9 / 16
8 VS 大神官の息子
朝目覚めてこんなにも体が重いのは、父が詐欺にあったと知ったあの日以来だ。今日もきっとなにかある。だいたいゲーム初日に攻略キャラクター2人から言われのない罪で責め立てられるって……。
(ん? 初日?)
それはおかしい。まだヒロインは攻略キャラ達と大した交流はないはずだ。精々お互い認識したくらいだろう。なのにすでに彼氏ヅラした私の婚約者や、ヒロインの望みに涙を流すほどショックを受けている宰相の息子はいったい……。
「まさか!?」
体を勢いよくベッドから起こす。
「逆ハールート!?」
それなら悪役令嬢の役割がしょぼい理由の説明がつく。……というか、薄っすらとした前世の記憶で姉がそんな話をしていたのを思い出したのだ。
『逆ハーレムのルートはねぇ……甘々すぎて恥ずかしいっていうか……個人的にはライバルの悪役令嬢も全然出てこないから張り合いもないし……最初から全力で愛されまくってるだけなのよ~』
(確か全ての能力値が一定以上上がらないとそのルートには入れないはず……)
そのため、基本的には攻略キャラ全員を攻略後にプレイできるルートだと言っていた。
「あのクソ男の為にあくせく働いてたせいで能力値が上がった状態で入学したからかしら……」
原因は推測でしかないが、とにかく逆ハールートに入っているのは間違いないだろう。そう確信させてくれるように昼休み、大神官の息子からお呼び出しがかかったのだ。
「……ちょっといいかな」
「…………はい」
大神官というと国王に並び立つ権力者だ。だが大神官は王と違い世襲制ではない。その息子が未来の大神官になるとは限らないのだが、レイルは同世代で圧倒的な魔力を保有しているため、次期大神官の有力候補なのは間違いない。
キラキラとした長い銀髪が眩しい。まつげまで銀色なのでなんとも神秘さを感じる顔をしている。2人でカフェテリアの席で向かい合って、周囲の視線が痛い。レイルの方は慣れているのかそれともどうでもいいのか、まったく気にしていないようだ。
(なんだこいつ)
いつまで経っても何も言ってこない。ただこちらを見ている。ランチタイムなのに何も食べないのだろうか。
私はお腹がすいているのでサンドイッチをいただく。
「……。」
私が食べているのをただじっと見つめてくるが、無視して食べすすめる。ここのサンドイッチうまっ! なんだか喋った方が負けのような雰囲気が出てきたので絶対にこちらからは話しかけないと決めた。
「……。」
(貴族出身者が利用するだけあって美味しいわ~明日は違うのにしよう)
「……。」
(デザートも買えばよかった! 今から買いに行ってもいいかな?)
チラリとレイルの方を見ると目が合ってしまった。
「……。」
(こいつ……察してちゃんか?)
その時、グゥ……と小さいがお腹が鳴る音が聞こえた。
「……サンドイッチ美味しかったですよ? レイル様もいかがですか?」
「……うん……」
呟くように頷いてサンドイッチを買いに席を立った。
(な、なんだあいつ……!?)
そういえばゲームでのレイルは浮世離れしていて世間のことがわかっておらず……というか常識が欠落していたのでヒロインが世話を焼く内に愛が……と、姉が言っていたことを思い出す。
(育児かよ! ってツッコんだらコブラツイストかけられたな)
そんな姉との思い出を淡く心の中にしみこませながらレイルを目で追うと、サンドイッチの買い方がわからず右往左往しているのが見えた。周囲の学生が遠巻きに見ているのがわかる。彼ほど親の権力が強いと、なにか粗相をした時のことを考えると簡単に手助けすることは躊躇われるのだ。
(ヒ、ヒロイン……! アイリスー!? どこ!? ってあの子弁当派!)
ここのカフェテリアの価格はべらぼうに高いので、ヒロインは寮のキッチンを借りていつも自作の弁当を作っているのだ。
(ええ……これ……私が行かなきゃだめ……?)
一緒の席に座っていることを知っている学生たちがこちらに視線を向けてくる。その視線に負け、私はカフェテリアの使い方を親切丁寧にレイルに仕込んだ。
「大丈夫ですか? 明日から1人でやるんですよ!? 不安があれば今この場で聞いてください!」
「うっ……大丈夫だ……多分……」
「お金は自分で払うんですよ! お付きはここまで来れないのですから! 払い方はわかりますか?」
「……多分」
「わからなかったら給仕の人に聞いてください。丁寧に教えてくれます」
「……そうする」
結局彼が食べ終わるまで席で世話をした。
「……ありがとう。助かった……」
「いえ……」
そう言ってペコリと小さく頭を下げ、例の要件を言わずに校舎へ戻っていった。
(親切にしたから疑いは晴れたのかな?)
って、そんな問題ではない。私は別に悪役令嬢でかまわないのだから。
なんだあいつは! 入学前にちゃんと世間常識を学んでこんかい!
悪役令嬢に気を使わせるんじゃなぁぁぁい!!!
(ん? 初日?)
それはおかしい。まだヒロインは攻略キャラ達と大した交流はないはずだ。精々お互い認識したくらいだろう。なのにすでに彼氏ヅラした私の婚約者や、ヒロインの望みに涙を流すほどショックを受けている宰相の息子はいったい……。
「まさか!?」
体を勢いよくベッドから起こす。
「逆ハールート!?」
それなら悪役令嬢の役割がしょぼい理由の説明がつく。……というか、薄っすらとした前世の記憶で姉がそんな話をしていたのを思い出したのだ。
『逆ハーレムのルートはねぇ……甘々すぎて恥ずかしいっていうか……個人的にはライバルの悪役令嬢も全然出てこないから張り合いもないし……最初から全力で愛されまくってるだけなのよ~』
(確か全ての能力値が一定以上上がらないとそのルートには入れないはず……)
そのため、基本的には攻略キャラ全員を攻略後にプレイできるルートだと言っていた。
「あのクソ男の為にあくせく働いてたせいで能力値が上がった状態で入学したからかしら……」
原因は推測でしかないが、とにかく逆ハールートに入っているのは間違いないだろう。そう確信させてくれるように昼休み、大神官の息子からお呼び出しがかかったのだ。
「……ちょっといいかな」
「…………はい」
大神官というと国王に並び立つ権力者だ。だが大神官は王と違い世襲制ではない。その息子が未来の大神官になるとは限らないのだが、レイルは同世代で圧倒的な魔力を保有しているため、次期大神官の有力候補なのは間違いない。
キラキラとした長い銀髪が眩しい。まつげまで銀色なのでなんとも神秘さを感じる顔をしている。2人でカフェテリアの席で向かい合って、周囲の視線が痛い。レイルの方は慣れているのかそれともどうでもいいのか、まったく気にしていないようだ。
(なんだこいつ)
いつまで経っても何も言ってこない。ただこちらを見ている。ランチタイムなのに何も食べないのだろうか。
私はお腹がすいているのでサンドイッチをいただく。
「……。」
私が食べているのをただじっと見つめてくるが、無視して食べすすめる。ここのサンドイッチうまっ! なんだか喋った方が負けのような雰囲気が出てきたので絶対にこちらからは話しかけないと決めた。
「……。」
(貴族出身者が利用するだけあって美味しいわ~明日は違うのにしよう)
「……。」
(デザートも買えばよかった! 今から買いに行ってもいいかな?)
チラリとレイルの方を見ると目が合ってしまった。
「……。」
(こいつ……察してちゃんか?)
その時、グゥ……と小さいがお腹が鳴る音が聞こえた。
「……サンドイッチ美味しかったですよ? レイル様もいかがですか?」
「……うん……」
呟くように頷いてサンドイッチを買いに席を立った。
(な、なんだあいつ……!?)
そういえばゲームでのレイルは浮世離れしていて世間のことがわかっておらず……というか常識が欠落していたのでヒロインが世話を焼く内に愛が……と、姉が言っていたことを思い出す。
(育児かよ! ってツッコんだらコブラツイストかけられたな)
そんな姉との思い出を淡く心の中にしみこませながらレイルを目で追うと、サンドイッチの買い方がわからず右往左往しているのが見えた。周囲の学生が遠巻きに見ているのがわかる。彼ほど親の権力が強いと、なにか粗相をした時のことを考えると簡単に手助けすることは躊躇われるのだ。
(ヒ、ヒロイン……! アイリスー!? どこ!? ってあの子弁当派!)
ここのカフェテリアの価格はべらぼうに高いので、ヒロインは寮のキッチンを借りていつも自作の弁当を作っているのだ。
(ええ……これ……私が行かなきゃだめ……?)
一緒の席に座っていることを知っている学生たちがこちらに視線を向けてくる。その視線に負け、私はカフェテリアの使い方を親切丁寧にレイルに仕込んだ。
「大丈夫ですか? 明日から1人でやるんですよ!? 不安があれば今この場で聞いてください!」
「うっ……大丈夫だ……多分……」
「お金は自分で払うんですよ! お付きはここまで来れないのですから! 払い方はわかりますか?」
「……多分」
「わからなかったら給仕の人に聞いてください。丁寧に教えてくれます」
「……そうする」
結局彼が食べ終わるまで席で世話をした。
「……ありがとう。助かった……」
「いえ……」
そう言ってペコリと小さく頭を下げ、例の要件を言わずに校舎へ戻っていった。
(親切にしたから疑いは晴れたのかな?)
って、そんな問題ではない。私は別に悪役令嬢でかまわないのだから。
なんだあいつは! 入学前にちゃんと世間常識を学んでこんかい!
悪役令嬢に気を使わせるんじゃなぁぁぁい!!!
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
『ブスと結婚とか罰ゲーム』と言われた商人令嬢ですが、結婚式で婚約者の不正を暴いたら幼馴染の騎士様が味方でした
大棗ナツメ
恋愛
「なんで、お前みたいなブスと結婚しないといけないんだ」
そう言い放ったのは、結婚を一週間後に控えた婚約者だった。
商人の娘エフィは、持参金目当ての政略結婚を受け入れていたが、彼からは日常的に「ブス」「価値がない」と罵られていた。
そんなある日、エフィは父の商会の帳簿から男爵家の不審な金の流れを発見する。
さらに婚約者が娼婦と歩いているところを目撃し――
「泣く暇があるなら策を考えなさい」
昔、自分が言った言葉を思い出したエフィは決意する。
結婚式の日、すべてを暴くと。
そして再会したのは、かつて「姉さん」と慕ってくれた幼馴染の騎士レオンだった。
これは、ブスと蔑まれた商人令嬢が、
結婚式で運命をひっくり返す逆転劇。
「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった
歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。
病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も——
全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。
十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。
「もう用済みだ、出ていけ」
フィーネは静かに屋敷を去った。
それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。
「前のお嬢様を返してください」
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
天咲リンネ
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました
あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。
断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。
平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。
――だが。
私にはもう一つの試験がある。
それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。
そして数日後。
その結果は――首席合格だった。
冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。