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1 逆ハールートはご遠慮ください
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我が家とジルの家は古くからライバル同士だ。どちらも名門貴族で、歴史も古く王家からの信任も厚く、家としての権力も拮抗している。領地こそ離れているが、王都の屋敷はお隣りというのがまたお互いのライバル心を煽っていた。
私達も男女の差はあれど、能力はほぼ同じだ。流石に力では負けるが、魔力ではこちらが優っている。学園の成績も面白いくらい同じなので、最近では私達の競争を周囲が面白がっている。
「メル! この魔力馬鹿! 場所考えて攻撃しろよ!」
「あーらごめんなさいねぇ! これくらい簡単に避けられると思って~」
ああ、またこんな可愛くないことを言ってしまった。今は魔術の授業でペアを組んで実技の訓練中だ。
私はジルに惚れている。昔から好きだった。負けん気が強く、ぶっきらぼうだが誰にでも分け隔てなく優しくて、くしゃりと笑う顔を見ているとこちらが幸せになる。家同士の仲があまりにも悪くて諦めていたのだが、あることがきっかけでこの気持ちに再挑戦することにしたのだ。
(いい加減、この癖やめなきゃ)
銀色の髪の毛を短く刈り上げ、深いグリーンの瞳を持ったジルは昔は天使のように可愛らしい男の子だったのだが、いつのまにか筋肉もついて男らしい男に育ってしまった彼は家柄も顔も完璧なので、当然ながらモテる。やきもちは焼き飽きた。どうせ私とどうこうなることはないと思っていたし……。
一生懸命憎まれ口を叩いてジルを避けようとしてきた。そんな私をライバル視しているジルが、いつも突っかかってくることが実はとても嬉しくて、絶対に彼に負けないように努力に努力を重ねていた。
(ジルがいつまでも私に興味を持ってくれますように)
そんなつまらない願望だけが私を支えていた。
「ジル! 大丈夫!?」
さっとジルに駆け寄り腕をさすっているこの女が、私が再挑戦を決めた原因だ。この恋愛シミュレーションゲームの主人公であるアリス、彼女は今逆ハールートを狙っている。
私がこの世界に転生したことに気が付いたのは12歳の時だった。ジルとの剣術稽古の最中に彼の剣の当たり所が悪く意識を失ったのだ。その時、前世の記憶を思い出した。
(ここ……『ラブリーコレクション』の世界じゃん)
通称ラブコレ。中世ヨーロッパ風の世界観で、貴族ばかりが通う学園がメインの舞台だ。期間は16歳からの2年間。平民出身の主人公がイケメン達と愛し愛されるわけである。私もジルもその中のキャラクターの1人だった。
ジルはメインキャラクターの1人、主人公のナイト様的なポジションで、体を張って主人公を守っていた。私はヒロインのお助けキャラ枠……ではなく、お邪魔虫の悪役令嬢だ。ライバルキャラとも言えない咬ませ犬で、ヒロインが誰とくっついても中途半端に痛い目にあうという、不遇なキャラである。
(まあゲームと違って今の私は悪役令嬢じゃないけどね~)
ヒロインをいじめてもいないし、ちゃんとした友人もいるし、文武両道成績優秀で周囲からの評価も高い。まあ少々気が強すぎるとは言われているが、個性の1つとして見てもらいたいところだ。
(大人しく1番人気の第一王子狙っとけよ!)
入学式でヒロインのアリスが現れて、ジルとの出会いイベントが発生し、本当にここがラブコレの世界だったのだと思い知らされた。私はヒロインがジルのルートを選んだとしても何をするつもりもなかった。応援するつもりもないが、2人が……ジルが幸せになるならそれでいいと思っていた。
だがあの女、よりにもよって逆ハーレムルートを選んだ。それに気が付いたのは学園が始まって三ヶ月たった頃。彼女は攻略キャラクター全員の恋愛フラグを立てたのだ。それはこのゲームの逆ハールートに必要なイベント全てのフラグだった。このルートは最後、皆で仲良く暮らしましたとさ! で終わる話ではない。ヒロインをめぐって永遠にイケメン達が争い続けるのだ。
『私の為に争わないでー!』
を、何度でもやれるルートだ。そんな世界に愛するジルを取られるわけにはいかない。だから正々堂々、ヒロインに挑むことにした。分の悪い勝負だとはわかっているが、何もやらないわけにはいかなかった。
私達も男女の差はあれど、能力はほぼ同じだ。流石に力では負けるが、魔力ではこちらが優っている。学園の成績も面白いくらい同じなので、最近では私達の競争を周囲が面白がっている。
「メル! この魔力馬鹿! 場所考えて攻撃しろよ!」
「あーらごめんなさいねぇ! これくらい簡単に避けられると思って~」
ああ、またこんな可愛くないことを言ってしまった。今は魔術の授業でペアを組んで実技の訓練中だ。
私はジルに惚れている。昔から好きだった。負けん気が強く、ぶっきらぼうだが誰にでも分け隔てなく優しくて、くしゃりと笑う顔を見ているとこちらが幸せになる。家同士の仲があまりにも悪くて諦めていたのだが、あることがきっかけでこの気持ちに再挑戦することにしたのだ。
(いい加減、この癖やめなきゃ)
銀色の髪の毛を短く刈り上げ、深いグリーンの瞳を持ったジルは昔は天使のように可愛らしい男の子だったのだが、いつのまにか筋肉もついて男らしい男に育ってしまった彼は家柄も顔も完璧なので、当然ながらモテる。やきもちは焼き飽きた。どうせ私とどうこうなることはないと思っていたし……。
一生懸命憎まれ口を叩いてジルを避けようとしてきた。そんな私をライバル視しているジルが、いつも突っかかってくることが実はとても嬉しくて、絶対に彼に負けないように努力に努力を重ねていた。
(ジルがいつまでも私に興味を持ってくれますように)
そんなつまらない願望だけが私を支えていた。
「ジル! 大丈夫!?」
さっとジルに駆け寄り腕をさすっているこの女が、私が再挑戦を決めた原因だ。この恋愛シミュレーションゲームの主人公であるアリス、彼女は今逆ハールートを狙っている。
私がこの世界に転生したことに気が付いたのは12歳の時だった。ジルとの剣術稽古の最中に彼の剣の当たり所が悪く意識を失ったのだ。その時、前世の記憶を思い出した。
(ここ……『ラブリーコレクション』の世界じゃん)
通称ラブコレ。中世ヨーロッパ風の世界観で、貴族ばかりが通う学園がメインの舞台だ。期間は16歳からの2年間。平民出身の主人公がイケメン達と愛し愛されるわけである。私もジルもその中のキャラクターの1人だった。
ジルはメインキャラクターの1人、主人公のナイト様的なポジションで、体を張って主人公を守っていた。私はヒロインのお助けキャラ枠……ではなく、お邪魔虫の悪役令嬢だ。ライバルキャラとも言えない咬ませ犬で、ヒロインが誰とくっついても中途半端に痛い目にあうという、不遇なキャラである。
(まあゲームと違って今の私は悪役令嬢じゃないけどね~)
ヒロインをいじめてもいないし、ちゃんとした友人もいるし、文武両道成績優秀で周囲からの評価も高い。まあ少々気が強すぎるとは言われているが、個性の1つとして見てもらいたいところだ。
(大人しく1番人気の第一王子狙っとけよ!)
入学式でヒロインのアリスが現れて、ジルとの出会いイベントが発生し、本当にここがラブコレの世界だったのだと思い知らされた。私はヒロインがジルのルートを選んだとしても何をするつもりもなかった。応援するつもりもないが、2人が……ジルが幸せになるならそれでいいと思っていた。
だがあの女、よりにもよって逆ハーレムルートを選んだ。それに気が付いたのは学園が始まって三ヶ月たった頃。彼女は攻略キャラクター全員の恋愛フラグを立てたのだ。それはこのゲームの逆ハールートに必要なイベント全てのフラグだった。このルートは最後、皆で仲良く暮らしましたとさ! で終わる話ではない。ヒロインをめぐって永遠にイケメン達が争い続けるのだ。
『私の為に争わないでー!』
を、何度でもやれるルートだ。そんな世界に愛するジルを取られるわけにはいかない。だから正々堂々、ヒロインに挑むことにした。分の悪い勝負だとはわかっているが、何もやらないわけにはいかなかった。
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