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第二章:500円のファンタジー(全16話)
500円のファンタジー(3/16)
しおりを挟む「はぐ、あぐっ、もっもっ……ぱくぱく、ごくっ」
かめのこ、ならぬ貴族っ娘。
「はぐっ、………ごっくん、……うぅ~っ、……はぐっ」
「はぁあ……」
泣くのか食うのか、と問うのも、なんというやら。
昨日に続いての特盛り唐揚げ弁当を、こいつはもしゃもしゃと食べている。
訂正、もっもっもっ……と貪食している。
腹をすかせた兎が、おいしいごはんを、無心で……食べてるような、そんな具合で。
対する俺であるが、まあ何分? 昨日からの縁があるわけでして、
はてさて、この子の様子はどうなのだろう……と観察しているのだが、
……この子は今、感極まった様子で、目尻をうるませていた。
涙を流しているのは、果たして弁当の味に対してなのだろうか。
どうなのか……
「ごっくん……」
うん、
「美味しい、です。」
「へいへいよ」
咀嚼した、最後の一口を飲み下す瞬間、ぷるぷるぷる……、と、身体を震わせてもいる始末。
鼻の片穴からは鼻水をたらさせ、
なおも両の閉じた瞼から心の汗というものをとめどなく流しながら、斯く言うところの貴族っ娘は泣くように述べ始めた。
「揚げた鳥の肉が、ごはんが、オコメ…というのが、とっても、おいしいです。……ボクのからっぽのおなかに染み渡っていっていきます……ぅぅっ、ずずっ」
「へいへいへいな………」
どうやら弁当の味に感涙していたのが大まかだったらしい…
…のだが? それにしてもこんな、変哲のない唯の弁当屋のただの唐揚げ弁当だ。
なのに、なんでこんなに泣くのかね。
とにかくタイミングが良いところで、水筒の水を酌んで渡してやる。
が、
「……ほぁぁぁ」
「さっきから、なんだよ」
こやつ……変な声で一息つきやがる貴族っ娘め、
そういうと貴族っ娘は、うぅぅぇぇええぇ……と涙目で唸りだして、
「………それは、なんというか、なんというか、言えません」
「なんでよ、」
「だって、昨日に続いて、ボク、あなたのお世話になり続けになっているのですよぅ?!」
ずぎゃーん!となる貴族っ娘。
はぁ、と返事をするしかないが、
「こわい、へんだ、へんな、へんな、まものかもしれない、そうとまで思っていたあなたに、この、ボクがっ、! 侮辱してしまっていた、あなたに、ボクはお世話になりっぱなしなのですっ……
これじゃあ、ボクは勇者になれませんよぅ?!
勇者は、礼儀正しいモノなのです。誰に対しても、たとえ、魔物に対してであってもっ、
そんな資格は、そんな名誉は……ボクの目の前から、ボクの身体から、はるか遠くにへと、去っていって……離れていって……栄光が……遠く……うぅぅぅえぇん……」
なんだなんだ、こっちはまっとうに、やってやれることをやってやったまでさ……(ニコポ・スマイル)と格好良く?決めれる準備をしていたというのに。
なんか、そーとーに、失礼なことを言われた気がするのだが。
まあこめかみをひくつかせるまでもない……口元の端は、ひきつる感覚はまあ多少あるが。ぴくぴくと動いていたかもしれないが、はたしてどうなっていたかはわからんのであるが、おれたん。
嗚呼、大人げない……
とーいーうーかー、……勇者って、なんだ?
「……だからっ、ボクは、あなたにお礼をする、その責任と義務がっ、あるのですっ、ずずっ、すっ、ぐしゅ、…あっ、ひゃっ、あぅっ……/////」
関係有るかぁ?とも思いつつ、泣いて泣いて鼻水がすごいことになっていた、
(なにせ、顔の直下の膝枕に置いていたベントウの空容器に、こいつの鼻水は、垂れて落ちてきていたくらいだ!)
こいつの鼻を、丁寧な…すこし力が強かったかもしれんが。
俺ちゃんはそんな感じで、拭ってやりつつ……
「……ふぇぇ、」
どうしたのよ? おまえさん。
「ボクってば、今日までどこもいいところなくて、まるで至らないじゃないですかぁ……。ぐすっ、今日も食べれてしあわせだけど……、…こんなすごいものに、ボクのできるお礼は釣り合わないよぅ……ぅぅぅ……
ぐすんっ、だだだ、だから……」
「なんだよ……」
そのことか?
「そ、それ以上の理由がありますっ。ただ………それを言ったら…こんなおいしいものを食べれる機会は……ボクのおなかは……もう二度と……ぅぅぅ」
ん?
「こ、こほん!……で、でも、昨日と今食べたすてきな物のことは誰にもいえません。それくらい、言えません。言いません! あと、明日もたべさせてください!」
嗚呼?さいね、左様ね。
まぁ、はぁ……としか言えないわけだが、
「はぁ、」
とりあえず、俺もいちごオレを飲んで落ち着くとしよう。
果たして、丘地の斜面に腰掛けての食事だった。
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