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6 VS 婚約者
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学園の寮へ戻った後も、私はどうすべきかまだ迷っていた。
「いかがされました?」
彼女は私の侍女エリザだ。学園の寮では各自1名世話係を連れて来れるので、公爵一押しのエリザが私の元へ派遣されたのだ。公爵との橋渡しもしてくれる。
「エリザ~聞いてよ~~~!」
今日の出来事を全てエリザに話した。彼女は占い師の件も知っている。それだけで公爵にかなり信用されている人物だとわかった。
「アイリス様という方はだいぶ変わった方のようですね」
「変わってるというか……クズ男にまんまと引っかかってるというか……」
自分の身体が脱力して斜めに傾いていくのがわかる。
(ヒロインがクズにハマった状態でオープニングってどんな乙女ゲーだよ)
『いけこれ』は全年齢向けのゲームだ。爛れた恋愛でも重々しい恋愛ではなく、ピュアピュア甘々ストーリーのはずだ。
「エミリア様は本日の入学式の後はなるべく関わらずに学生生活を送りたいとおっしゃってましたが、手をお貸しになりますか?」
「それを迷ってるのよ……」
私は頭をテーブルにつけた。
「無駄に行動力あるみたいだし、意思もかたそうだから、私がダメでも他をあたりそうで……」
「ありえますね。娼婦になるのは簡単です。辞めるのは難しいですが」
その時、寮付の使用人が扉をノックした。
「アーサー様がエミリア様にお会いになりたいそうです」
「……さっそくか」
寮の来賓室に降りると、偉そうに足を組んだアーサーがソファーに腰を掛け紅茶をすすっていた。
「初めまして殿下、エミリア・ガルシアでございます」
「ああ」
丁寧に挨拶する私に対して、立つことも、こちらに顔を向けることもしなかった。
(人の目を見て話せと習わんかったか?)
まぁ王子様の人となりなどどうでもいいので、さっさと要件を聞いて帰ってもらおう。
「エミリア嬢、入学式のあれはなんだ?」
「はあ」
気のない返事をして次の言葉を待つ。
「平民の娘に厳しい言葉をかけていただろう!」
(平民の為に厳しく叱責する俺様カッコイイ! とか思ってそうね)
だが反論して居座られても困る。
「ソウデスネ。スミマセンデシター」
「だいたいスカートの長さなど、言いがかりにもほどがある!」
なんか勝手にヒートアップを始めたぞ。面倒くさいぞ。
「オッシャルトオリデスーイゴキヲツケマスー」
「君はこの学園の決まりをわかっているのか!?」
知ってる知ってる。学園内にいる間は身分に関係なく皆平等ってやつね。
「モチロンデスーモウシワケゴザイマセンー」
「この学園内にいる限り、皆平等だ! 俺も君も平民と変わらない!」
(だから謝ってるだろうが)
もうさっさと納得して帰ってほしい。説教垂れてる自分に酔って、その上初対面の婚約者を巻き込むなんて暇人のやることだ。
「じゃあなぜあんなに威張り散らしているんだ! 君みたいなやつが婚約者なんて恥ずかしい!」
ここでどうでもよくなった。そこまで言われる筋合いはない。
「じゃあなんでテメェはここで威張り散らしてんだよ」
「え?」
さっきまでの低姿勢からの変わり具合についていけないようだった。
「いやなんでテメェが私に説教してるか聞いてるんだわ」
「お、俺はこの国の王太子だぞ! 国民の為に悪い事を正す義務がある!」
「は? テメェは今さっきこの学園内にいる限り皆平等だっつただろーが。なに王太子なんて立場出してんだよひっこめろや」
困ったら王太子なんて肩書きを出す卑怯者だ。何が俺様だ。ただのわがまま馬鹿王子じゃないか。相手はわなわなと体を震わせているがどうでもいい。
「言っとくけどこっちも王太子と婚約なんてしたくなかったから。いやいやだから。それこそ偉い人からの命令でしかたなくだから。意味わかる? 私も身分差によって虐げられた可哀想な女の子なんスわ!」
「なんだと!!?」
顔を真っ赤にして立ち上がったが、乙女ゲームの攻略キャラだ。殴られることはないだろう。
「で、どうする? パパに言いつける? それともママかなぁ?」
「ば、馬鹿にするな!!!」
そう言うと、帰る! と声を張り上げ、そのまま出て行った。
(ヒロインへのポイント稼ぎのつもりだったのかな……)
ああ疲れたと自室に戻った途端、また呼び出しがかかった。
「今度はベイル様がお会いしたいと……」
「ええ……」
悪役令嬢がここまで忙しいなんて聞いてない。
「いかがされました?」
彼女は私の侍女エリザだ。学園の寮では各自1名世話係を連れて来れるので、公爵一押しのエリザが私の元へ派遣されたのだ。公爵との橋渡しもしてくれる。
「エリザ~聞いてよ~~~!」
今日の出来事を全てエリザに話した。彼女は占い師の件も知っている。それだけで公爵にかなり信用されている人物だとわかった。
「アイリス様という方はだいぶ変わった方のようですね」
「変わってるというか……クズ男にまんまと引っかかってるというか……」
自分の身体が脱力して斜めに傾いていくのがわかる。
(ヒロインがクズにハマった状態でオープニングってどんな乙女ゲーだよ)
『いけこれ』は全年齢向けのゲームだ。爛れた恋愛でも重々しい恋愛ではなく、ピュアピュア甘々ストーリーのはずだ。
「エミリア様は本日の入学式の後はなるべく関わらずに学生生活を送りたいとおっしゃってましたが、手をお貸しになりますか?」
「それを迷ってるのよ……」
私は頭をテーブルにつけた。
「無駄に行動力あるみたいだし、意思もかたそうだから、私がダメでも他をあたりそうで……」
「ありえますね。娼婦になるのは簡単です。辞めるのは難しいですが」
その時、寮付の使用人が扉をノックした。
「アーサー様がエミリア様にお会いになりたいそうです」
「……さっそくか」
寮の来賓室に降りると、偉そうに足を組んだアーサーがソファーに腰を掛け紅茶をすすっていた。
「初めまして殿下、エミリア・ガルシアでございます」
「ああ」
丁寧に挨拶する私に対して、立つことも、こちらに顔を向けることもしなかった。
(人の目を見て話せと習わんかったか?)
まぁ王子様の人となりなどどうでもいいので、さっさと要件を聞いて帰ってもらおう。
「エミリア嬢、入学式のあれはなんだ?」
「はあ」
気のない返事をして次の言葉を待つ。
「平民の娘に厳しい言葉をかけていただろう!」
(平民の為に厳しく叱責する俺様カッコイイ! とか思ってそうね)
だが反論して居座られても困る。
「ソウデスネ。スミマセンデシター」
「だいたいスカートの長さなど、言いがかりにもほどがある!」
なんか勝手にヒートアップを始めたぞ。面倒くさいぞ。
「オッシャルトオリデスーイゴキヲツケマスー」
「君はこの学園の決まりをわかっているのか!?」
知ってる知ってる。学園内にいる間は身分に関係なく皆平等ってやつね。
「モチロンデスーモウシワケゴザイマセンー」
「この学園内にいる限り、皆平等だ! 俺も君も平民と変わらない!」
(だから謝ってるだろうが)
もうさっさと納得して帰ってほしい。説教垂れてる自分に酔って、その上初対面の婚約者を巻き込むなんて暇人のやることだ。
「じゃあなぜあんなに威張り散らしているんだ! 君みたいなやつが婚約者なんて恥ずかしい!」
ここでどうでもよくなった。そこまで言われる筋合いはない。
「じゃあなんでテメェはここで威張り散らしてんだよ」
「え?」
さっきまでの低姿勢からの変わり具合についていけないようだった。
「いやなんでテメェが私に説教してるか聞いてるんだわ」
「お、俺はこの国の王太子だぞ! 国民の為に悪い事を正す義務がある!」
「は? テメェは今さっきこの学園内にいる限り皆平等だっつただろーが。なに王太子なんて立場出してんだよひっこめろや」
困ったら王太子なんて肩書きを出す卑怯者だ。何が俺様だ。ただのわがまま馬鹿王子じゃないか。相手はわなわなと体を震わせているがどうでもいい。
「言っとくけどこっちも王太子と婚約なんてしたくなかったから。いやいやだから。それこそ偉い人からの命令でしかたなくだから。意味わかる? 私も身分差によって虐げられた可哀想な女の子なんスわ!」
「なんだと!!?」
顔を真っ赤にして立ち上がったが、乙女ゲームの攻略キャラだ。殴られることはないだろう。
「で、どうする? パパに言いつける? それともママかなぁ?」
「ば、馬鹿にするな!!!」
そう言うと、帰る! と声を張り上げ、そのまま出て行った。
(ヒロインへのポイント稼ぎのつもりだったのかな……)
ああ疲れたと自室に戻った途端、また呼び出しがかかった。
「今度はベイル様がお会いしたいと……」
「ええ……」
悪役令嬢がここまで忙しいなんて聞いてない。
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