨトウガ達をいまいる農業国家プラベリアで暴れさせなかったのは僕が住んでいるからという理由の他に、あくまで人類の間引き行為を依頼されているのであって、絶滅でないゆえに一国分ならノルマ的に何もしなくて大丈夫というのがある。
話を戻すが、トマトが手に入らないとなれば自ら探すしかない。が、そんな知識もなければ、時間もない。
しかし、魔王クリエイターという特殊な解決方法はある。
ゆえに僕は魔王クリエイターでトマトを自作することにした。
まずはナス科の植物を探すところからだ。
魔王クリエイターの力は対象からかけ離れた物にいじる事はできない。
その辺の雑草を毟って、トマトにするという無茶苦茶なことは不可能。
まずはナス科の植物を探すところから始めなくてはならない。
トマトはナス科の植物。
ナス科の植物さえ手に入ればなんとかなるはず。
そう思って、それっぽい植物をその辺の雑草や近所の山から探したり、すでに栽培している野菜も再度調べ直す。うちで栽培してる野菜はすでに魔王クリエイターを使っているために、トマトはできないと知っているが念のために全ての野菜を確認した。
結果は全滅。
ナス科の植物は比較的、特徴的な形をしているがぶっちゃけ前世で農家をしていたわけでも、家庭菜園を趣味としていたわけでもない僕からしたらうろ覚えだ。
探している最中にナス科を見つけていたとしても見逃しているだろうし、これはという植物に魔王クリエイターを使用してみるも全て外れだった。
1日ではまあ、探せなくても仕方ないと、それから畑仕事の合間に探し続けるもなかなか見つからない。
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