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14 収束
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盗賊達が狙っていたのはアイリスが振るっていた聖剣だった。
偶然この聖剣を発見した鍛冶屋が、教会に鑑定を依頼していた。どこからかその情報が漏れ盗賊達がワラワラとやってきたらしい。聖剣というとかなりのお宝なのだ。
「あの聖剣が真の力を発揮した……君は聖女だ!」
高揚した表情のレイルが叫ぶ。
(こんなキャラだっけ!?)
呆気に取られている場合ではない。アイリスが聖女として覚醒したのは確か攻略キャラを守るために聖なる癒しの力を発揮したからだ。
(逆ハールートだと違うの!?)
ゲームをしていないからわかりようがないが、こうなるとどうなるのか。まだ物語が始まって1年目だ。どう考えても早すぎる。
「アイリスは強いなぁ!」
ガイルは嬉しそうにニコニコとアイリスに話しかける。
「冒険者の真似事のようなことをしていたので……」
へへへとアイリスも照れているが、真似事レベルじゃない。どう考えてもプロだ。例のダメ男の為にそんなことまでしていたのか。
その日の夜、アイリスが部屋まで訪ねてきた。
「あら。聖女様」
少しおちょくるように挨拶すると、アイリスは、
「やめてください~!」
少し怒ったふりをして恥ずかしがっていた。
「今日はありがとうね。助けてくれて」
あの後、アイリスは教会に連れていかれ、本物の聖女だと改めて証明したのだ。公爵家の人間と言えど立ち会わせてもらえず、アレっきりになるかと少々寂しかった。まさか学園の寮に帰ってこれるとは。
それくらいこの国で聖女は特別な存在だ。
「そんな! 当たり前です……友達を守るのは……」
お互いに照れながらニコリと微笑みあった。『友達』と改めて関係に名前を付けると心地よいこそばゆさがある。
アイリスはこれからこの国の聖女として暮らしていくことが決まったそうだ。ただ学園にはこのまま在籍する。
「それで……あの……彼とキッチリ別れようと思うんです」
「うそ!?」
思わず本音が声に出てしまった。あれだけ彼にしがみついていたのに。そう簡単に別れられるだろうか。
(別れを匂わせて気を引く作戦じゃないでしょうね!?)
残念ながら彼女の決意も疑ってしまう。前世の自分も似たような時期があったからだ。
だがアイリスは本気の素振りをみせる。小さなこぶしがギュッと握りしめられていた。
「本気です……私には彼しかいないってずっと思ってたんですけど……今はとてもいい友達ができましたし……ちゃんとした仕事も決まりました」
聖女という立場を仕事と言っちゃうところ、嫌いじゃない。真面目なアイリスなら、自分の仕事はきっちりこなすだろう。
「それで……一緒についてきていただけないでしょうか……もし私が躊躇ってしまったら思いっきり殴ってほしいんです」
自分を客観視はできるようになったらしい。意気込んではいても、絶対の自信はないようだ。
「……わかったわ! きっちり見届けてあげる!」
(まあ聖女を殴ったりなんかしたら、流石に公爵家でもおとがめなしとはいかないだろうけど)
その時は相手をぶん殴ろう。
アイリスは行動力がある。この翌日、朝一で自分の村へと向かった。もちろん約束通り私も一緒だ。そして例のアイツらも……。
(ぞろぞろとまぁ……)
権力者の息子たちが列をなして大移動だ。
こうなるともうクソ男に勝ち目はないだろう。このメンバーに睨まれてこの国でまともに暮らすことなんてできないのだから。
「な、なんだ!?」
案の定、聖女御一行様に恐れおののいていた。
「ごめんなさいポール……私、これ以上あなたとやっていけないの……」
村の酒場で酔いつぶれかけていたが、それも一気に冷めたようだ。アイリスの背後からは鋭い目がいくつも光っていた。
「あ……あぅ……」
今にもチビリそうなその男の絞り出すような声を聞いて、アイリスは切ない顔になった。ポールはアイリスとの別れが辛いのだと勘違いしたようだ。
(コラー!!!)
聖女を殴るわけにはいかない。しかたない……拗れそうなら予定通り私があのクソ男を殴ってでもどこかへ追いやろう。
「アイリス! あなたには誰がいるんだっけ!?」
後押しするように声をかける。するとハッとしたような表情に変わった。
「今までありがとう」
私とその他大勢の国内屈指のイケメン達が急いでポールとやらを睨みつける。
(さっさと同意しろぉぉぉ!)
こちらの意図が通じたようだ。コクコクと高速で頷きながら、
「ああ……こちらこそありがとう……」
と、なんとか言葉を吐き出した。
「うぅ……!」
涙をポロリと流しながらアイリスが走って酒場の外に出る。が、さらに遠くまで移動してもらう。酒場では今、ポールが怖い人たちに取り囲まれて、今後一切アイリスに近づかないように念を押されているのだ。
「アイリス、頑張った……頑張ったね!」
「うぅ……はい……」
こうしてアイリスの初恋は終わりを告げた。
偶然この聖剣を発見した鍛冶屋が、教会に鑑定を依頼していた。どこからかその情報が漏れ盗賊達がワラワラとやってきたらしい。聖剣というとかなりのお宝なのだ。
「あの聖剣が真の力を発揮した……君は聖女だ!」
高揚した表情のレイルが叫ぶ。
(こんなキャラだっけ!?)
呆気に取られている場合ではない。アイリスが聖女として覚醒したのは確か攻略キャラを守るために聖なる癒しの力を発揮したからだ。
(逆ハールートだと違うの!?)
ゲームをしていないからわかりようがないが、こうなるとどうなるのか。まだ物語が始まって1年目だ。どう考えても早すぎる。
「アイリスは強いなぁ!」
ガイルは嬉しそうにニコニコとアイリスに話しかける。
「冒険者の真似事のようなことをしていたので……」
へへへとアイリスも照れているが、真似事レベルじゃない。どう考えてもプロだ。例のダメ男の為にそんなことまでしていたのか。
その日の夜、アイリスが部屋まで訪ねてきた。
「あら。聖女様」
少しおちょくるように挨拶すると、アイリスは、
「やめてください~!」
少し怒ったふりをして恥ずかしがっていた。
「今日はありがとうね。助けてくれて」
あの後、アイリスは教会に連れていかれ、本物の聖女だと改めて証明したのだ。公爵家の人間と言えど立ち会わせてもらえず、アレっきりになるかと少々寂しかった。まさか学園の寮に帰ってこれるとは。
それくらいこの国で聖女は特別な存在だ。
「そんな! 当たり前です……友達を守るのは……」
お互いに照れながらニコリと微笑みあった。『友達』と改めて関係に名前を付けると心地よいこそばゆさがある。
アイリスはこれからこの国の聖女として暮らしていくことが決まったそうだ。ただ学園にはこのまま在籍する。
「それで……あの……彼とキッチリ別れようと思うんです」
「うそ!?」
思わず本音が声に出てしまった。あれだけ彼にしがみついていたのに。そう簡単に別れられるだろうか。
(別れを匂わせて気を引く作戦じゃないでしょうね!?)
残念ながら彼女の決意も疑ってしまう。前世の自分も似たような時期があったからだ。
だがアイリスは本気の素振りをみせる。小さなこぶしがギュッと握りしめられていた。
「本気です……私には彼しかいないってずっと思ってたんですけど……今はとてもいい友達ができましたし……ちゃんとした仕事も決まりました」
聖女という立場を仕事と言っちゃうところ、嫌いじゃない。真面目なアイリスなら、自分の仕事はきっちりこなすだろう。
「それで……一緒についてきていただけないでしょうか……もし私が躊躇ってしまったら思いっきり殴ってほしいんです」
自分を客観視はできるようになったらしい。意気込んではいても、絶対の自信はないようだ。
「……わかったわ! きっちり見届けてあげる!」
(まあ聖女を殴ったりなんかしたら、流石に公爵家でもおとがめなしとはいかないだろうけど)
その時は相手をぶん殴ろう。
アイリスは行動力がある。この翌日、朝一で自分の村へと向かった。もちろん約束通り私も一緒だ。そして例のアイツらも……。
(ぞろぞろとまぁ……)
権力者の息子たちが列をなして大移動だ。
こうなるともうクソ男に勝ち目はないだろう。このメンバーに睨まれてこの国でまともに暮らすことなんてできないのだから。
「な、なんだ!?」
案の定、聖女御一行様に恐れおののいていた。
「ごめんなさいポール……私、これ以上あなたとやっていけないの……」
村の酒場で酔いつぶれかけていたが、それも一気に冷めたようだ。アイリスの背後からは鋭い目がいくつも光っていた。
「あ……あぅ……」
今にもチビリそうなその男の絞り出すような声を聞いて、アイリスは切ない顔になった。ポールはアイリスとの別れが辛いのだと勘違いしたようだ。
(コラー!!!)
聖女を殴るわけにはいかない。しかたない……拗れそうなら予定通り私があのクソ男を殴ってでもどこかへ追いやろう。
「アイリス! あなたには誰がいるんだっけ!?」
後押しするように声をかける。するとハッとしたような表情に変わった。
「今までありがとう」
私とその他大勢の国内屈指のイケメン達が急いでポールとやらを睨みつける。
(さっさと同意しろぉぉぉ!)
こちらの意図が通じたようだ。コクコクと高速で頷きながら、
「ああ……こちらこそありがとう……」
と、なんとか言葉を吐き出した。
「うぅ……!」
涙をポロリと流しながらアイリスが走って酒場の外に出る。が、さらに遠くまで移動してもらう。酒場では今、ポールが怖い人たちに取り囲まれて、今後一切アイリスに近づかないように念を押されているのだ。
「アイリス、頑張った……頑張ったね!」
「うぅ……はい……」
こうしてアイリスの初恋は終わりを告げた。
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