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Ⅲ章 討滅
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念のため言っておくが、別にボスと僕が顔見知りなわけではない。
生まれてから今に至るまで一度も辺境を出たことのない僕が外に知り合いがいるわけが…いないこともないが、いたとしても野菜を売る問屋さんくらいだ。野党に知り合いがいるわけはない。
しかし、知り合いではないが僕が一方的に知っている野党がいた。
その名もスズメ盗賊団。
日本人が聞いたら軽く笑ってしまいかねないくらいに可愛らしい名前だが、この世界ではスズメは絶滅済み。
身近にいる鳥は軒並み絶滅してほとんどの鳥類の名前は忘れ去られた。
その忘れ去られ絶滅した鳥類の内、比較的今でも名前だけが残って知名度の高いスズメの名前を使った結果、そんな可愛らしい名前になったのだと思われる。
そうまでして鳥の名前を使いたかったのかな?と思わないでもないが、その名前に反してこの山賊団は悪い意味で非常に有名で、最近は僕の住む辺境近辺に住み着いたらしく、辺境の人々の誰もが知るようになった。
というのも、こいつら畑を荒らしまくる常習犯なのである。
地球では畑を荒らすといえば猪や鹿を始めとした大型動物や、土中で穴を掘って根を切ったり益虫であるミミズを食べ散らかすモグラ、カラスやスズメをはじめとした鳥類や、ネズミなどの齧歯類もそうだ。
しかし、この世界ではそれらもまた、ほぼ食用として絶滅。
そうした害獣に悩まされることはまずない上に、いたとしてもゼルエルちゃんのご飯になるか、僕のご飯になるかの二択。
しかし、そうした害獣がいない代わりと言ってはなんだが盗賊の類が深夜に畑で野菜を掠めとるのだ。
言うなればこの世界における害獣は盗賊達にあたる。
そう言った意味では農家にとっては害獣扱いのスズメの名前を使う盗賊団はなかなかどうして、その行いに合った素晴らしく相応しい名前と言わざるをえない。
前に話したヨトウガやゾウムシのような害虫類よりも被害は大きくなる。
なにせまるごと掻っ攫われるのだから。
もちろん、食糧の生産が追いついてないこの世界ではそうした食材泥棒というのは凶悪犯扱いにされ、地球の人が見たら畑を荒らしただけでそこまでする?とドン引きするくらいの捜査体制のもと数日で捕まって然るべき刑罰を受けることになる。
大抵は見せしめとして軽めの公開拷問からの、公開死刑だというから国がどれほど食材盗難を問題視しているかが分かるものだ。
そういった事情もあり辺境とはいえ、それらの野菜泥棒に対する警備体制はかなりの力の入れようで基本的に生半可な泥棒ではすぐに壊滅させられるのだが、このスズメ盗賊団は違った。
というか名の通った盗賊団全般に言えることなのだが、そうした厳重な警備体制を敷いてもすり抜けて泥棒を働き、かつ生き残ってきただけあって非常にタチが悪いのだ。
スズメ盗賊団はそのうちの一つで、本来ならば強盗なら強盗、殺人なら殺人、畑からの野菜の盗難であれば盗難と何かしらを専門に行うのだが、こいつらはそのうちの全てをやらかすクソッたれどもである。
僕が彼らの名前を知ったのは、起きたらうちの畑の一部からゴッソリ野菜が無くなっていたある日のことだ。
うちだけではなく他のいくつかの農家も被害に遭ったらしいが、僕はコイツらが許せなかった。
いずれ魔王クリエイターで魔王を作って皆殺しにしてやろうかと考えるくらいには。
いや、もちろん元日本人としてそれだけで虐殺はちょっとなぁとなるけれど、超常の存在に人類の間引きを命じられているわけだし、ちょうど良い機会とばかりに僕は黙って彼らに捕まったのである。
このままアジトに案内された後で一網打尽にするのが1番手っ取り早く、効率的だと信じて。
「…てめぇはココに入ってな。久しぶりの女だぁ、後でボスと一緒に可愛がってやるからよぉ」
「お下品だなぁ」
「ヒヒヒッ…強がりもいつまで持つかねぇ」
ロリコンらしきスズメ盗賊団の1人にまず案内されたのはアジトの牢屋らしき場所。
そこに僕を蹴り入れて、彼はそのまま去っていった。
ボスとやらに報告にでも行ったんだろうな。
そしてこれは非常に好都合だ。
僕が魔王を送り込まなかったり、わざわざ捕まったふりをしたのはすでに盗賊達に捕まっている人がいたら、巻き込みかねないためだ。
魔王エルルちゃんならばアジトを確認した段階で適当なスキルを使ってアジトごと消し飛ばせないこともないのにそうしない理由でもある。
とはいえ、その心配は不要だったようだ。
牢屋らしき場所には僕しかいなかった。
僕を牢屋にぶち込んだ男も久しぶりの女とか言ってたし、他の場所に誰かしらがいるということもあるまい。
であればやる事は簡単である。
「なむなむ」
精神衛生上、自ら人間を間引くことをするつもりは無かったし、それは魔王エルルちゃんを操っていたとしても変わらないが、畑に害をなすばかりか人の命を無為に奪う畜生じみた連中であれば別である。
魔王蝶々で色々見たことで多少、慣れたというのもあるけれどね。
手を擦り合わせて、冥福を祈りつつ、魔法を使う。
本体の僕と共有しているスキルの一つ、超水魔法を使い僕を中心に巨大な水の竜巻が展開して数秒と経たずに周辺を飲み込んで消しとばす。
するとあら不思議。
1分と経たずに盗賊達はアジトごとミンチという寸法。
たかだか水と舐めてはいけない。
水滴が長い年月をかけて石に穴を開けるように、水にも攻撃力はある。
特に大雨の時の鉄砲水や地震で起きる津波などの威力は建築物を簡単に倒壊させることができるし、水に圧力をかけて吹き付けるウォータージェットすなわちウォーターカッターとも呼ばれる工具を用いた場合、切断できないものはないと言われるほどだ。
この超水魔法は超と言う名がつくだけありウォーターカッター並みの威力で水を発生、射出することができる。
しかも今、行ったようにかなり広範囲に。
他にも同じく超シリーズの魔法があるが、環境と死体を見なくて済みそうと言うことから水魔法を選択した。
我ながら恐ろしいスキルを作ってしまったものだと、消し飛んだスズメ盗賊団アジトを眺めていると1人だけ立っている人間がいた。
「は、はあ?」
思わず間抜けな声が出てしまったくらいだ。
え?なんで原型とどめてんの?
よしんば形が残っていたとしても、立ってるのはおかしくない?
あの広範囲、かつ高火力の水魔法を受けて生きているとかコイツ人間かよ?
軽く引きつつ、立っていた人間を眺めていると体の節々から血を流し、衣服がボロボロになりながら口を開く。
「…よくもやってくれやがったなあ、クソガキがよぉおおっ、ぜったいに許さんぞぉおっ!!」
目が血走り、怒声をあげるスキンヘッドの男。
コイツがボスかな?
「てめぇ、国から派遣されたアルバトロスとか言う奴らの構成員だなぁ?攫われたガキを装ってアジトに侵入してくるとはやってくれるじゃねぇか」
「アルバトロス?たしかアホウドリのことだっけ?」
アルバトロスとはアホウドリの意味を指す言葉で、何というかこの世界の組織は鳥の名前を使いたがる奴ばかりだなと思ったり。
ちなみにアホウドリの名の由来は警戒心がほぼ存在しないため簡単に捕獲できるほどにアホだからと言う由来からアホウドリの名がついたそうな。
「いや、僕は農家だよ」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇっ!てめぇみたいな農家がいてたまるかっ!!部下ごとアジトが消し飛んだんだぞっ!!」
ごもっとも。
こんなことができる農家は僕くらいなものだろう。たぶん。
「…余裕ぶってるが、てめぇもあれだけの大技を使って疲れてるんだろ?
アレを受けてピンピンしてる俺に逃げてほしいと考えてるはずだ」
「え?いや、逃したくない…けど…ちょっと手ずから殺すのは精神衛生上、躊躇っちゃうと言うか、こんなことなら魔王の一匹くらい連れてくればと思わないでもない…」
「だが、俺は俄然逃げないね!!
何故ならてめぇをぶっ殺す最大のチャンスだからさっ!!」
そう言ってスズメ盗賊団のボスらしきスキンヘッドが拳を作る。
次の瞬間、彼の肉体が比喩ではなく実際に一回り大きくなった。
ただでさえ僕の魔法でズタボロになった服はその衝撃で剥がれ落ちてフルティン状態でファイティングポーズを取る。
なんだコイツ。
羞恥心って言葉を知らんのか?
いや、まあ状況的に正しい対応だとは思うけども、ちょっと長くは見ていたくはない。
「冥土の土産に教えてやるよ。俺の率いるスズメ盗賊団がここまで大きくなったのは攻める時は攻め、逃げる時は逃げる。その見極めに間違えなかったからさ。わかるか?」
「は、はあ?」
「そして、今は!」
スキンヘッドのフルティン男が僕の近くに瞬時に接近してきた。
「俄然攻め時よぉっ!!!」
ずどん。
大気を震わせる轟音がアジト跡に響いた。
彼の渾身の一撃が僕の顔面を貫き、その衝撃は周辺のアジトだった瓦礫を纏めて吹き飛ばすほど。
普通の人間であれば致命傷どころか頭パーンで即死だった。
「は?」
男の魔の抜けた声が嫌に響いた。
「残念。僕は普通の人間じゃないんだよね」
彼の拳程度、俄然効かないね。
生まれてから今に至るまで一度も辺境を出たことのない僕が外に知り合いがいるわけが…いないこともないが、いたとしても野菜を売る問屋さんくらいだ。野党に知り合いがいるわけはない。
しかし、知り合いではないが僕が一方的に知っている野党がいた。
その名もスズメ盗賊団。
日本人が聞いたら軽く笑ってしまいかねないくらいに可愛らしい名前だが、この世界ではスズメは絶滅済み。
身近にいる鳥は軒並み絶滅してほとんどの鳥類の名前は忘れ去られた。
その忘れ去られ絶滅した鳥類の内、比較的今でも名前だけが残って知名度の高いスズメの名前を使った結果、そんな可愛らしい名前になったのだと思われる。
そうまでして鳥の名前を使いたかったのかな?と思わないでもないが、その名前に反してこの山賊団は悪い意味で非常に有名で、最近は僕の住む辺境近辺に住み着いたらしく、辺境の人々の誰もが知るようになった。
というのも、こいつら畑を荒らしまくる常習犯なのである。
地球では畑を荒らすといえば猪や鹿を始めとした大型動物や、土中で穴を掘って根を切ったり益虫であるミミズを食べ散らかすモグラ、カラスやスズメをはじめとした鳥類や、ネズミなどの齧歯類もそうだ。
しかし、この世界ではそれらもまた、ほぼ食用として絶滅。
そうした害獣に悩まされることはまずない上に、いたとしてもゼルエルちゃんのご飯になるか、僕のご飯になるかの二択。
しかし、そうした害獣がいない代わりと言ってはなんだが盗賊の類が深夜に畑で野菜を掠めとるのだ。
言うなればこの世界における害獣は盗賊達にあたる。
そう言った意味では農家にとっては害獣扱いのスズメの名前を使う盗賊団はなかなかどうして、その行いに合った素晴らしく相応しい名前と言わざるをえない。
前に話したヨトウガやゾウムシのような害虫類よりも被害は大きくなる。
なにせまるごと掻っ攫われるのだから。
もちろん、食糧の生産が追いついてないこの世界ではそうした食材泥棒というのは凶悪犯扱いにされ、地球の人が見たら畑を荒らしただけでそこまでする?とドン引きするくらいの捜査体制のもと数日で捕まって然るべき刑罰を受けることになる。
大抵は見せしめとして軽めの公開拷問からの、公開死刑だというから国がどれほど食材盗難を問題視しているかが分かるものだ。
そういった事情もあり辺境とはいえ、それらの野菜泥棒に対する警備体制はかなりの力の入れようで基本的に生半可な泥棒ではすぐに壊滅させられるのだが、このスズメ盗賊団は違った。
というか名の通った盗賊団全般に言えることなのだが、そうした厳重な警備体制を敷いてもすり抜けて泥棒を働き、かつ生き残ってきただけあって非常にタチが悪いのだ。
スズメ盗賊団はそのうちの一つで、本来ならば強盗なら強盗、殺人なら殺人、畑からの野菜の盗難であれば盗難と何かしらを専門に行うのだが、こいつらはそのうちの全てをやらかすクソッたれどもである。
僕が彼らの名前を知ったのは、起きたらうちの畑の一部からゴッソリ野菜が無くなっていたある日のことだ。
うちだけではなく他のいくつかの農家も被害に遭ったらしいが、僕はコイツらが許せなかった。
いずれ魔王クリエイターで魔王を作って皆殺しにしてやろうかと考えるくらいには。
いや、もちろん元日本人としてそれだけで虐殺はちょっとなぁとなるけれど、超常の存在に人類の間引きを命じられているわけだし、ちょうど良い機会とばかりに僕は黙って彼らに捕まったのである。
このままアジトに案内された後で一網打尽にするのが1番手っ取り早く、効率的だと信じて。
「…てめぇはココに入ってな。久しぶりの女だぁ、後でボスと一緒に可愛がってやるからよぉ」
「お下品だなぁ」
「ヒヒヒッ…強がりもいつまで持つかねぇ」
ロリコンらしきスズメ盗賊団の1人にまず案内されたのはアジトの牢屋らしき場所。
そこに僕を蹴り入れて、彼はそのまま去っていった。
ボスとやらに報告にでも行ったんだろうな。
そしてこれは非常に好都合だ。
僕が魔王を送り込まなかったり、わざわざ捕まったふりをしたのはすでに盗賊達に捕まっている人がいたら、巻き込みかねないためだ。
魔王エルルちゃんならばアジトを確認した段階で適当なスキルを使ってアジトごと消し飛ばせないこともないのにそうしない理由でもある。
とはいえ、その心配は不要だったようだ。
牢屋らしき場所には僕しかいなかった。
僕を牢屋にぶち込んだ男も久しぶりの女とか言ってたし、他の場所に誰かしらがいるということもあるまい。
であればやる事は簡単である。
「なむなむ」
精神衛生上、自ら人間を間引くことをするつもりは無かったし、それは魔王エルルちゃんを操っていたとしても変わらないが、畑に害をなすばかりか人の命を無為に奪う畜生じみた連中であれば別である。
魔王蝶々で色々見たことで多少、慣れたというのもあるけれどね。
手を擦り合わせて、冥福を祈りつつ、魔法を使う。
本体の僕と共有しているスキルの一つ、超水魔法を使い僕を中心に巨大な水の竜巻が展開して数秒と経たずに周辺を飲み込んで消しとばす。
するとあら不思議。
1分と経たずに盗賊達はアジトごとミンチという寸法。
たかだか水と舐めてはいけない。
水滴が長い年月をかけて石に穴を開けるように、水にも攻撃力はある。
特に大雨の時の鉄砲水や地震で起きる津波などの威力は建築物を簡単に倒壊させることができるし、水に圧力をかけて吹き付けるウォータージェットすなわちウォーターカッターとも呼ばれる工具を用いた場合、切断できないものはないと言われるほどだ。
この超水魔法は超と言う名がつくだけありウォーターカッター並みの威力で水を発生、射出することができる。
しかも今、行ったようにかなり広範囲に。
他にも同じく超シリーズの魔法があるが、環境と死体を見なくて済みそうと言うことから水魔法を選択した。
我ながら恐ろしいスキルを作ってしまったものだと、消し飛んだスズメ盗賊団アジトを眺めていると1人だけ立っている人間がいた。
「は、はあ?」
思わず間抜けな声が出てしまったくらいだ。
え?なんで原型とどめてんの?
よしんば形が残っていたとしても、立ってるのはおかしくない?
あの広範囲、かつ高火力の水魔法を受けて生きているとかコイツ人間かよ?
軽く引きつつ、立っていた人間を眺めていると体の節々から血を流し、衣服がボロボロになりながら口を開く。
「…よくもやってくれやがったなあ、クソガキがよぉおおっ、ぜったいに許さんぞぉおっ!!」
目が血走り、怒声をあげるスキンヘッドの男。
コイツがボスかな?
「てめぇ、国から派遣されたアルバトロスとか言う奴らの構成員だなぁ?攫われたガキを装ってアジトに侵入してくるとはやってくれるじゃねぇか」
「アルバトロス?たしかアホウドリのことだっけ?」
アルバトロスとはアホウドリの意味を指す言葉で、何というかこの世界の組織は鳥の名前を使いたがる奴ばかりだなと思ったり。
ちなみにアホウドリの名の由来は警戒心がほぼ存在しないため簡単に捕獲できるほどにアホだからと言う由来からアホウドリの名がついたそうな。
「いや、僕は農家だよ」
「ふざけたこと言ってんじゃねぇっ!てめぇみたいな農家がいてたまるかっ!!部下ごとアジトが消し飛んだんだぞっ!!」
ごもっとも。
こんなことができる農家は僕くらいなものだろう。たぶん。
「…余裕ぶってるが、てめぇもあれだけの大技を使って疲れてるんだろ?
アレを受けてピンピンしてる俺に逃げてほしいと考えてるはずだ」
「え?いや、逃したくない…けど…ちょっと手ずから殺すのは精神衛生上、躊躇っちゃうと言うか、こんなことなら魔王の一匹くらい連れてくればと思わないでもない…」
「だが、俺は俄然逃げないね!!
何故ならてめぇをぶっ殺す最大のチャンスだからさっ!!」
そう言ってスズメ盗賊団のボスらしきスキンヘッドが拳を作る。
次の瞬間、彼の肉体が比喩ではなく実際に一回り大きくなった。
ただでさえ僕の魔法でズタボロになった服はその衝撃で剥がれ落ちてフルティン状態でファイティングポーズを取る。
なんだコイツ。
羞恥心って言葉を知らんのか?
いや、まあ状況的に正しい対応だとは思うけども、ちょっと長くは見ていたくはない。
「冥土の土産に教えてやるよ。俺の率いるスズメ盗賊団がここまで大きくなったのは攻める時は攻め、逃げる時は逃げる。その見極めに間違えなかったからさ。わかるか?」
「は、はあ?」
「そして、今は!」
スキンヘッドのフルティン男が僕の近くに瞬時に接近してきた。
「俄然攻め時よぉっ!!!」
ずどん。
大気を震わせる轟音がアジト跡に響いた。
彼の渾身の一撃が僕の顔面を貫き、その衝撃は周辺のアジトだった瓦礫を纏めて吹き飛ばすほど。
普通の人間であれば致命傷どころか頭パーンで即死だった。
「は?」
男の魔の抜けた声が嫌に響いた。
「残念。僕は普通の人間じゃないんだよね」
彼の拳程度、俄然効かないね。
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