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8 VS 大神官の息子
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朝目覚めてこんなにも体が重いのは、父が詐欺にあったと知ったあの日以来だ。今日もきっとなにかある。だいたいゲーム初日に攻略キャラクター2人から言われのない罪で責め立てられるって……。
(ん? 初日?)
それはおかしい。まだヒロインは攻略キャラ達と大した交流はないはずだ。精々お互い認識したくらいだろう。なのにすでに彼氏ヅラした私の婚約者や、ヒロインの望みに涙を流すほどショックを受けている宰相の息子はいったい……。
「まさか!?」
体を勢いよくベッドから起こす。
「逆ハールート!?」
それなら悪役令嬢の役割がしょぼい理由の説明がつく。……というか、薄っすらとした前世の記憶で姉がそんな話をしていたのを思い出したのだ。
『逆ハーレムのルートはねぇ……甘々すぎて恥ずかしいっていうか……個人的にはライバルの悪役令嬢も全然出てこないから張り合いもないし……最初から全力で愛されまくってるだけなのよ~』
(確か全ての能力値が一定以上上がらないとそのルートには入れないはず……)
そのため、基本的には攻略キャラ全員を攻略後にプレイできるルートだと言っていた。
「あのクソ男の為にあくせく働いてたせいで能力値が上がった状態で入学したからかしら……」
原因は推測でしかないが、とにかく逆ハールートに入っているのは間違いないだろう。そう確信させてくれるように昼休み、大神官の息子からお呼び出しがかかったのだ。
「……ちょっといいかな」
「…………はい」
大神官というと国王に並び立つ権力者だ。だが大神官は王と違い世襲制ではない。その息子が未来の大神官になるとは限らないのだが、レイルは同世代で圧倒的な魔力を保有しているため、次期大神官の有力候補なのは間違いない。
キラキラとした長い銀髪が眩しい。まつげまで銀色なのでなんとも神秘さを感じる顔をしている。2人でカフェテリアの席で向かい合って、周囲の視線が痛い。レイルの方は慣れているのかそれともどうでもいいのか、まったく気にしていないようだ。
(なんだこいつ)
いつまで経っても何も言ってこない。ただこちらを見ている。ランチタイムなのに何も食べないのだろうか。
私はお腹がすいているのでサンドイッチをいただく。
「……。」
私が食べているのをただじっと見つめてくるが、無視して食べすすめる。ここのサンドイッチうまっ! なんだか喋った方が負けのような雰囲気が出てきたので絶対にこちらからは話しかけないと決めた。
「……。」
(貴族出身者が利用するだけあって美味しいわ~明日は違うのにしよう)
「……。」
(デザートも買えばよかった! 今から買いに行ってもいいかな?)
チラリとレイルの方を見ると目が合ってしまった。
「……。」
(こいつ……察してちゃんか?)
その時、グゥ……と小さいがお腹が鳴る音が聞こえた。
「……サンドイッチ美味しかったですよ? レイル様もいかがですか?」
「……うん……」
呟くように頷いてサンドイッチを買いに席を立った。
(な、なんだあいつ……!?)
そういえばゲームでのレイルは浮世離れしていて世間のことがわかっておらず……というか常識が欠落していたのでヒロインが世話を焼く内に愛が……と、姉が言っていたことを思い出す。
(育児かよ! ってツッコんだらコブラツイストかけられたな)
そんな姉との思い出を淡く心の中にしみこませながらレイルを目で追うと、サンドイッチの買い方がわからず右往左往しているのが見えた。周囲の学生が遠巻きに見ているのがわかる。彼ほど親の権力が強いと、なにか粗相をした時のことを考えると簡単に手助けすることは躊躇われるのだ。
(ヒ、ヒロイン……! アイリスー!? どこ!? ってあの子弁当派!)
ここのカフェテリアの価格はべらぼうに高いので、ヒロインは寮のキッチンを借りていつも自作の弁当を作っているのだ。
(ええ……これ……私が行かなきゃだめ……?)
一緒の席に座っていることを知っている学生たちがこちらに視線を向けてくる。その視線に負け、私はカフェテリアの使い方を親切丁寧にレイルに仕込んだ。
「大丈夫ですか? 明日から1人でやるんですよ!? 不安があれば今この場で聞いてください!」
「うっ……大丈夫だ……多分……」
「お金は自分で払うんですよ! お付きはここまで来れないのですから! 払い方はわかりますか?」
「……多分」
「わからなかったら給仕の人に聞いてください。丁寧に教えてくれます」
「……そうする」
結局彼が食べ終わるまで席で世話をした。
「……ありがとう。助かった……」
「いえ……」
そう言ってペコリと小さく頭を下げ、例の要件を言わずに校舎へ戻っていった。
(親切にしたから疑いは晴れたのかな?)
って、そんな問題ではない。私は別に悪役令嬢でかまわないのだから。
なんだあいつは! 入学前にちゃんと世間常識を学んでこんかい!
悪役令嬢に気を使わせるんじゃなぁぁぁい!!!
(ん? 初日?)
それはおかしい。まだヒロインは攻略キャラ達と大した交流はないはずだ。精々お互い認識したくらいだろう。なのにすでに彼氏ヅラした私の婚約者や、ヒロインの望みに涙を流すほどショックを受けている宰相の息子はいったい……。
「まさか!?」
体を勢いよくベッドから起こす。
「逆ハールート!?」
それなら悪役令嬢の役割がしょぼい理由の説明がつく。……というか、薄っすらとした前世の記憶で姉がそんな話をしていたのを思い出したのだ。
『逆ハーレムのルートはねぇ……甘々すぎて恥ずかしいっていうか……個人的にはライバルの悪役令嬢も全然出てこないから張り合いもないし……最初から全力で愛されまくってるだけなのよ~』
(確か全ての能力値が一定以上上がらないとそのルートには入れないはず……)
そのため、基本的には攻略キャラ全員を攻略後にプレイできるルートだと言っていた。
「あのクソ男の為にあくせく働いてたせいで能力値が上がった状態で入学したからかしら……」
原因は推測でしかないが、とにかく逆ハールートに入っているのは間違いないだろう。そう確信させてくれるように昼休み、大神官の息子からお呼び出しがかかったのだ。
「……ちょっといいかな」
「…………はい」
大神官というと国王に並び立つ権力者だ。だが大神官は王と違い世襲制ではない。その息子が未来の大神官になるとは限らないのだが、レイルは同世代で圧倒的な魔力を保有しているため、次期大神官の有力候補なのは間違いない。
キラキラとした長い銀髪が眩しい。まつげまで銀色なのでなんとも神秘さを感じる顔をしている。2人でカフェテリアの席で向かい合って、周囲の視線が痛い。レイルの方は慣れているのかそれともどうでもいいのか、まったく気にしていないようだ。
(なんだこいつ)
いつまで経っても何も言ってこない。ただこちらを見ている。ランチタイムなのに何も食べないのだろうか。
私はお腹がすいているのでサンドイッチをいただく。
「……。」
私が食べているのをただじっと見つめてくるが、無視して食べすすめる。ここのサンドイッチうまっ! なんだか喋った方が負けのような雰囲気が出てきたので絶対にこちらからは話しかけないと決めた。
「……。」
(貴族出身者が利用するだけあって美味しいわ~明日は違うのにしよう)
「……。」
(デザートも買えばよかった! 今から買いに行ってもいいかな?)
チラリとレイルの方を見ると目が合ってしまった。
「……。」
(こいつ……察してちゃんか?)
その時、グゥ……と小さいがお腹が鳴る音が聞こえた。
「……サンドイッチ美味しかったですよ? レイル様もいかがですか?」
「……うん……」
呟くように頷いてサンドイッチを買いに席を立った。
(な、なんだあいつ……!?)
そういえばゲームでのレイルは浮世離れしていて世間のことがわかっておらず……というか常識が欠落していたのでヒロインが世話を焼く内に愛が……と、姉が言っていたことを思い出す。
(育児かよ! ってツッコんだらコブラツイストかけられたな)
そんな姉との思い出を淡く心の中にしみこませながらレイルを目で追うと、サンドイッチの買い方がわからず右往左往しているのが見えた。周囲の学生が遠巻きに見ているのがわかる。彼ほど親の権力が強いと、なにか粗相をした時のことを考えると簡単に手助けすることは躊躇われるのだ。
(ヒ、ヒロイン……! アイリスー!? どこ!? ってあの子弁当派!)
ここのカフェテリアの価格はべらぼうに高いので、ヒロインは寮のキッチンを借りていつも自作の弁当を作っているのだ。
(ええ……これ……私が行かなきゃだめ……?)
一緒の席に座っていることを知っている学生たちがこちらに視線を向けてくる。その視線に負け、私はカフェテリアの使い方を親切丁寧にレイルに仕込んだ。
「大丈夫ですか? 明日から1人でやるんですよ!? 不安があれば今この場で聞いてください!」
「うっ……大丈夫だ……多分……」
「お金は自分で払うんですよ! お付きはここまで来れないのですから! 払い方はわかりますか?」
「……多分」
「わからなかったら給仕の人に聞いてください。丁寧に教えてくれます」
「……そうする」
結局彼が食べ終わるまで席で世話をした。
「……ありがとう。助かった……」
「いえ……」
そう言ってペコリと小さく頭を下げ、例の要件を言わずに校舎へ戻っていった。
(親切にしたから疑いは晴れたのかな?)
って、そんな問題ではない。私は別に悪役令嬢でかまわないのだから。
なんだあいつは! 入学前にちゃんと世間常識を学んでこんかい!
悪役令嬢に気を使わせるんじゃなぁぁぁい!!!
応援ありがとうございます!
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