千年前からやってきた見習い魔法使い、現代に生きる

桃月とと

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第一章 千年後の世界へ

第1話 千年前

(は~まったく師匠は……いつもいつもいつもいつも突然なんだから……)

 なんて、文句を言ってもどうにもならないことをメルディは知っている。知っているのについ愚痴愚痴と考えてしまう。

「メルディ! ちょっと魔の森まで行って、マンドゴラ十本引き抜いてきて!」
「ええ!? 今から!?」

 外は嵐が来そうですよ? と視線を窓の外へ向けるも相手はほんの少しも気にしていない。

「そうだよ! 早く早く~!」
「野生のですか!? 効能が安定しないのでは?」
「ちょっといいレシピ思いついたんだよね!」
「えぇ~……」

 彼女が行きたくないアピールをしても、師匠は全く気にしない。ニコニコ笑顔で、さっさと行けと急かしてくる。

「師匠の言うことは~?」
「ぜ、ぜったーい……」

 そう。メルディはこの師匠にそういう約束で魔法を教えてもらっていた。彼の雑用を全て引き受ける。その代わりにメルディ自身を立派な魔女にしてもらうという約束だ。

(免許皆伝まであと少し……あと少しの我慢!)

 彼は大魔法使いレオナルド・マグヌス。だから弟子入り希望もたくさんいた。だが今残っているのはメルディだけ。他は皆、レオナルドの無茶ぶり要求に耐えられず去って行った。
 彼女はもうヤケクソで師匠についていくと決めている。今更辞めてたまるかという気持ちも大きいが、辞めて他に行く当てもないのだ。おかげで、今ではそこそこ魔法が使えるようになっている。大魔法使いほどの威力や効果はないが、魔術に錬金術、それに魔道具に関する満遍ない知識と、多種多様なを使いこなせるようなったのだ。

 この世界では、【魔術】【錬金術】【魔具術】を修める者を総称して【魔法使い】と呼んでいた。どれも少しだけ専門性が違う。

「なーんかメルディの魔法はインパクトが足りないんだよね」
「いや、師匠と比べられたら堪らないんですけど!」
「アハハ! 僕にそんな口きくのはメルディくらいだ!」

 そう言いながら弟子の両ほっぺを横に引っ張っている。

おふぁげさまでおかげさまでつひょくたくましくなりまひた強くたくましくなりました!」
「アハハハハ!」

 こんな感じで楽しそうに笑いながらメルディをいびるのが好きなのだ。まあ、彼女も一方的にやられるつもりもなく、しっかりとほっぺをひっぱり返す。

「師匠にそんなことしていいわけ!!?」

 ひどーい! と、自分の頬をさすりながら口を尖らせる大魔法使い。

「いいんです。結局師匠の代わりに魔の森に行くのは私なので」
「どんな理屈!?」

 なんだかんだ言いながらも、メルディが彼の雑用をこなせば、レオナルドも約束通り惜しみなく魔法の知識を授けた。

 魔の森は大きな木々で空が見えない。だから真昼間だというのに暗い。不気味なのは暗いからだけではなく、人間にとって恐ろしい魔獣や毒草が群生しているからでもあった。
 ランタンで足元を照らしながらマンドゴラの群生地に向かう。ふよふよといくつものランタンの光がメルディの周りを浮遊した。最近、レオナルドが発明した魔道具だ。これはなかなか便利なもので、魔獣などから不意打ちをくらいそうになると本人の意志と関係なく光の矢となり、相手に突き刺さるのだ。
 途中、何度も魔獣に遭遇したのでその度にキッチリと倒し、ついでに素材を剥がしてメルディは先へと進む。

「いいお小遣いになりそう」

 魔獣の素材はレオナルドが買い取っている。彼にとって必要のないモノは、たまにくる商人がいい値段で取引していた。大魔法使いの弟子という肩書が上手く効いて、素材に対しての信頼度が高いのだ。

(やっぱあの師匠の弟子って肩書は美味しいわ!)

 そう思って自分を納得させたのは何回目だろうか。魔獣を十体倒したあたりで目的の場所が見えてきた。

「あー疲れた~……これからマンドゴラ収穫か……」

 思わず彼女は一人ボヤいてしまう。

(お腹すいた。帰ったらすぐにお昼ごはんにしよう。昨晩作ったミートパイが残っているはず……師匠から食べられてなかったら……)

 やれやれと思いながら、収穫のための装備を確認しようとした瞬間、この森ではありえない現象が起こった。

「まぶしっ!」

 思わず目を細めるほどの刺すような光だった。そして同時にぐぐぐっと抗えない強い力で体が光の中に吸い込まれる。

(やばいやばいやばいやばい!!!)

 助けてなんて叫ぶ暇はない。メルディは、何とかしなきゃと急いで大きな木に絡まる太い蔦を魔術を使って手元に引きつけ、尚且つ魔術で暴風を呼び起こし光の外へと自分の体を押し出そうとする。

「うそっ!?」

 彼女のとっさの判断もむなしく、あっさりと太い蔦はちぎれ、暴風は光に吸い込まれ始めた。

「きゃああああ!」

 そうしてメルディも光の中へ。


 次に目が覚めた時、彼女は綺麗な芝生の上に寝っ転がって、目の前には清々しい青空が広がっていた。
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