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Ⅳ章
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「一発でダメなら、2発、3発と喰らわせてやるわいっ!!」
片腕だけを包んでいた桜色の蒸気がもう片方にも発生して、今度は両腕で殴りかかる。
もちろん、魔王ミイデラゴミムシも黙って食らうはずがない。
俊敏スキルを遺憾無く発揮し、その2メートル近い巨躯からは想像できないほどに高い機動力で源流院から飛び退いた。
そして、すかさずの放屁。
魔力カノンスキルで強化されたそれは源流院の体を焼かんと襲いかかる。
「それはもう食らわぬぞっ!!」
桜花神拳を修めている人間からすれば、お尻の先から出すと分かった上で注意深く見れば避けるのは難しいことじゃない。
範囲や、俊敏スキルによって射出反応速度などが跳ね上がっているため、簡単ではないが。
そして、再度、接近。
その巨大には不釣り合いな俊敏性に翻弄されつつも、今までの動きを踏まえて源流院は拳を振るった。
ずどどどん。
一瞬で4回ほど叩き込まれた桜花萌拳。
桜色の閃光が花咲く。
みしり、と魔王ミイデラゴミムシの外骨格がたわむ。
この桜花萌拳という奥義の1番の特徴は連射できる技でありながら奥義の名に恥じぬ高威力であるということだ。
元来、威力の高い攻撃をしようとすればそれをするのにある程度のタメが要る。
準備、とも言い換えれる。
例えば人が持つ銃を撃つためには銃弾を込めて引き金を引くだけで良いが、大砲レベルの弾を放とうと思えば、そうはいかない。
何十キロとある弾を込める段階で一苦労するし、それを放つための様々なアクションも小さな銃とは比べものにならないほどに大変で、さらに言えばもっと前の段階も考えた際の製造コストや輸送コスト、いつでも使えるようにするのに整備コストなども必要になってくる。
さらに例えれば格闘技で威力を求めた攻撃を放とうと思えば、大振りになったり、走ったりして、助走という名のタメが必要だ。
つまり武器を使おうと使わまいと威力の高い攻撃をしようとすればそれ相応の時間やら準備やらコストやらが必要になる訳だ。
しかし、桜花萌拳は違う。
厳密には両腕に込めるためのエネルギーを練り上げるためのタメが必要になるが、一度練り上げればあとはそれを維持し続けて殴れば良いだけ。
理論上、一度発動してエネルギーを練り続けていれば常に桜花萌拳を繰り出し続けることができる。
威力を確保しつつも、隙が非常に少なく、連続で使える大技なのだ。
「まだまだぁっ!!」
ずどん
ずどん
ずどん
と、大気を震わせる源流院の放つ桜花萌拳は魔王ミイデラゴミムシを殴って離さない。
もとい、魔王ミイデラゴミムシが殴られた際に後退しても、瞬時に距離を詰めて桜花萌拳。
魔王ミイデラゴミムシがこのまま攻撃を受けるのはやばいと飛び退いても距離を詰めて桜花萌拳。
放屁による反撃を受けても努めて無視をして、距離を詰めて桜花萌拳。
ならばと前脚で叩いて弾き飛ばそうとする魔王ミイデラゴミムシの攻撃を避けて、ないしは受けてから距離を詰めて、桜花萌拳。
距離を取らせずに、奥義の名に恥じない破壊力を持つ桜花萌拳のラッシュ。
ついに魔王ミイデラゴミムシの硬い甲殻にヒビが入った。
「これで終いじゃっ!!」
桜色の蒸気を纏いながら源流院の右ストレートが魔王ミイデラゴミムシの頭を叩き潰す。
爆音、そして魔王ミイデラゴミムシの頭が地面へとめり込んだ。
魔王ミイデラゴミムシは沈黙した。
と思いきや。
「ぬぅっ!?」
魔王ミイデラゴミムシは出し惜しみするのをやめた。
魔王ミイデラゴミムシの原種たる異世界産ミイデラゴミムシは放屁はあくまで防御手段であり、敵を追い払うためのものであるため、一度に撃ち切ることはない。
そも、撃ち切ってしまえば身を守る手段を無くすために出し惜しみをして小出しにする、というよりはそういう構造になっていると言うべきか。
体内に貯蔵できる放屁の材料である化学物質も無限に蓄えることができる訳ではないのだから、無駄遣いをしてしまえばそこで食べられて終わってしまう。
だからこそ異世界産ミイデラゴミムシを改造した魔王ミイデラゴミムシも本能的に放屁を小出しにしていた。
した上での放屁の威力だった。
しかし、それでは負ける。
ゆえに彼は今現在、持ち得る貯蓄された放屁の元である化学物質と、体内の魔力を全て次の一撃に込めた。
全身全霊の後先考えぬ全力の一撃。
雷が落ちた音よりも、激しく重々しい轟音が鳴った瞬間!
「…っ!?」
周囲の草木が萎びて、ひしゃげ、あまりの高温にさらされた結果、自然発火した。
放たれた放屁の瞬間最高温度は3000度まで達し、周囲の水気を全て蒸発させた上でなお高温下にあったために燃えやすい草木の類が一斉に発火したのだ。
もちろんそれに晒された源流院はみるみるその体を焼かれて、死ぬかと思いきや
「3束っ!!」
彼ら桜花神拳使用者は体内における魔力、霊力、気、魂力、神気の5種のうちいくつ使えるかを束という単位で数える。
すなわち、3束とは体内で3種のエネルギーを同時に練り上げることであり、源流院は今まで2種のエネルギーで戦っていたところ、3つの超人化を果たして耐え忍んだ。
魔王ミイデラゴミムシの渾身の放屁に体の節々を焼かれながらも、トドメを指すべくさらなる奥義を繰り出した。
しかし、魔王ミイデラゴミムシもここで仕留めねば自らに後が無いことを理解していた。
魔力カノンスキルは体内における放屁の材料の生成速度もアップさせる。
源流院を殺し切るために、材料が出来た瞬間から即座に使用し続ける。
「ニ 桜纏」
源流院が繰り出した二つ目の奥義は体内で練り上げたエネルギーを効率よく体に纏わせることでさらなる身体能力を発揮するという桜花神拳における基礎にして至高と謳われる技であった。
体の節々から桜色の蒸気を吹き出し、髪の毛もまた桜色に染めながら、彼は再度一つ目の奥義を放つ。
「一 桜花萌拳」
桜纏によって身体能力がさらに跳ね上がった状態で繰り出された桜花萌拳は桜色の一閃を描きながら怪我をした魔王ミイデラゴミムシへと叩き込まれた。
拳に込めた桜色の蒸気を桜の花弁のように散らしながら。
魔王ミイデラゴミムシは頭から胸にあたる部分を丸ごと吹き飛ばされ、しばらく蠢くもののすぐに動かなくなった。
片腕だけを包んでいた桜色の蒸気がもう片方にも発生して、今度は両腕で殴りかかる。
もちろん、魔王ミイデラゴミムシも黙って食らうはずがない。
俊敏スキルを遺憾無く発揮し、その2メートル近い巨躯からは想像できないほどに高い機動力で源流院から飛び退いた。
そして、すかさずの放屁。
魔力カノンスキルで強化されたそれは源流院の体を焼かんと襲いかかる。
「それはもう食らわぬぞっ!!」
桜花神拳を修めている人間からすれば、お尻の先から出すと分かった上で注意深く見れば避けるのは難しいことじゃない。
範囲や、俊敏スキルによって射出反応速度などが跳ね上がっているため、簡単ではないが。
そして、再度、接近。
その巨大には不釣り合いな俊敏性に翻弄されつつも、今までの動きを踏まえて源流院は拳を振るった。
ずどどどん。
一瞬で4回ほど叩き込まれた桜花萌拳。
桜色の閃光が花咲く。
みしり、と魔王ミイデラゴミムシの外骨格がたわむ。
この桜花萌拳という奥義の1番の特徴は連射できる技でありながら奥義の名に恥じぬ高威力であるということだ。
元来、威力の高い攻撃をしようとすればそれをするのにある程度のタメが要る。
準備、とも言い換えれる。
例えば人が持つ銃を撃つためには銃弾を込めて引き金を引くだけで良いが、大砲レベルの弾を放とうと思えば、そうはいかない。
何十キロとある弾を込める段階で一苦労するし、それを放つための様々なアクションも小さな銃とは比べものにならないほどに大変で、さらに言えばもっと前の段階も考えた際の製造コストや輸送コスト、いつでも使えるようにするのに整備コストなども必要になってくる。
さらに例えれば格闘技で威力を求めた攻撃を放とうと思えば、大振りになったり、走ったりして、助走という名のタメが必要だ。
つまり武器を使おうと使わまいと威力の高い攻撃をしようとすればそれ相応の時間やら準備やらコストやらが必要になる訳だ。
しかし、桜花萌拳は違う。
厳密には両腕に込めるためのエネルギーを練り上げるためのタメが必要になるが、一度練り上げればあとはそれを維持し続けて殴れば良いだけ。
理論上、一度発動してエネルギーを練り続けていれば常に桜花萌拳を繰り出し続けることができる。
威力を確保しつつも、隙が非常に少なく、連続で使える大技なのだ。
「まだまだぁっ!!」
ずどん
ずどん
ずどん
と、大気を震わせる源流院の放つ桜花萌拳は魔王ミイデラゴミムシを殴って離さない。
もとい、魔王ミイデラゴミムシが殴られた際に後退しても、瞬時に距離を詰めて桜花萌拳。
魔王ミイデラゴミムシがこのまま攻撃を受けるのはやばいと飛び退いても距離を詰めて桜花萌拳。
放屁による反撃を受けても努めて無視をして、距離を詰めて桜花萌拳。
ならばと前脚で叩いて弾き飛ばそうとする魔王ミイデラゴミムシの攻撃を避けて、ないしは受けてから距離を詰めて、桜花萌拳。
距離を取らせずに、奥義の名に恥じない破壊力を持つ桜花萌拳のラッシュ。
ついに魔王ミイデラゴミムシの硬い甲殻にヒビが入った。
「これで終いじゃっ!!」
桜色の蒸気を纏いながら源流院の右ストレートが魔王ミイデラゴミムシの頭を叩き潰す。
爆音、そして魔王ミイデラゴミムシの頭が地面へとめり込んだ。
魔王ミイデラゴミムシは沈黙した。
と思いきや。
「ぬぅっ!?」
魔王ミイデラゴミムシは出し惜しみするのをやめた。
魔王ミイデラゴミムシの原種たる異世界産ミイデラゴミムシは放屁はあくまで防御手段であり、敵を追い払うためのものであるため、一度に撃ち切ることはない。
そも、撃ち切ってしまえば身を守る手段を無くすために出し惜しみをして小出しにする、というよりはそういう構造になっていると言うべきか。
体内に貯蔵できる放屁の材料である化学物質も無限に蓄えることができる訳ではないのだから、無駄遣いをしてしまえばそこで食べられて終わってしまう。
だからこそ異世界産ミイデラゴミムシを改造した魔王ミイデラゴミムシも本能的に放屁を小出しにしていた。
した上での放屁の威力だった。
しかし、それでは負ける。
ゆえに彼は今現在、持ち得る貯蓄された放屁の元である化学物質と、体内の魔力を全て次の一撃に込めた。
全身全霊の後先考えぬ全力の一撃。
雷が落ちた音よりも、激しく重々しい轟音が鳴った瞬間!
「…っ!?」
周囲の草木が萎びて、ひしゃげ、あまりの高温にさらされた結果、自然発火した。
放たれた放屁の瞬間最高温度は3000度まで達し、周囲の水気を全て蒸発させた上でなお高温下にあったために燃えやすい草木の類が一斉に発火したのだ。
もちろんそれに晒された源流院はみるみるその体を焼かれて、死ぬかと思いきや
「3束っ!!」
彼ら桜花神拳使用者は体内における魔力、霊力、気、魂力、神気の5種のうちいくつ使えるかを束という単位で数える。
すなわち、3束とは体内で3種のエネルギーを同時に練り上げることであり、源流院は今まで2種のエネルギーで戦っていたところ、3つの超人化を果たして耐え忍んだ。
魔王ミイデラゴミムシの渾身の放屁に体の節々を焼かれながらも、トドメを指すべくさらなる奥義を繰り出した。
しかし、魔王ミイデラゴミムシもここで仕留めねば自らに後が無いことを理解していた。
魔力カノンスキルは体内における放屁の材料の生成速度もアップさせる。
源流院を殺し切るために、材料が出来た瞬間から即座に使用し続ける。
「ニ 桜纏」
源流院が繰り出した二つ目の奥義は体内で練り上げたエネルギーを効率よく体に纏わせることでさらなる身体能力を発揮するという桜花神拳における基礎にして至高と謳われる技であった。
体の節々から桜色の蒸気を吹き出し、髪の毛もまた桜色に染めながら、彼は再度一つ目の奥義を放つ。
「一 桜花萌拳」
桜纏によって身体能力がさらに跳ね上がった状態で繰り出された桜花萌拳は桜色の一閃を描きながら怪我をした魔王ミイデラゴミムシへと叩き込まれた。
拳に込めた桜色の蒸気を桜の花弁のように散らしながら。
魔王ミイデラゴミムシは頭から胸にあたる部分を丸ごと吹き飛ばされ、しばらく蠢くもののすぐに動かなくなった。
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