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9月8日(月)
しおりを挟む「梨みたいだぞ」
「あーん、美味しそう」
「熟してるぞ」
「果汁が滴ってるわ」
「こないだ食べた梨、甘くて美味しかったぞ」
「ずるい、あたしはまだ食べてないのに」
「ほら、上から影に押されて赤みを帯びてきた」
「充血してきたわね」
「風船の底に溜まった光の集合体みたいだ」
「線香花火の蕾みたい」
「生まれたばかりの火の玉だな」
「ぽとって落ちる寸前にも見える」
「月は落ちないぞ」
「落ちないけど生まれ変わるわよね」
「ふふふ、どうだろな」
「あっ、蝙蝠が二匹、半分喰われた月に入り込んだわ」
「蝙蝠も月を喰うのかな」
「月、どんな味がするんだろ」
「梨、だろ」
「くすくすくす」
「わお、こっちはリアルに蝙蝠の体当たりだ」
「超音波出てるくせにいい加減ね」
「ふわぁ~」
「そろそろお眠さんね」
「ふわぁ~」
「起きたらお月様と同じように、きっとまた生まれ変わってるわ、おやすみ」
「復活した月がマンホールから顔出すかもな、おやすみ」
「月の復活は、あたしが見届けておくわ」
「リリリリ、リリリリ、、、、」
電話口から蟋蟀が返事したのよ
復活まで見届けるはずの未明の月蝕
ベランダの椅子でいつしか眠ってしまった自由なあたし
今日も日中は穏やかな気候だったけど
今、コンビニの駐車場に、今朝方よりもはるかに巨大な真っ赤な月
低い空に妖しく浮いてるわ
でも、どちらにせよ、相変わらず全身痛いのよね……くすん
梨食べたい
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