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学園☆天国
6 side夏清
しおりを挟むなんだか怖い、しかめつらしたオジサンの銅像。後ろに回って詳しい経歴を読めば、学園の創始者だった。
「こんなヤクザみたいな人が、こんな学校作ったんだ……」
顔がいかつい上に、右眉にガリっと刀傷。そんなものまで再現しなくていいと思うんだけど。
その銅像の周りには私たちと似たような待ち合わせをしてるっぽい人が結構いた。
じっくり経歴を読んで、私は再び男二人がどんと陣取っている、銅像横のブースを覗く。動きにあわせてひらめくかわいいモスグリーンのワンピースはキッチリお上品ラインをキープの膝丈。腰で折れないからだろうけど、やたらと丈を短くしてるような子は一人もいない。白いブラウスにどう見てもシルクなふわふわのリボン。ウチの高校の制服とは比較にならないくらいいい生地使ってます! って感じな、お嬢様制服に身を包んだ女生徒が、来場者に折り紙を手渡している。千羽鶴を作って災害被災地や戦争記念公園なんかに贈る活動の一環なんだとか。やってることもちょっぴりハイソだ。
人待ちの手持ち無沙汰を解消するにはもってこいの作業なのだろう、結構な人が折っている。一人一枚とは限らないのみたいだし。
だからか、折り紙が苦痛じゃなければ、何枚でも折り続けていい。私も久しぶりだったし、最初こそ楽しかったけど、三枚で飽きちゃったから、そこらをウロウロしてたんだけど。
折るためにかがまなくていいように、少し高めにしてある作業台。でもさすがに先生はかなり前かがみだ。で、そこで黙々と紙を折る男二人。なんなんだろう、この絵は。
「先生、そんな折り紙好きなの?」
「知ってるか? 折り紙は数学だ」
「……折り紙は折り紙でしょ」
先生の手元を見ると、二次元の平面に見えて実はきちんとこの世に存在することを主張する、わずかな紙の厚みという三次元的ハンデをものともせずに一分の狂いもなくキッチリ、他とは一線を画すほどきれいな折鶴が長い指によって造形される。瞬く間にスタンダードな折鶴が完成した。器用だなぁ ホントに。
「コレ、元に戻して折り目の図形を見てみろ」
少し勿体無いと思いながら、言われたとおり元に戻す。
「……すごい、キレイ」
正方形の紙に、大小の三角四角。ぶれることなくきれいにつけられた折り目。角度も辺の長さも対称。その線がどれも美しい。
「一枚の紙で何かを作る。有限の中で無限の可能性を作り出すためのプロセスは数学だ。例えばコレなんかは、割と有名だな」
いつの間に折ったんだか、先生の右手人差し指でくるくる回っている何か。
「見せてっ!」
広げて差し出した両手に、コロンと落ちてきたのは、薄い黄色の折り紙で折られたバラだった。
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