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9 VS 隣国の王子 の前に……
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さて、残すところあと2人、隣国の王子と騎士団長の息子である。
それは3人目の大神官の息子レイルの件があってから一週間経った頃だった。
「エミリア様……ご相談が……」
「なに!? 例の所は紹介はしないわよ!!!?」
アイリスはすっかり私に懐いてくれていた。結局クズと別れるつもりはないようだが、娼婦になることは思いとどまってくれている。だから公爵家が経営する、いかがわしさゼロの高級レストランの給仕の仕事を紹介した。彼女は週末はそこで働くようになった。
「ち! 違います……!」
アイリスは少し焦っていた。どうやら多少は冷静に物事を考えられるようになったようだ。例のクズ男と離れて暮らしているからだろうか。
「イクリス様から結婚しようと言われてしまいまして……」
「情熱的ね」
アイリスによると毎日のように待ち伏せされ、愛を囁かれるのだそうだ。
「いいじゃない。すれば。結婚」
「嫌ですよ! 私には彼がいるんです!」
その彼より隣国の王子の方がいくらもマシそうだが。
「せっかくご紹介いただいたお店にまで来て……他のお客様のご迷惑にもなるのに……」
女たらしの設定なはずだが、逆ハールートだからか、ただ一つの愛モードにでもなっているのだろうか……。他の令嬢達を口説いている姿も見かけない。
「断っても断っても諦めてくれないんです……」
「まあそれはウザいわよね」
かと言って悪いが助ける気はない。正直今の彼氏より攻略キャラクターの方が愛を深める相手として幾分マシだろう。
(ダメ男だから別れろって言われて別れるやつはいないのよね~)
だから他に好きな相手が出来るのが一番なのだ。そうすれば自然と状況は変わるだろう。すっかり及び腰になったアーサーとベイルそしてレイルと違ってイクリスはなかなかガッツがあるじゃないか。ガッツだけでヒロインの心に響くことはないようだが。
「放課後、少しの間一緒にいていただけませんでしょうか……いつも周りに誰もいない時を狙われて怖くて」
「……それは確かに嫌ね」
気持ち悪っ! なんだそれは! 王子だからって全ての女がそんな行動喜ぶと勘違いしてるんじゃないか?
「わかったわ。2人でいれば牽制くらいにはなるでしょ」
「わぁ! ありがとうございます! よかったぁ今日彼が来るのでこれで気持ちよく会えます!」
「ちょっと待った!!!」
ちょ、ちょっと待った……! なに!? 来るって……ヤツか! ヤツが来るのか!!!
「例の彼が?」
「はい!」
アイリスは満面の笑みだ。喜んでいる所悪いが、少々確認したいことがある。
「その……ここまで来るための交通費は?」
「あらかじめ渡しておきました! 遠距離恋愛ですから……!」
それ、まだ彼の手元に残ってるかな?
「学生街の宿泊所は高いけどどうするの?」
「ご紹介いただいたお店のお給金が高くて助かりました! 日払いですし!」
これからまた仕事に行くんです! とウキウキしていた。貢ぐためのお金を稼ぐのは楽しいらしい。
「夜に着く便のはずなので、それまでお仕事いれてもらいました! 色々融通をきかせていただいて助かってます。本当に良い所をご紹介いただいてありがとうございました!」
キラキラと幸せそうな顔が眩しい。仕方なく今日はこのままアイリスに付き添うことにした。クソ男の顔も拝んでみたいし、私が一言いえばもしかしたら大人しくなるかもしれない。
「ここまで付き添っていただいて申し訳ありません!」
「いいのよ。私も食べてみたかったし」
私がいるからか今日はイクリスもレストランに現れなかった。
「もう少しで終わりますので」
デザートのケーキも食べながらゆっくりとアイリスが終わるのを待つ。この店の支配人からは、アイリスが良く働き、とても気の利く性格で、いい人を紹介してもらったと感謝された。
日も暮れて街灯が灯り始めた。私とアイリス、そして侍女のエリザと共に、馬車の停留所へと向かう。
「彼に会ったら誤解が解けると思います! とってもいい人なんですよ!」
「そう」
(彼女に娼館で働けっていう男が!?)
「とっても素敵な人なんです! 好きにならないでくださいね!」
冗談っぽく言っているが、多分マジだ。
(別れをちらつかせて彼女をコントロールしようとする男を!?)
そうして予定時間を少し過ぎて、その彼が乗っているはずの馬車が到着した。降りてくる人々を凝視するアイリスの顔が次第に暗くなっていく。
「……乗り遅れちゃったのかなぁ」
「本日の馬車はこれで終わりです」
エリザが教えてくれる。
ガックリと肩を落とすアイリスへ励ます言葉が浮かばない。
(せっかくの交通費、ギャンブルか娼館に消えたんだろうな~)
「アイリス……あのね……」
「きっと彼のお母さんの調子が良くないんだわ!」
勝手に事実を捏造し始めた。
「いやあの……」
「薬代、送ってあげなきゃ!」
必死に自分に言い聞かせるその姿が痛々しくて、そっと肩を抱き寄せた。
「うぅ……ううう……」
我慢しようとしても泣き声が漏れてしまうようだ。昔の自分を思い出してしまってこちらまで辛くなった。
それは3人目の大神官の息子レイルの件があってから一週間経った頃だった。
「エミリア様……ご相談が……」
「なに!? 例の所は紹介はしないわよ!!!?」
アイリスはすっかり私に懐いてくれていた。結局クズと別れるつもりはないようだが、娼婦になることは思いとどまってくれている。だから公爵家が経営する、いかがわしさゼロの高級レストランの給仕の仕事を紹介した。彼女は週末はそこで働くようになった。
「ち! 違います……!」
アイリスは少し焦っていた。どうやら多少は冷静に物事を考えられるようになったようだ。例のクズ男と離れて暮らしているからだろうか。
「イクリス様から結婚しようと言われてしまいまして……」
「情熱的ね」
アイリスによると毎日のように待ち伏せされ、愛を囁かれるのだそうだ。
「いいじゃない。すれば。結婚」
「嫌ですよ! 私には彼がいるんです!」
その彼より隣国の王子の方がいくらもマシそうだが。
「せっかくご紹介いただいたお店にまで来て……他のお客様のご迷惑にもなるのに……」
女たらしの設定なはずだが、逆ハールートだからか、ただ一つの愛モードにでもなっているのだろうか……。他の令嬢達を口説いている姿も見かけない。
「断っても断っても諦めてくれないんです……」
「まあそれはウザいわよね」
かと言って悪いが助ける気はない。正直今の彼氏より攻略キャラクターの方が愛を深める相手として幾分マシだろう。
(ダメ男だから別れろって言われて別れるやつはいないのよね~)
だから他に好きな相手が出来るのが一番なのだ。そうすれば自然と状況は変わるだろう。すっかり及び腰になったアーサーとベイルそしてレイルと違ってイクリスはなかなかガッツがあるじゃないか。ガッツだけでヒロインの心に響くことはないようだが。
「放課後、少しの間一緒にいていただけませんでしょうか……いつも周りに誰もいない時を狙われて怖くて」
「……それは確かに嫌ね」
気持ち悪っ! なんだそれは! 王子だからって全ての女がそんな行動喜ぶと勘違いしてるんじゃないか?
「わかったわ。2人でいれば牽制くらいにはなるでしょ」
「わぁ! ありがとうございます! よかったぁ今日彼が来るのでこれで気持ちよく会えます!」
「ちょっと待った!!!」
ちょ、ちょっと待った……! なに!? 来るって……ヤツか! ヤツが来るのか!!!
「例の彼が?」
「はい!」
アイリスは満面の笑みだ。喜んでいる所悪いが、少々確認したいことがある。
「その……ここまで来るための交通費は?」
「あらかじめ渡しておきました! 遠距離恋愛ですから……!」
それ、まだ彼の手元に残ってるかな?
「学生街の宿泊所は高いけどどうするの?」
「ご紹介いただいたお店のお給金が高くて助かりました! 日払いですし!」
これからまた仕事に行くんです! とウキウキしていた。貢ぐためのお金を稼ぐのは楽しいらしい。
「夜に着く便のはずなので、それまでお仕事いれてもらいました! 色々融通をきかせていただいて助かってます。本当に良い所をご紹介いただいてありがとうございました!」
キラキラと幸せそうな顔が眩しい。仕方なく今日はこのままアイリスに付き添うことにした。クソ男の顔も拝んでみたいし、私が一言いえばもしかしたら大人しくなるかもしれない。
「ここまで付き添っていただいて申し訳ありません!」
「いいのよ。私も食べてみたかったし」
私がいるからか今日はイクリスもレストランに現れなかった。
「もう少しで終わりますので」
デザートのケーキも食べながらゆっくりとアイリスが終わるのを待つ。この店の支配人からは、アイリスが良く働き、とても気の利く性格で、いい人を紹介してもらったと感謝された。
日も暮れて街灯が灯り始めた。私とアイリス、そして侍女のエリザと共に、馬車の停留所へと向かう。
「彼に会ったら誤解が解けると思います! とってもいい人なんですよ!」
「そう」
(彼女に娼館で働けっていう男が!?)
「とっても素敵な人なんです! 好きにならないでくださいね!」
冗談っぽく言っているが、多分マジだ。
(別れをちらつかせて彼女をコントロールしようとする男を!?)
そうして予定時間を少し過ぎて、その彼が乗っているはずの馬車が到着した。降りてくる人々を凝視するアイリスの顔が次第に暗くなっていく。
「……乗り遅れちゃったのかなぁ」
「本日の馬車はこれで終わりです」
エリザが教えてくれる。
ガックリと肩を落とすアイリスへ励ます言葉が浮かばない。
(せっかくの交通費、ギャンブルか娼館に消えたんだろうな~)
「アイリス……あのね……」
「きっと彼のお母さんの調子が良くないんだわ!」
勝手に事実を捏造し始めた。
「いやあの……」
「薬代、送ってあげなきゃ!」
必死に自分に言い聞かせるその姿が痛々しくて、そっと肩を抱き寄せた。
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