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Ⅵ章 衰亡
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「緊急!緊急!!緊急事態発生!!」
「各所への連絡急げっ!!」
「防衛体制を…っいや、攻勢に出なくては無駄な犠牲が増えるだけだ!!」
「カルーマリアとアズールに詰めてた奴らはどうなった!?」
「首都への連絡と応援要請は!?」
「これをB区画に持っていけ!早くしろ!!」
超大都市アイヌゥ。
エルル達の本格的な攻撃によって2つの復興途中の都市が文字通りの意味で消しとばされたとの緊急連絡でてんやわんや。
1つの都市が消しとばされるまでにかかった時間は約10分。
多少の交戦はあったものの敵に対する情報は殆ど得られていなかった。
戦力よりも復興用の資材や重機の方が多くあったために、簡単に突破されてしまったのである。
超大都市アイヌゥでは僅かに得られた情報をもとに、軍人達が忙しなくあっちにいったりこっちにきたりを繰り返し、防衛体制を整えていた。
「アスマン大佐!!偵察用獣機が目標を捉えました」
「すぐに映せっ!」
「はっ!」
忙しない軍人達を指揮する超大都市アイヌゥの最高責任者、アスマン大佐と呼ばれた男が部下に命じると、彼らのいる作戦司令室の真ん中にあるホログラムメインモニターと名付けられた映像出力装置から立体的な映像が飛び出した。
「なんだこれは?」
「機械の故障…か?」
「うん?」
その場にいたお偉い軍人達が皆、自らの目を疑った。
それほどに奇妙な映像が彼らの目の前にある。
と言うのも、ただ黒い物体が空を飛んでいる、と言うわけではない。
まるで写真の一部に後から黒い絵の具を塗りたくった様な立体感がまるで分からず、輪郭しか分からない気味の悪い映像が映っているからである。
周囲の風景は現実の物なのに、黒い飛行物体だけ平面図であるかのような…違和感しかない映像だ。
誰もが目を疑うのも無理はない。
「私も目を疑い、獣機の故障を疑いましたが別個体からの映像も変わりありません。これは現実に存在している物です」
そう言って獣機と呼ばれる地球で言うところの動物を模したラジコンに搭載されたカメラの映像データを持ってきた彼はメインモニターの画像を切り替えた。
「別角度…横からの映像がこちらです。この角度からならば相手の形がより分かります」
「なっ?!これは!?」
「どう言うことだっ!?」
「奴らは絶滅させたはずだぞ!?」
前からの映像では黒い丸に羽をつけたコウモリをデフォルメした物にしか見えなかったが、横からの映像で皆が理解する。
横からであっても影絵の様に立体感を感じられず、そのシルエットしか分からないがそのシルエットはサドラン帝国では殺し尽くされて絶滅した…させたと言われている竜のソレであった。
軍学校の歴史関連の教育課程で学ぶからこそ軍人たる彼らは竜だと理解できたが、今や一般市民は見たこともない、今では殆どの種が絶滅したと言われている竜種らしきシルエット。
黒い飛行物体は異様に黒い体をした竜種だったと言うわけだ。
「こんなデカブツが今までどこに…」
「そんなことよりも竜種だとしてもこいつのシルエットしか分からない体はどうなっているんだ?」
「竜種ならば大型兵器を用意せねば仕留められんぞ!?」
「アイヌゥにアドラールの矢はあったか?」
「あったとしてもアドラールに搭載できる規格の弾薬なんて無いぞ?あったとしても僅かだろう」
「新型戦車で…」
「いや、アレは他国への対軍兵器だ。伝え聞く竜種の鱗皮を貫通できるだけの火力はないはずだ。そこまでの火力が無くても人間は殺せるんだからな」
「静粛に」
アスマン大佐の諌める声でザワつきが収まる。
「トール少尉。技術班の意見はどうなっている?」
「はい、技術班によるとまず相手の異様な見た目は光の吸収率が100%ないしはそれに近いからだとのことです」
「ふむ」
「人間が物を認識するためのメカニズムは光源からの光が物に反射することで見えると言うのはすでにご存知かと思います」
「ああ。青い物体ならば青い光だけが反射されて目に入る。ゆえに青く見える、と言う具合だな」
「そのとおりです。そして黒い物体は黒色の光が反射して見えるわけではなく、反射するはずの光が吸収されることで黒色にみえています。いや、黒色部分だけが真っ暗な場所として浮き上がっている、というのが正しい表現でしょう」
「だがいくら黒いといえど立体感すら感じないのはどう言う…いや、だから100%なのか!」
「はい。お気づきの通り、いくら黒い物体であろうと僅かながらに光は反射します。
それによって黒い立体物であろうと物の形や質感が分かります」
「映像にある竜らしき飛行生物は形や質感が分からぬほどに光の吸収率が高い外皮を纏っているわけだな?」
「次にこちらをご覧ください」
トール少尉と呼ばれた彼はメインモニターを再度操作した。
「即座にやられてしまったので詳しい攻撃手段はわかりませんが、現在のカルーマリア跡地とアズール跡地の映像です」
「…これは…間違いないのか?」
再度、ざわつく作戦司令室。
あまりの映像にザワつきを収めるべきアスマン大佐はソレどころではなかった。
「何もないではないか!!」
映像には更地と化し、何も、残骸すら残らぬただの地面が広がっていたのである。
「映像から得られる情報は多くありません。最初の緊急連絡から約4時間経過してますが、この短時間では尚更のこと。しかし、分かることもあります。攻勢に…こちらから迎え討たねば、何をする間もなく消し飛ぶことになる…防衛体制を整えて待ち構えるのは悪手である。それが技術班の見解です」
絶句。
室内の人間は1人残さず、黙り込んでしまった。
「各所への連絡急げっ!!」
「防衛体制を…っいや、攻勢に出なくては無駄な犠牲が増えるだけだ!!」
「カルーマリアとアズールに詰めてた奴らはどうなった!?」
「首都への連絡と応援要請は!?」
「これをB区画に持っていけ!早くしろ!!」
超大都市アイヌゥ。
エルル達の本格的な攻撃によって2つの復興途中の都市が文字通りの意味で消しとばされたとの緊急連絡でてんやわんや。
1つの都市が消しとばされるまでにかかった時間は約10分。
多少の交戦はあったものの敵に対する情報は殆ど得られていなかった。
戦力よりも復興用の資材や重機の方が多くあったために、簡単に突破されてしまったのである。
超大都市アイヌゥでは僅かに得られた情報をもとに、軍人達が忙しなくあっちにいったりこっちにきたりを繰り返し、防衛体制を整えていた。
「アスマン大佐!!偵察用獣機が目標を捉えました」
「すぐに映せっ!」
「はっ!」
忙しない軍人達を指揮する超大都市アイヌゥの最高責任者、アスマン大佐と呼ばれた男が部下に命じると、彼らのいる作戦司令室の真ん中にあるホログラムメインモニターと名付けられた映像出力装置から立体的な映像が飛び出した。
「なんだこれは?」
「機械の故障…か?」
「うん?」
その場にいたお偉い軍人達が皆、自らの目を疑った。
それほどに奇妙な映像が彼らの目の前にある。
と言うのも、ただ黒い物体が空を飛んでいる、と言うわけではない。
まるで写真の一部に後から黒い絵の具を塗りたくった様な立体感がまるで分からず、輪郭しか分からない気味の悪い映像が映っているからである。
周囲の風景は現実の物なのに、黒い飛行物体だけ平面図であるかのような…違和感しかない映像だ。
誰もが目を疑うのも無理はない。
「私も目を疑い、獣機の故障を疑いましたが別個体からの映像も変わりありません。これは現実に存在している物です」
そう言って獣機と呼ばれる地球で言うところの動物を模したラジコンに搭載されたカメラの映像データを持ってきた彼はメインモニターの画像を切り替えた。
「別角度…横からの映像がこちらです。この角度からならば相手の形がより分かります」
「なっ?!これは!?」
「どう言うことだっ!?」
「奴らは絶滅させたはずだぞ!?」
前からの映像では黒い丸に羽をつけたコウモリをデフォルメした物にしか見えなかったが、横からの映像で皆が理解する。
横からであっても影絵の様に立体感を感じられず、そのシルエットしか分からないがそのシルエットはサドラン帝国では殺し尽くされて絶滅した…させたと言われている竜のソレであった。
軍学校の歴史関連の教育課程で学ぶからこそ軍人たる彼らは竜だと理解できたが、今や一般市民は見たこともない、今では殆どの種が絶滅したと言われている竜種らしきシルエット。
黒い飛行物体は異様に黒い体をした竜種だったと言うわけだ。
「こんなデカブツが今までどこに…」
「そんなことよりも竜種だとしてもこいつのシルエットしか分からない体はどうなっているんだ?」
「竜種ならば大型兵器を用意せねば仕留められんぞ!?」
「アイヌゥにアドラールの矢はあったか?」
「あったとしてもアドラールに搭載できる規格の弾薬なんて無いぞ?あったとしても僅かだろう」
「新型戦車で…」
「いや、アレは他国への対軍兵器だ。伝え聞く竜種の鱗皮を貫通できるだけの火力はないはずだ。そこまでの火力が無くても人間は殺せるんだからな」
「静粛に」
アスマン大佐の諌める声でザワつきが収まる。
「トール少尉。技術班の意見はどうなっている?」
「はい、技術班によるとまず相手の異様な見た目は光の吸収率が100%ないしはそれに近いからだとのことです」
「ふむ」
「人間が物を認識するためのメカニズムは光源からの光が物に反射することで見えると言うのはすでにご存知かと思います」
「ああ。青い物体ならば青い光だけが反射されて目に入る。ゆえに青く見える、と言う具合だな」
「そのとおりです。そして黒い物体は黒色の光が反射して見えるわけではなく、反射するはずの光が吸収されることで黒色にみえています。いや、黒色部分だけが真っ暗な場所として浮き上がっている、というのが正しい表現でしょう」
「だがいくら黒いといえど立体感すら感じないのはどう言う…いや、だから100%なのか!」
「はい。お気づきの通り、いくら黒い物体であろうと僅かながらに光は反射します。
それによって黒い立体物であろうと物の形や質感が分かります」
「映像にある竜らしき飛行生物は形や質感が分からぬほどに光の吸収率が高い外皮を纏っているわけだな?」
「次にこちらをご覧ください」
トール少尉と呼ばれた彼はメインモニターを再度操作した。
「即座にやられてしまったので詳しい攻撃手段はわかりませんが、現在のカルーマリア跡地とアズール跡地の映像です」
「…これは…間違いないのか?」
再度、ざわつく作戦司令室。
あまりの映像にザワつきを収めるべきアスマン大佐はソレどころではなかった。
「何もないではないか!!」
映像には更地と化し、何も、残骸すら残らぬただの地面が広がっていたのである。
「映像から得られる情報は多くありません。最初の緊急連絡から約4時間経過してますが、この短時間では尚更のこと。しかし、分かることもあります。攻勢に…こちらから迎え討たねば、何をする間もなく消し飛ぶことになる…防衛体制を整えて待ち構えるのは悪手である。それが技術班の見解です」
絶句。
室内の人間は1人残さず、黙り込んでしまった。
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