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第二章 恋におちたら
4 side樹理
しおりを挟むみずみずしい若葉を茂らせた街路樹が流れるように過ぎ去っていく。前にこの車に乗ったときは夜で、よくわからなかったけれど体感速度がとても速い。高速道路なんかを走らせればもっとすごい速度が出る車なのだろうけど、ここは一般道で信号もあり、ほかの車も走っている。休日のせいか比較的車が少ないが、普通の速度のはずなのに、視点が低いせいもあって飛ぶようにという表現がぴったりくるような速さだ。
フロントガラスから見上げれば、抜けるような青空。絶好の洗濯日和だ。こんな日は朝から3回くらい洗濯機を回して、シーツやリネンの類いを干すとなんだか気分がすっきりするのだ。
本当に、もったいない。
一般的な女子高生とはかなり後悔する場所が違うことなど本人は全く意識することなく、ため息より短い息を吐く。
そんな樹理のことなどお構いなしで、車は見るからに高級そうな……樹理でも知っているようなブランドショップが軒を連ねる界隈をゆっくりと進む。
速度が落ちて景色の流れ方が変わったことで、樹理が哉の方へ視線を向けた。ここが目的地なのか? どう見ても食事どころというよりは服飾店舗が中心だ。
銀色のスポーツカーが大きく葉を茂らせた街路樹の下にある路上パーキングに止められた。
「ここ、ですか?」
「ああ」
困惑したような樹理の問いかけに哉がさらりと応えて二人分のシートベルトをはずし、車から降りた。
樹理も降りようとドアに手を掛ける。が、次から次へと通り過ぎる車に、ドアを開けるタイミングが合わない。
結局、見かねた哉がドアを開けてくれなかったらいつまでも降りることができなかっただろう。
「すいません」
緊張すると対人対物を問わずうまく間合いをあわせられないことは自覚しているが、情けない。
申し訳なさそうにしている樹理を見下ろして、哉が嘆息する。
「……車を替えるか……」
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