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第二部 元悪役令嬢の学園生活
31 次期皇帝
剣術大会、それは「アイリスの瞳」における恋愛イベント。レオハルトとアイリス、二人が見つめ合い、背景に花が散りばめられるタイプの話である。
レオハルトはアイリスに好意があることを自覚し、アイリスはそのことに気がつきはしないがレオハルトにドキドキと胸を高鳴らせるのだ。
だがしかし! 私もアイリスも、原作の恋愛イベントには手を出すつもりはない。
(ていうか、それどころじゃないし!)
未来を変える為に頭を悩まし、駆けずり回るのに忙しい。だからこの剣術大会も正直適当に終わらせて夏季休暇に備えたいところなのだ。
今日は天気がいい。これからまだどんどん暑くなっていくだろう。剣術大会は現在二回戦の最後の組が試合中だ。一年、二年生から上位成績者五名、三年生だけ六名選出される。この学園は就職活動の場でもあるので、この剣術大会は魔力量の多くない者や騎士を希望する者にとっては良い見せ場になる。
「いちいちヤキモチやいてコッチに八つ当たりしないでほしいんだけど! 婚約者なのに余裕なさすぎじゃん!?」
アイリスがレオハルトに雷を落としている。原作ファンの私としては、なんとも奇妙な光景に見えてしまう。
「なっ! リディの前でそれを言うなよ!」
「いや、いるからわざわざ言ってんの!」
私が他の男子生徒を治療していたのを見てブスくれたあげく、自分を治療をしてくれているアイリスに八つ当たりをしたので案の定怒られている。この二人の背景に花が舞うことはないだろう。レオハルトのヤキモチを最初は微笑ましく感じていたアイリスも、ついに限界がきていたようで、最近では一切容赦なくこの国の第一王子を叱りつけている。
「すみません! また倒れた子が……」
「きっと熱中症ね」
暑い中、熱心に応援している生徒達……特に女生徒は今日は私服の為、頑張って着飾っている子が多いのだ。
今回の剣術大会は原作と違い、選手全員試合の度に治療魔法を使うという方法がとられた。原作ではありえないことだが、私が協力しているから少々余裕があるのだ。
怪我を隠すレオハルト、それに気が付くアイリス(お花背景)……今更そのシーンは必要ないだろうという判断から校医のワイルダー先生に提案したところ、喜んで受け入れられた。
「リディ! 次の試合はちゃんと見に来てくれよ!」
「わかってますって。ちゃんと行きますから」
「さっきもそう言ってフィンリーの試合だけ見に来ていたじゃないか!」
バレていたか……。そりゃ推しの試合なんて絶対見るでしょ。ちょうどレオハルトの時は近くにいた女生徒がふらふらし始めてしまったので、急いでこの救護所に連れて行って見れなかったのだ。
「レオハルト様なら絶対勝つって信じてたので! 実際そうでしたしね」
「ま、まあな!」
「エリザ! 次のレオハルト様の試合、私を引きずってでも連れていてね」
「承知しました」
それでやっと納得してくれたのか、救護所を出て行った。結局準決勝に残った四名はルイーゼの予想通り、レオハルト、フィンリー様、ジェフリー、それに加えてヴィンザー帝国の次期皇帝のジュードだ。こいつがまた最近厄介で……。
『面白れぇ女』
このセリフを言われたのは、私、アイリス、ルイーゼ、アリアの四名。すでにたくさん女子を囲っているというのに、我々全員にちょっかいを出し始めたのだ。
「マジであのセリフ言う人って存在するんだね」
我々女子四名の中で、そのセリフを最後に聞いたアイリスがポツリと呟いたのを聞いて力が抜けてしまった。
彼のいるヴィンザー帝国にはハーレムがあり、身分や出身を問わずたくさんの女性を集めている。彼はこの国に遊び半分で花嫁を探しに来たのだ。
彼の本当の好みは知っていた。原作のアイリスだ。優しく可愛いだけではない。真っすぐ芯のある自分を持っている女性だ。次期皇帝相手に物怖じせず意見でき、彼を想って叱ることができる人。
私もアイリスも極力ジュードには近づかないようにしていた。近づく必要がある時も、出来るだけ言葉を発しない。パーティでレオハルトとジュードが挨拶しあっている時など、可能な限り気配を消している。婚約者の一歩後ろに下がりその言いなりになっている、なんともつまらない令嬢という印象を貫いていたのだ。
最初に目を付けられたのはルイーゼだ。出会いは剣術の授業。実技授業では月に何度か学年合同の日がある。彼女は一切次期皇帝であるジュードに忖度しなかった。久しぶりに『女が剣を?』をやられたので引けなかったというのもあったそうだ。
『私に一撃でも入れられたらお話をうかがいますわ』
その次はアリア。例の盗賊事件で興味を持たれてしまった。ヘラヘラと近づいてきたジュードの態度をいつものようにピシャリと嗜める。
『私、貴方様に一切興味はございませんので。ごきげんよう』
そして私は猫を被っていたことがバレてしまった。ライザとやり合っているところ見られていたのだ。しかもよりにもよっていつものノリでボロカスに罵っている場面を。それがバレた時に開き直ったところ、大変お気に召したようだ。
『私がどんな人間だろうと貴方様の人生には一切合切関係ありませんので』
アイリスは学生街にお供もつけずにお忍びで遊びに出ていたジュードを助けてしまったのだ。迷子になっていたらしい。相手が変装していたため気付けなかったので油断していた。道案内のお礼として袋いっぱいの金貨を渡されたから突き返したそうだ。その後でジュードとわかり、その上で口説かれたので全力で拒絶すると、面白い女認定されてしまったらしい。
『いやジュードとか無理』
全員しっかり拒絶の言葉を吐き出しているというのに。
「この世の女は全員自分に惚れると思ってるし! 惚れなかったら面白い女認定されるし! 逃げ道がないじゃん!」
だいたい私は第一王子の婚約者だぞ? 国際問題になりかねないというのに、全く気にしてない。レオハルトが知れば大騒ぎになるだろうから隠すのにも必死だ。
「とりあえず、フィンがボコってくれるといいねぇ」
「全力で応援するわ!」
不安なのは、予定外にジュードが強かったことだ。次期皇帝という肩書も馬鹿に出来ない。美しい身のこなしで相手の攻撃をかわし、サッと相手の心臓に一撃を入れるのだ。原作では剣術大会は見物人側で、女子生徒に囲まれて高みの見物をしていた。今回は私達に良い所を見せようとやる気を出したらしい。
ということで、
準決勝第一試合、フィンリー・ライアス 対ジュード・ヴィンザー 開始!
レオハルトはアイリスに好意があることを自覚し、アイリスはそのことに気がつきはしないがレオハルトにドキドキと胸を高鳴らせるのだ。
だがしかし! 私もアイリスも、原作の恋愛イベントには手を出すつもりはない。
(ていうか、それどころじゃないし!)
未来を変える為に頭を悩まし、駆けずり回るのに忙しい。だからこの剣術大会も正直適当に終わらせて夏季休暇に備えたいところなのだ。
今日は天気がいい。これからまだどんどん暑くなっていくだろう。剣術大会は現在二回戦の最後の組が試合中だ。一年、二年生から上位成績者五名、三年生だけ六名選出される。この学園は就職活動の場でもあるので、この剣術大会は魔力量の多くない者や騎士を希望する者にとっては良い見せ場になる。
「いちいちヤキモチやいてコッチに八つ当たりしないでほしいんだけど! 婚約者なのに余裕なさすぎじゃん!?」
アイリスがレオハルトに雷を落としている。原作ファンの私としては、なんとも奇妙な光景に見えてしまう。
「なっ! リディの前でそれを言うなよ!」
「いや、いるからわざわざ言ってんの!」
私が他の男子生徒を治療していたのを見てブスくれたあげく、自分を治療をしてくれているアイリスに八つ当たりをしたので案の定怒られている。この二人の背景に花が舞うことはないだろう。レオハルトのヤキモチを最初は微笑ましく感じていたアイリスも、ついに限界がきていたようで、最近では一切容赦なくこの国の第一王子を叱りつけている。
「すみません! また倒れた子が……」
「きっと熱中症ね」
暑い中、熱心に応援している生徒達……特に女生徒は今日は私服の為、頑張って着飾っている子が多いのだ。
今回の剣術大会は原作と違い、選手全員試合の度に治療魔法を使うという方法がとられた。原作ではありえないことだが、私が協力しているから少々余裕があるのだ。
怪我を隠すレオハルト、それに気が付くアイリス(お花背景)……今更そのシーンは必要ないだろうという判断から校医のワイルダー先生に提案したところ、喜んで受け入れられた。
「リディ! 次の試合はちゃんと見に来てくれよ!」
「わかってますって。ちゃんと行きますから」
「さっきもそう言ってフィンリーの試合だけ見に来ていたじゃないか!」
バレていたか……。そりゃ推しの試合なんて絶対見るでしょ。ちょうどレオハルトの時は近くにいた女生徒がふらふらし始めてしまったので、急いでこの救護所に連れて行って見れなかったのだ。
「レオハルト様なら絶対勝つって信じてたので! 実際そうでしたしね」
「ま、まあな!」
「エリザ! 次のレオハルト様の試合、私を引きずってでも連れていてね」
「承知しました」
それでやっと納得してくれたのか、救護所を出て行った。結局準決勝に残った四名はルイーゼの予想通り、レオハルト、フィンリー様、ジェフリー、それに加えてヴィンザー帝国の次期皇帝のジュードだ。こいつがまた最近厄介で……。
『面白れぇ女』
このセリフを言われたのは、私、アイリス、ルイーゼ、アリアの四名。すでにたくさん女子を囲っているというのに、我々全員にちょっかいを出し始めたのだ。
「マジであのセリフ言う人って存在するんだね」
我々女子四名の中で、そのセリフを最後に聞いたアイリスがポツリと呟いたのを聞いて力が抜けてしまった。
彼のいるヴィンザー帝国にはハーレムがあり、身分や出身を問わずたくさんの女性を集めている。彼はこの国に遊び半分で花嫁を探しに来たのだ。
彼の本当の好みは知っていた。原作のアイリスだ。優しく可愛いだけではない。真っすぐ芯のある自分を持っている女性だ。次期皇帝相手に物怖じせず意見でき、彼を想って叱ることができる人。
私もアイリスも極力ジュードには近づかないようにしていた。近づく必要がある時も、出来るだけ言葉を発しない。パーティでレオハルトとジュードが挨拶しあっている時など、可能な限り気配を消している。婚約者の一歩後ろに下がりその言いなりになっている、なんともつまらない令嬢という印象を貫いていたのだ。
最初に目を付けられたのはルイーゼだ。出会いは剣術の授業。実技授業では月に何度か学年合同の日がある。彼女は一切次期皇帝であるジュードに忖度しなかった。久しぶりに『女が剣を?』をやられたので引けなかったというのもあったそうだ。
『私に一撃でも入れられたらお話をうかがいますわ』
その次はアリア。例の盗賊事件で興味を持たれてしまった。ヘラヘラと近づいてきたジュードの態度をいつものようにピシャリと嗜める。
『私、貴方様に一切興味はございませんので。ごきげんよう』
そして私は猫を被っていたことがバレてしまった。ライザとやり合っているところ見られていたのだ。しかもよりにもよっていつものノリでボロカスに罵っている場面を。それがバレた時に開き直ったところ、大変お気に召したようだ。
『私がどんな人間だろうと貴方様の人生には一切合切関係ありませんので』
アイリスは学生街にお供もつけずにお忍びで遊びに出ていたジュードを助けてしまったのだ。迷子になっていたらしい。相手が変装していたため気付けなかったので油断していた。道案内のお礼として袋いっぱいの金貨を渡されたから突き返したそうだ。その後でジュードとわかり、その上で口説かれたので全力で拒絶すると、面白い女認定されてしまったらしい。
『いやジュードとか無理』
全員しっかり拒絶の言葉を吐き出しているというのに。
「この世の女は全員自分に惚れると思ってるし! 惚れなかったら面白い女認定されるし! 逃げ道がないじゃん!」
だいたい私は第一王子の婚約者だぞ? 国際問題になりかねないというのに、全く気にしてない。レオハルトが知れば大騒ぎになるだろうから隠すのにも必死だ。
「とりあえず、フィンがボコってくれるといいねぇ」
「全力で応援するわ!」
不安なのは、予定外にジュードが強かったことだ。次期皇帝という肩書も馬鹿に出来ない。美しい身のこなしで相手の攻撃をかわし、サッと相手の心臓に一撃を入れるのだ。原作では剣術大会は見物人側で、女子生徒に囲まれて高みの見物をしていた。今回は私達に良い所を見せようとやる気を出したらしい。
ということで、
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