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引っ越し

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翌朝、朝食をとり田島さんの会社に向かった。
六階建てのビルで、一階に受付と営業部、二、三階に他の部署、四階は社長室と会議室があり、五階は社員寮の個室、六階は風呂、トイレ、洗濯機、キッチンなどの水回りと食事をしたりテレビを見たり出来るスペースがある。
彼の部屋に入ると、3~4畳ほどの広さでベッド、物入れ、ハンガーラック、小さめの洗面台、ミニ冷蔵庫があるだけだった。
社内の私物は段ボールに入れられて隅に置いてあった。
それと部屋の私物を持ち、近くに停めておいた車へと運ぶ。
「すみません、退職の挨拶だけしてきます」
「ん、いってらっしゃい、急がなくていいからね」
「みんな忙しいので、たぶんすぐ戻りますよ」
「そっか」
「いってきます」
「はい」

暫くして田島さんが来て、私たちは家に戻った。
「うーん、疲れた、やっぱ年かな」
「俺のことですみません」
「いやいや、私から言い出したことだし、さて、今日はレトルトでいいかな?」
「はい、手伝います、温めるだけなら俺にも出来ます」
「じゃあまず選んで」
奥のパントリーに入り食品庫の扉を開けた。
水やパックご飯、各種レトルトに缶詰、お米などストックしてある。
一人なら節約して一か月は持つかな。
私が物心ついてから何度も起きている大地震からの教訓。
家は耐震性を高めてあるし、外にタンクを置いて生活用水は溜めてある、トイレの流す水はここからきている。
断水しても雨水を取り込めるようになっているし、浄水器も買ってある。
「田島さんが来てくれたからストックも増やさないとな」
「えっ」
「万が一に備えてるんだ、時々こうして食べて新しいのを補充してる」
「ここ数年で大きい地震が何個かありましたよね」
私は辛口のカレーを、彼は中辛を選んだ。
どちらも箱のままレンジで温められるタイプだ。
まずパックご飯を温め、カレーを温めて皿に移す。
「「いただきます」」
「足りなかったら好きなの持ってきて食べてね」
「ありがとうございます、でも大丈夫です、胃が小さくなってる気がします」
「あーもしかしてゼリー飲料とかで栄養取ってた?」
「そうですね、あとはカロリーバーとか」
「そっか、これからしっかり食べていけばもっとたくさん食べられるよ」
「あ、あの、こちらに住まわせてもらうのに月々いくら払えばいいですか?」
「え?要らないよ」
「そんな訳にはいきません」
「あの寮であの金額引かれてたんでしょ、貯金あんまり無いでしょ」
「仕事しますっ」
「無理しなくていいよ、そうだなー三か月くらいはのんびりしようよ、その後から貰うことにしよう、ねっ」
こうして三か月はのんびりすることに決まった。
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