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4 王立学園初日-1
ついに今日は入学式だ。これ見よがしに学園内では桜の木が美しく咲き乱れていた。
(マジで乙女ゲームの世界なんだ……)
公爵家には無事籍を移すことが出来た。するとこれまで全くどうにもならなかった公爵令嬢の海外留学があっさり決まり、王太子との婚約話も白紙に戻った……はずだった。ここで予定外のことが起こったのだ。
「私が代わりに王太子の婚約者!?」
「すまない……どうか頼めないだろうか……」
「嫌ですが!?!?」
私だって行くならいい所へお嫁に行きたい。それがこの世界では何よりのステータス。それに金銭的に余裕があると心の余裕も周囲の態度も違う。それはこの間まで没落していたのだから身に染みて理解している。
(だけど王太子はダメだろ! 荷が重い!)
例え学園の卒業式の前夜に断罪され婚約破棄したとしてもだ。婚約中は公務やパーティへの出席は避けられないだろう。2年間もそんなのに付き合ってられるか!
「悪役令嬢は引き受けましたが王太子の婚約者なんて絶対に嫌です! 契約範囲外!」
すでに公爵家の一人娘は海外へ旅立っていた。これは物語の矯正力ではない。いや、新たな悪役令嬢となった私に矯正力が働いてる!?
「だいたいなんでそんなことになっているんですか!?」
「どうやら王妃様が我が家の秘密を知ったらしくて……どうしても我が家と結びつきを強くしたいそうなのだ」
「それって……誰か暗殺したい人でもいるんですかね」
しーっ! といい年した公爵が指を口に当てて慌てていた。公爵家の裏の仕事については王とほんの一部の家臣以外は知らないことだったらしい、王妃がその秘密を知った経緯はわからないが、息子の気持ちそっちのけで大騒ぎをしているそうなのだ。ついに王からも直々に頼まれてしまい困り果てているらしい。
「没落した伯爵家の令嬢だと伝えてます?」
「肩書が公爵令嬢ならかまわないそうだ……」
「仮面家族って知ってます?」
「ガルシア家の名前があればそれでいいそうだ……」
「「……。」」
2人して黙りこくってしまった。もうこれは逃げられないのか……。
「……断罪後もしっかり君の将来の面倒はみるから……頼むよ……」
悲痛な叫びのような声だった。
「……具体的にお願いします」
だいたいその答えは予想できるが、しかたがない。聞いてあげよう。
「卒業後の金銭的支援だ」
「またお金ですか!……まあいいですけど!!!」
「助かるよ!!!」
「公爵様、キャラ変わってません?」
あの第一印象の感じの悪さはどこへ……?
公爵は大喜びしていた。どうやらかなり強く迫られていたらしい。裏の仕事をしているというのに、こんなに押しに弱くて大丈夫なのだろうか。
本当は今回、お金をもらったとしても嫌だったが、背に腹は代えられない。卒業後も人生は続く。借金は払い終えたとはいえ、実家のカレフ家はまだ再建途中と言ってもいい。ガルシア家が手を貸してくれているおかげて、他からの信用を取り戻せているという現実もある。
契約では卒業後、再び実家のカレフ家に籍を戻す予定なのだ。あまりに兄が寂しがるので、手間だがそうすることにした。私の卒業までに、カレフ家をしっかり立て直すと気合も入ったようだったのでまあいいかと思っていたのだ。
(予定は未定ってか……?)
この件、もう深くは考えないようにしよう。なるようになる。
(結局実家のことを考えると、頼みを聞く以外道はなかったのよね~)
最初の契約の時、もっと吹っ掛けておくべきだった。……いや、借金の額を考えたらやはりチャラになっただけでも有難いと思うべきか……。
王太子との婚約式は学園の入学が近いからという理由で見送られた。まあ私が面倒くさいとゴネたら公爵がうまく言ってくれて書面上だけの関係になった。私は一度も王太子が出るパーティに参加したことはないので、顔も知らない。
乙女ゲームの攻略キャラだ。顔が悪いと言うことはそうそうないだろう。
そうして一度も合わないまま、入学式を迎えたのだ。何度か顔合わせくらいのチャンスはあったのだが、王太子が拒否したらしい。
(すでに好感度マイナススタートじゃん! まあそれはお互いにだけどな!!!)
王太子だからって強気にでやがって! まあ別に私も興味ないからいいけど!
私に友達はいない。ボッチである。それは全然かまわない。
前世は三十路手前まで生きていたのでもはや群れるという感覚をなくしていたせいか、メンタルのダメージは全くない。が! これじゃあ情報が全く入らないのだ。
(ダメだ! ちょっとは周りと交流しとくべきだった!)
学園の生徒達は、急に公爵令嬢としてこの国で王妃に次ぐ女性の地位をゲットした、ポッと出の私を警戒していた。
(ヤバい! ヒロインどこだ!?)
平民出身とのことだったが、ここの制服は全員同じものを着ているので違いが判らない。だいたいどの娘も可愛いし……。
式が始まるまでまだ時間はある。とりあえず学園内をウロウロとうろついていると、それとなく情報が入ってきた。
(マジで乙女ゲームの世界なんだ……)
公爵家には無事籍を移すことが出来た。するとこれまで全くどうにもならなかった公爵令嬢の海外留学があっさり決まり、王太子との婚約話も白紙に戻った……はずだった。ここで予定外のことが起こったのだ。
「私が代わりに王太子の婚約者!?」
「すまない……どうか頼めないだろうか……」
「嫌ですが!?!?」
私だって行くならいい所へお嫁に行きたい。それがこの世界では何よりのステータス。それに金銭的に余裕があると心の余裕も周囲の態度も違う。それはこの間まで没落していたのだから身に染みて理解している。
(だけど王太子はダメだろ! 荷が重い!)
例え学園の卒業式の前夜に断罪され婚約破棄したとしてもだ。婚約中は公務やパーティへの出席は避けられないだろう。2年間もそんなのに付き合ってられるか!
「悪役令嬢は引き受けましたが王太子の婚約者なんて絶対に嫌です! 契約範囲外!」
すでに公爵家の一人娘は海外へ旅立っていた。これは物語の矯正力ではない。いや、新たな悪役令嬢となった私に矯正力が働いてる!?
「だいたいなんでそんなことになっているんですか!?」
「どうやら王妃様が我が家の秘密を知ったらしくて……どうしても我が家と結びつきを強くしたいそうなのだ」
「それって……誰か暗殺したい人でもいるんですかね」
しーっ! といい年した公爵が指を口に当てて慌てていた。公爵家の裏の仕事については王とほんの一部の家臣以外は知らないことだったらしい、王妃がその秘密を知った経緯はわからないが、息子の気持ちそっちのけで大騒ぎをしているそうなのだ。ついに王からも直々に頼まれてしまい困り果てているらしい。
「没落した伯爵家の令嬢だと伝えてます?」
「肩書が公爵令嬢ならかまわないそうだ……」
「仮面家族って知ってます?」
「ガルシア家の名前があればそれでいいそうだ……」
「「……。」」
2人して黙りこくってしまった。もうこれは逃げられないのか……。
「……断罪後もしっかり君の将来の面倒はみるから……頼むよ……」
悲痛な叫びのような声だった。
「……具体的にお願いします」
だいたいその答えは予想できるが、しかたがない。聞いてあげよう。
「卒業後の金銭的支援だ」
「またお金ですか!……まあいいですけど!!!」
「助かるよ!!!」
「公爵様、キャラ変わってません?」
あの第一印象の感じの悪さはどこへ……?
公爵は大喜びしていた。どうやらかなり強く迫られていたらしい。裏の仕事をしているというのに、こんなに押しに弱くて大丈夫なのだろうか。
本当は今回、お金をもらったとしても嫌だったが、背に腹は代えられない。卒業後も人生は続く。借金は払い終えたとはいえ、実家のカレフ家はまだ再建途中と言ってもいい。ガルシア家が手を貸してくれているおかげて、他からの信用を取り戻せているという現実もある。
契約では卒業後、再び実家のカレフ家に籍を戻す予定なのだ。あまりに兄が寂しがるので、手間だがそうすることにした。私の卒業までに、カレフ家をしっかり立て直すと気合も入ったようだったのでまあいいかと思っていたのだ。
(予定は未定ってか……?)
この件、もう深くは考えないようにしよう。なるようになる。
(結局実家のことを考えると、頼みを聞く以外道はなかったのよね~)
最初の契約の時、もっと吹っ掛けておくべきだった。……いや、借金の額を考えたらやはりチャラになっただけでも有難いと思うべきか……。
王太子との婚約式は学園の入学が近いからという理由で見送られた。まあ私が面倒くさいとゴネたら公爵がうまく言ってくれて書面上だけの関係になった。私は一度も王太子が出るパーティに参加したことはないので、顔も知らない。
乙女ゲームの攻略キャラだ。顔が悪いと言うことはそうそうないだろう。
そうして一度も合わないまま、入学式を迎えたのだ。何度か顔合わせくらいのチャンスはあったのだが、王太子が拒否したらしい。
(すでに好感度マイナススタートじゃん! まあそれはお互いにだけどな!!!)
王太子だからって強気にでやがって! まあ別に私も興味ないからいいけど!
私に友達はいない。ボッチである。それは全然かまわない。
前世は三十路手前まで生きていたのでもはや群れるという感覚をなくしていたせいか、メンタルのダメージは全くない。が! これじゃあ情報が全く入らないのだ。
(ダメだ! ちょっとは周りと交流しとくべきだった!)
学園の生徒達は、急に公爵令嬢としてこの国で王妃に次ぐ女性の地位をゲットした、ポッと出の私を警戒していた。
(ヤバい! ヒロインどこだ!?)
平民出身とのことだったが、ここの制服は全員同じものを着ているので違いが判らない。だいたいどの娘も可愛いし……。
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