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前世の記憶は突然に。

地味に頑張るって大事。

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 この年の我が家は、豊作であった。



 特に芋がいつもの倍くらいとれた。

 腐葉土素晴らしい。森から取ってきたらもっと作れると思うとお父さんに伝えたら、狩りのついでに背負子にはっぱを取ってきてくれるようになった。

 腐葉土づくりの場所も広げて、せっせとララやレットと踏んだりほぐしたりして発酵を促す。


 またしてもお父さんに、うちの成功を村長さんたちに話していいか聞かれた。

 うちの畑の作物の育ちがいいことはもう村中の人が知っている。

 森からはっぱを取り、腐葉土を作る方法、かまどの灰をためておいて撒く方法、芋を切っても腐らない方法、豆の苗の育て方、麦は踏んだ方が作付きがいい事。


 私は二つ返事で了承した。貧しかったのはうちだけではない。

 うちの作付けが上がったとはいっても、たぶん暖かい地方よりは少ない。

 うちで成功した方法を試して、生活を向上させることはいい事だもの。


「リリは欲がないな」

「あるよ! みんなが幸せになったらいいなって思うよ」


 そう答えたら、お父さんがくしゃくしゃに笑って、いつものように頭をなでてくれた。


 そういうお父さんだって、夜中にこっそり援助を乞いに来た人に豆や芋を分けてあげているし、着の身着のままこの村に来た人には、家だってほとんどお金をもらわずに整備しているのを私は知っているのだ。


 この冬も、私は教会に通った。


 なんと、神父さんが私とレットのために王都から本を三冊も取り寄せてくれていた! 神父さんすごい!!

  ただし、内容は王家のすばらしさを讃えた本と、割と的外れなことをほんとらしく書き連ねた経済学の本と、この国の歴史を連ねた本だ。

 これは、王家のすばらしさを讃えた本と内容が似ていた。


 王都で貴族や裕福な商家の子供たちが勉強するための教本とのことである。

 結構年季が入っていたけど、大事に使われていたことが分かったので、私も大事に読んだ。

 内容はともかく、文字を覚えたかったから。

 レットには、なんとなくだけどこれは極論だなと思うところは別の考え方もあるよ、くらいで教えた。経済学はよくわからないもの。


 初めて教会に来た子供たちに計算を教えるのも、もはや私の役目らしい。ブロックは神父さんがちゃんと保管してくれていた。


 そんな感じで去年と変わらない日々を送っていた私だけど、とうとう来てしまったのだ。


 何がって、生理が。


 ちょっと早くない? って思ったけど、この世界じゃ十歳くらいに初潮が来るのは普通らしい。むしろ私は遅い方でした。確かに、ちょっと体格がいいもんね。

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