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4 王立学園初日-2
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ここで、この謎の乙女ゲームの攻略キャラクターを紹介しよう!
まずは俺様王太子アーサー、私の婚約者だ。
(俺様かよ~~~!)
こりゃ私と相性は良くなさそうだ。なるべく関わらんとこ。
どうやらプライドが高く自信に溢れているタイプらしい。まあ、イケメンの王太子だからな……自己肯定感高くても不思議じゃない。
お次は腹黒眼鏡宰相の息子のベイルだ。
(腹黒ってバレてていいのか!?)
どうやらいつも笑顔だが、目が笑っていないそうだ。情報通だが自身のプライベートのことはひた隠しにしていて合理性を求める性格と言われていた。
そしてミステリアスな大神官の息子レイル。
(名前以外何にも情報がなかった……)
何を考えているかわからない男らしい。
女ったらしの隣国王子イクリスは噂の的だった。隣国は一夫多妻制を取っているので、後宮があるのだ。我が国からも何人か輿入れするのでは!? と令嬢達からある意味1番注目されていた。
最後はマッチョおっとり騎士団長の息子ガイヤだ。
(マッチョは嫌いじゃないわ!)
彼はどうやら天然キャラのようだ。剣を持つと人が変わったように凛々しくなるらしい。なるほど、ギャップ萌え枠でもあるのか。
……ここまできてやっと気がついた。
「ここ、『いけこれ』の世界じゃね!?」
(気付くの遅っ!!!)
どうやらこの世界、前世で姉がハマっていた乙女ゲームの世界のようだ。姉が熱く語っていたのを何度か聞かされたから若干覚えているが、詳しいわけではない。
(ウワァァァァ! ちゃんと聞いとくべきだった!)
しかしまさか自分がピンポイントで身内が好きな乙女ゲームの世界に転生するとは思わないじゃん!?
結局入学式が始まってもヒロインを確認できなかった。それよりも姉が話していたゲームの内容を思い出すのに必死だ。
(えーっと……確かパラメータ次第で相手が変わっていくタイプのゲームだったはず……)
各キャラとの親密度に加えて、自身のパラメータ次第でエンディングが変わるはずだ。だが結局主人公は物語の大逆転要素である『聖女』の覚醒の為、全てのパラメータを上げなければいけない。……と姉が愚痴っていた。パラメータは引き継ぎ出来るため二週目以降はだいぶ楽にはなるらしいが。
「あの……」
(攻略キャラのスチルばっかり見せられてたからなぁ……ヒロインの見た目、髪がピンクってことしかわからんぞ……)
「あの……!」
「はい!?……えっ?」
目の前に立っていたのは、ふわふわしたピンクブラウンの髪を持つ美少女だった。
「あの……もう入学式終わってます……」
「うそ!?」
広々とした会場に座っているのは私一人になっていた。ぼっち感が凄い。
「あ、ありがとうございました……」
私は声が震えてしまっていた。この目の前にいる美少女こそ、この乙女ゲームのヒロインだと確信しているからだ。
(どこをどうみても全身のクオリティが違う!)
「いえ……」
どうやら彼女はかなり私にビビっているようだ。おそらく何故か急になり上がった公爵令嬢という噂を聞いているのだろう。遠巻きにこちらを見ている貴族の子弟子女達がヒソヒソと何か話している。
(感じ悪~~~!)
そういう意味では流石ヒロイン、怖い相手にも親切に出来るなんて。なかなかできることじゃない。
「ああっ!?」
「どうしました!?」
(私、この子いじめなきゃじゃん!)
嫌だな~やりずらいな~……責めて男に媚びうるタイプのいけ好かない女だったら私もそれなりにやる気になれたのに! 普通にいい人じゃないか。
(いや、違う……正確には苦言を呈せと言われたんだわ)
とはいっても、今の彼女に何か注意することがあるだろうか……?
周囲を見渡しながら考えていると、攻略キャラクター達の姿が見えた。あっちこっちから全員がこのヒロインを見つめている。刺さるような視線を感じ、それが急かされているように感じてさらに焦ってしまった。
(何かないか……何か……えーっと学校で注意されることと言えば……?)
「あ! 貴方! そのスカートの丈はなんですか! 足を冷やしてはいけませんよ!」
(何を言っとるんだ私は……!)
前世の記憶から引っ張り出した、中学の国語教師が言っていたセリフだった。しかも別に言うほどヒロインのスカートは短くない。ただ難癖になってしまった。
(いや、これでいいのか?)
遠巻きに見ていた攻略キャラ達の表情が曇るのを確認できた。
(オッシャー! ミッションコンプリィィィト!!!)
これで私の役目は終わった。あとは勝手にのんびりやらせてもらおうかしらね。
「も! 申し訳ありません……支度金が足りなくなってしまって、古着でしか準備できなくて……サイズが……」
(うわぁぁぁん! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!)
私はなんと言うことを。彼女は恥ずかしそうに俯いてしまっている。どう考えてもお金で苦労したばかりの私がしてもいい話じゃない。罪悪感がひどい。
「貴方! それを早くいいなさい!」
(早く言いなさいって私が一方的に難癖つけただけだっつー話だけど!)
そう言うのヒロインの手を掴み、そのまま学生街へと向かった。
まずは俺様王太子アーサー、私の婚約者だ。
(俺様かよ~~~!)
こりゃ私と相性は良くなさそうだ。なるべく関わらんとこ。
どうやらプライドが高く自信に溢れているタイプらしい。まあ、イケメンの王太子だからな……自己肯定感高くても不思議じゃない。
お次は腹黒眼鏡宰相の息子のベイルだ。
(腹黒ってバレてていいのか!?)
どうやらいつも笑顔だが、目が笑っていないそうだ。情報通だが自身のプライベートのことはひた隠しにしていて合理性を求める性格と言われていた。
そしてミステリアスな大神官の息子レイル。
(名前以外何にも情報がなかった……)
何を考えているかわからない男らしい。
女ったらしの隣国王子イクリスは噂の的だった。隣国は一夫多妻制を取っているので、後宮があるのだ。我が国からも何人か輿入れするのでは!? と令嬢達からある意味1番注目されていた。
最後はマッチョおっとり騎士団長の息子ガイヤだ。
(マッチョは嫌いじゃないわ!)
彼はどうやら天然キャラのようだ。剣を持つと人が変わったように凛々しくなるらしい。なるほど、ギャップ萌え枠でもあるのか。
……ここまできてやっと気がついた。
「ここ、『いけこれ』の世界じゃね!?」
(気付くの遅っ!!!)
どうやらこの世界、前世で姉がハマっていた乙女ゲームの世界のようだ。姉が熱く語っていたのを何度か聞かされたから若干覚えているが、詳しいわけではない。
(ウワァァァァ! ちゃんと聞いとくべきだった!)
しかしまさか自分がピンポイントで身内が好きな乙女ゲームの世界に転生するとは思わないじゃん!?
結局入学式が始まってもヒロインを確認できなかった。それよりも姉が話していたゲームの内容を思い出すのに必死だ。
(えーっと……確かパラメータ次第で相手が変わっていくタイプのゲームだったはず……)
各キャラとの親密度に加えて、自身のパラメータ次第でエンディングが変わるはずだ。だが結局主人公は物語の大逆転要素である『聖女』の覚醒の為、全てのパラメータを上げなければいけない。……と姉が愚痴っていた。パラメータは引き継ぎ出来るため二週目以降はだいぶ楽にはなるらしいが。
「あの……」
(攻略キャラのスチルばっかり見せられてたからなぁ……ヒロインの見た目、髪がピンクってことしかわからんぞ……)
「あの……!」
「はい!?……えっ?」
目の前に立っていたのは、ふわふわしたピンクブラウンの髪を持つ美少女だった。
「あの……もう入学式終わってます……」
「うそ!?」
広々とした会場に座っているのは私一人になっていた。ぼっち感が凄い。
「あ、ありがとうございました……」
私は声が震えてしまっていた。この目の前にいる美少女こそ、この乙女ゲームのヒロインだと確信しているからだ。
(どこをどうみても全身のクオリティが違う!)
「いえ……」
どうやら彼女はかなり私にビビっているようだ。おそらく何故か急になり上がった公爵令嬢という噂を聞いているのだろう。遠巻きにこちらを見ている貴族の子弟子女達がヒソヒソと何か話している。
(感じ悪~~~!)
そういう意味では流石ヒロイン、怖い相手にも親切に出来るなんて。なかなかできることじゃない。
「ああっ!?」
「どうしました!?」
(私、この子いじめなきゃじゃん!)
嫌だな~やりずらいな~……責めて男に媚びうるタイプのいけ好かない女だったら私もそれなりにやる気になれたのに! 普通にいい人じゃないか。
(いや、違う……正確には苦言を呈せと言われたんだわ)
とはいっても、今の彼女に何か注意することがあるだろうか……?
周囲を見渡しながら考えていると、攻略キャラクター達の姿が見えた。あっちこっちから全員がこのヒロインを見つめている。刺さるような視線を感じ、それが急かされているように感じてさらに焦ってしまった。
(何かないか……何か……えーっと学校で注意されることと言えば……?)
「あ! 貴方! そのスカートの丈はなんですか! 足を冷やしてはいけませんよ!」
(何を言っとるんだ私は……!)
前世の記憶から引っ張り出した、中学の国語教師が言っていたセリフだった。しかも別に言うほどヒロインのスカートは短くない。ただ難癖になってしまった。
(いや、これでいいのか?)
遠巻きに見ていた攻略キャラ達の表情が曇るのを確認できた。
(オッシャー! ミッションコンプリィィィト!!!)
これで私の役目は終わった。あとは勝手にのんびりやらせてもらおうかしらね。
「も! 申し訳ありません……支度金が足りなくなってしまって、古着でしか準備できなくて……サイズが……」
(うわぁぁぁん! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!)
私はなんと言うことを。彼女は恥ずかしそうに俯いてしまっている。どう考えてもお金で苦労したばかりの私がしてもいい話じゃない。罪悪感がひどい。
「貴方! それを早くいいなさい!」
(早く言いなさいって私が一方的に難癖つけただけだっつー話だけど!)
そう言うのヒロインの手を掴み、そのまま学生街へと向かった。
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