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寝床籠に揺れながら、
「へぇ~~~オマエさんみたいな「ヘナチョコ」がぁ、野盗をねぇ~」
事の顛末を、半笑いの訝し気な顔して聞くラミウム。
少女を上から下まで舐め回す様に、まるで品定めでもするかの様に眺めていると、何故か少女は焦り交じりの口調で、
「そっ、そうなんでぇす! ほ、本当に危ないところを助けて頂いてぇ!」
「…………」
(どぅにも胡散臭い話さぁねぇ~)
疑いしかないジト目で見つめていたが、当のラディッシュは悪者を退治した事で興奮気味に、些細な疑念も抱いた様子を見せず、
「でしょ! 凄いでしょ、ラミィ! 僕だって、やる時にはやる漢なのさぁ!」
満面のドヤ顔を見せると、
(らっ、ラミィ?!)
少女は愛想笑いの下で、内心ギクリ。
作った笑顔は崩さず、ラミウムをそれとなく見つめ、
(む、薄紫の「瞳」と「髪」に「白装束」……それに「ラミィ」ってぇまさかぁ!?)
笑いが不自然に引きつると、何かを察したラミウムが悪い顔してニヤリ。
「なるほどねぇ~。しっかし、この辺の盗賊ってぇのは、よほどのマヌケ揃いか、副業で盗賊をやってる「ハンパ者」の集まりなのかねぇ~?」
(ッ!?)
少女は内心で焦りの色を深め、
(ノォオォォーーーッ! まさかボクの正体に気付いてぇるぅううぅ?!)
しかし焦りに気付かぬラディッシュは心外そうに、
「酷いよぉラミィ! 僕だって「勇者」だよぉ! やる時はやるよぉ! 僕を選んで召喚した「天世人」の言葉とは思えないよぉ!」
「ゆっ、勇者様にぃ、天世様ぁあぁ!!?」
驚きのあまり、思わず口を衝いて出てしまった言葉を、慌てて両手で覆い隠す少女。
何か後ろめたい事があるのは明らかであったが、超絶箱入り娘のドロプウォートも単に少女を驚かせてしまったものと思い込み、凛とした表情に加えて外面良く、
「そうなのですわ。実は彼女はこう見えて、天世人様のラミウム様なのですわ。そして貴方を助けたと言う、この「顔だけ良い男」は勇者のラディッシュですわ」
ラミィ「こう見えて……」
ラディ「顔だけ……」
物言いたげなジト目を向ける二人を横目に、慄く少女はおずおずと、
「じゃ、じゃあアナタも、ま、まさかぁ……」
ドロプウォートは「待ってました」と言わんばかりのドヤ顔で以って、
「故あって誓約を交わした勇者は未だおりませんが、誓約者(※誤:誓約者候補生)のドロプウォートと申しますでぇすわ♪」
「よっ、四大貴族令嬢様ぉおっぉぉのおおぉぉおぉ?!!!」
魂が抜け出そうなほどの驚きを見せると、盗賊から守ってくれた三人の素性に大きく安堵するならいざ知らず、顔面蒼白な驚き様に、
「「ん?」」
流石のラディッシュとドロプウォートも違和感を感じて首を傾げ、
(し、しまったぁ! つい慌てぇてぇ!)
取り乱してしまった少女は急ごしらえの笑顔で、
「みっ、皆様ぁ、凄い方々でらしたんでぇすね! だから野盗をいとも簡単にぃ!」
取り繕う様に、尊崇の念を抱いた表情で、押し付けがましい程の尊敬アピールをして見せると、
「!」
ドロプウォートの眼の端が鋭くギラリ。
(や、やり過ぎたぁ?!)
少女が作り笑顔の下で冷たい汗を流すと、
「そんなに「凄く」なんてないですわぁ~~~♪」
凛然とした目尻が急激に下がり、満更でもなさげな嬉し顔に一変。
(ヨッシャーーーッ!)
少女は心の中で大きくガッツポーズ。
人々に「自分と言う存在」を認めてもらうが為に研鑽を積んで来たドロプウォート。
故に彼女は褒め言葉にめっぽう弱く、デレデレの笑顔満面、
「そこまで感動されては仕方ないですわぁ~」
「え?」
頼まれてもいないのに剣を鞘から抜き始め、
「触りだけですわよぉ~」
「へ???」
困惑する少女を前に、剣技を披露しようとし始めたが、
『止めんかぁいぃ!』
バシィ!
ラミウムが即でツッコミ。
「痛ぁあぁ~」
後頭部を擦るドロプウォートを鬼の形相で見下ろし、
「アンタはァ! 調子に乗って森を炭に変えちまったのぉもぅお忘れでかァい!」
「もっ、森を炭にぃいぃぃ?!」
慄く少女を前にドロプウォートは体裁を保とうと、言い訳がましく、
「あっ、アレは、少々チカラが入り過ぎてしまっただけで、」
「巨木をなぎ倒して森の一部を丸坊主にした事もかぁい!」
更なるツッコミに言い返す事も出来ず、
「むぅうぅうぅうぅぅううぅ!」
両頬を不機嫌にぷっくり膨らませると、
「何も初対面の方の前で「些細な失態」を上げ連ねなくても良いではありませんかぁ!」
赤面顔で逆ギレし、
「ワタクシにも「四大貴族令嬢」としてのプライドがありますのよぉ!」
「お馬鹿をお言いでないよ! アレが「些細」だってんならぁ天災のほとんどが小事になっちまうさぁね!」
「何ですってぇ!」
「何だァい!」
「ちょ、ちょっと止めなよ二人ともぉ!」
慌てふためき間に割って入るラディッシュは、少女のドン引き視線に、
(ま、マズイよ! このままじゃ村に入るのを断られちゃうかも! そしたらラミィの食事のチャンスが!)
不安が脳裏をよぎり、精一杯の笑顔(引きつり笑顔)で、
「だっ、大丈夫なんだよっ! こんな二人だけど「意外と人畜無害」だからっ!」
精一杯のフォローをしたつもりであったが、はたから聞けば火に油。言葉の選択ミス。
当然の結果のように、
『『どう言う意味(だァい・ですのォ)!!!』』
女子二人に凄まれ、
「ヒィ! ごめんなさい! ごめんなさぁい!! いごめんなさぁーーーい!!!」
頭を抱えて縮こまる、勇者。
正に、喜劇。
そんな三人の漫才を、
「…………」
物言いたげなジト目で静観する少女。
かねてより思い描いていた天世人と勇者、そして誓約者の理想と現実に、
(この人達ってホンモノなぉ?)
自身の怪しげな素性は棚に上げ、戸惑いを覚えたが、
(で、でも役割は果たさないとでぇす!)
とある意図を以って腹を括り、
「あ、あのぉ! ボクの名前は『パストリス』と言いまぁす! 皆様にお礼がしたいのでぇ是非にボクの村に来て下さぁい!」
訴えかける様に叫ぶと、女子二人に発言の真意を責められ縮こまっていたラディッシュが、愛らしい少女の前で下げに下げ続けた「男性株価」を、ここぞとばかり上げようと、
「そっ、そうなんだよぉ二人とも!」
ガッと勢いよく立ち上がり、
「パストリスさんが、お礼をしたいから村に来て欲しいってぇ!」
チカラ強く擁護して見せたが、地元民ドロプウォートは、
(不帰の森に「村がある」ですってぇ?! 聞いた事もありませんわ?)
訝し気。
しかし更なる高得点を狙うラディッシュに、彼女の懸念など気付ける筈も無く、満面の笑顔でパストリスに向き直り、
「でもパストリスさん、本当に「お礼」なんて気にしなくて良いんだよぉ。僕は、当然の事をしただけなんだしぃ、村に案内してもらえるだけで十分なんだよぉ」
少々格好つけ気味ではあるが、謙虚に謝礼を断ってみせると、
「素晴らしい考え方ですわ、ラディ!」
ドロプウォートが疑念も忘れて感動し、
「流石は「私の」日頃の教育のたまものですわ♪」
「「え…………」」
呆気にとられるパストリスとラディッシュを前に、自画自賛。
すると、
『何を言ってんだぁい、アンタはぁ』
ラミウムが小馬鹿にした笑顔でニヤリ。
「?」
振り返ると、愉快そうにニヤニヤしながら、
「コイツが、んな殊勝なタマかぁい? おおかた本音は、知らない人間たちに取り囲まれるのが「怖いダケ」なんだろぉさねぇ~」
「そぉんなぁまさかですわぁ~」
軽やかに笑い飛ばし、
「いくらラディでも「謝意を伝えたい方」に対して、そこまで臆病ではぁ、」
視線を移すと、
「…………」
無言で、スッと眼を逸らすラディッシュ。
その姿に、ドロプウォートは「ラミウムの推測」が真実であったと悟り、恨めしそうなジト目でラディッシュを見つめ、
「私の感動を、返して頂きたいですわぁ……」
「キッシッシッ」
ラミウムは楽し気に一笑い。本音が晒され、肩身狭そうにラディッシュがうつむく中、
「それよりねぇ「襲われ少女」ぉ!」
(お、襲われ少女ぉ?!)
驚くパストリスに顔を寄せ、
「アンタの村に「教会」は、あんのかい?」
「襲われ少女って、」
「イイから、在るのかい?! 無いのかぁい?!! どぉっちなんだァい!!!」
気圧され、
「えっ、あ、は、はぁい、ありまぁすぅ!」
答えると、ラミウムは少年の様な満面の笑顔でニカッと笑い、
「そぅかい♪」
寝床籠からさっそうと飛び降り、
「ほらアンタら何をチンタラしてんだぁい! さっさと準備をおし! 村に行くよォ!」
いつになく張り切る姿に違和感を持ったラディッシュが、
「何を、そんなに焦ってるの?」
急くラミウムと温度差のある呑気顔で首を傾げると、パストリスが何か思い当たった様子で「あっ!」と気付きの声を上げ、
「だからラミウム様はそんなに弱っ、」
「誰が「弱い」ってぇ!」
咄嗟に、話を途中で喰らうラミウム。
(コイツ、アタシの「気」を読んだのかぁい?!)
内心に焦りを覚えたが、表面上は怒りのイキ顔で少女の胸ぐらを掴み上げ、
「だぁ~れが弱いってぇ。アタシの目ぇ見てぇもっぺん言ってみぃ~なぁ」
「ひぃぅ~~~! 違います違いまぁすでぇすぅ!」
怯えるパストリスは半泣きで激しく首を左右に振り、
「ボクはぁそんなつもりで言ったのではぁなくぅ!」
「言い訳してんじゃないよォ!」
「ひぃう!」
一喝し、自身の額をパストリスの額に押し付け、
「舐めた事をお言いでないよ『あの同人』みたいに、ひん剥かれたいかぁい!」
「ひぃいぃ! 『あの同人』が何か分かりませぇんけどぉごめんなさいぃごめんなさぁいごぉめんなさぁーーーい!!!」
訳も分からず泣きながら許しを乞うと、ラミウムは耳元に凄みを利かせた小声で、
(これ以上、余計な事を二人に言ったらぁマジでタダじゃおかないからねぇ)
顔面蒼白のパストリスは怯えきった表情で、無言でコクコク何度も何度も激しく頷き応え、その様な密約が交わされた事など露と気付かぬ、ラディッシュとドロプウォートは、毎度の「ラミウムの癇癪」と思い込み、ヤレヤレ笑いを見合わせていた。
そんな中、ラミウムは念押しする様に、怯え顔のパストリスに睨みを利かせた一瞥くれてから手を離すと、不機嫌が嘘であったかの様な満面の笑顔に急変し、
「んじゃ村に行こうかねぇ、オマエ達ィ!」
上機嫌の気勢を張り上げ、
「チンタラしてるヤツぁ捨ててくよぉ♪」
「「「…………」」」
些か、納得いかない三人ではあったが、城を目指していた筈の一行は「鶴の一声(ラミウムのワガママ)」により、一路パストリスが暮らす村へと進路を変えた。
「へぇ~~~オマエさんみたいな「ヘナチョコ」がぁ、野盗をねぇ~」
事の顛末を、半笑いの訝し気な顔して聞くラミウム。
少女を上から下まで舐め回す様に、まるで品定めでもするかの様に眺めていると、何故か少女は焦り交じりの口調で、
「そっ、そうなんでぇす! ほ、本当に危ないところを助けて頂いてぇ!」
「…………」
(どぅにも胡散臭い話さぁねぇ~)
疑いしかないジト目で見つめていたが、当のラディッシュは悪者を退治した事で興奮気味に、些細な疑念も抱いた様子を見せず、
「でしょ! 凄いでしょ、ラミィ! 僕だって、やる時にはやる漢なのさぁ!」
満面のドヤ顔を見せると、
(らっ、ラミィ?!)
少女は愛想笑いの下で、内心ギクリ。
作った笑顔は崩さず、ラミウムをそれとなく見つめ、
(む、薄紫の「瞳」と「髪」に「白装束」……それに「ラミィ」ってぇまさかぁ!?)
笑いが不自然に引きつると、何かを察したラミウムが悪い顔してニヤリ。
「なるほどねぇ~。しっかし、この辺の盗賊ってぇのは、よほどのマヌケ揃いか、副業で盗賊をやってる「ハンパ者」の集まりなのかねぇ~?」
(ッ!?)
少女は内心で焦りの色を深め、
(ノォオォォーーーッ! まさかボクの正体に気付いてぇるぅううぅ?!)
しかし焦りに気付かぬラディッシュは心外そうに、
「酷いよぉラミィ! 僕だって「勇者」だよぉ! やる時はやるよぉ! 僕を選んで召喚した「天世人」の言葉とは思えないよぉ!」
「ゆっ、勇者様にぃ、天世様ぁあぁ!!?」
驚きのあまり、思わず口を衝いて出てしまった言葉を、慌てて両手で覆い隠す少女。
何か後ろめたい事があるのは明らかであったが、超絶箱入り娘のドロプウォートも単に少女を驚かせてしまったものと思い込み、凛とした表情に加えて外面良く、
「そうなのですわ。実は彼女はこう見えて、天世人様のラミウム様なのですわ。そして貴方を助けたと言う、この「顔だけ良い男」は勇者のラディッシュですわ」
ラミィ「こう見えて……」
ラディ「顔だけ……」
物言いたげなジト目を向ける二人を横目に、慄く少女はおずおずと、
「じゃ、じゃあアナタも、ま、まさかぁ……」
ドロプウォートは「待ってました」と言わんばかりのドヤ顔で以って、
「故あって誓約を交わした勇者は未だおりませんが、誓約者(※誤:誓約者候補生)のドロプウォートと申しますでぇすわ♪」
「よっ、四大貴族令嬢様ぉおっぉぉのおおぉぉおぉ?!!!」
魂が抜け出そうなほどの驚きを見せると、盗賊から守ってくれた三人の素性に大きく安堵するならいざ知らず、顔面蒼白な驚き様に、
「「ん?」」
流石のラディッシュとドロプウォートも違和感を感じて首を傾げ、
(し、しまったぁ! つい慌てぇてぇ!)
取り乱してしまった少女は急ごしらえの笑顔で、
「みっ、皆様ぁ、凄い方々でらしたんでぇすね! だから野盗をいとも簡単にぃ!」
取り繕う様に、尊崇の念を抱いた表情で、押し付けがましい程の尊敬アピールをして見せると、
「!」
ドロプウォートの眼の端が鋭くギラリ。
(や、やり過ぎたぁ?!)
少女が作り笑顔の下で冷たい汗を流すと、
「そんなに「凄く」なんてないですわぁ~~~♪」
凛然とした目尻が急激に下がり、満更でもなさげな嬉し顔に一変。
(ヨッシャーーーッ!)
少女は心の中で大きくガッツポーズ。
人々に「自分と言う存在」を認めてもらうが為に研鑽を積んで来たドロプウォート。
故に彼女は褒め言葉にめっぽう弱く、デレデレの笑顔満面、
「そこまで感動されては仕方ないですわぁ~」
「え?」
頼まれてもいないのに剣を鞘から抜き始め、
「触りだけですわよぉ~」
「へ???」
困惑する少女を前に、剣技を披露しようとし始めたが、
『止めんかぁいぃ!』
バシィ!
ラミウムが即でツッコミ。
「痛ぁあぁ~」
後頭部を擦るドロプウォートを鬼の形相で見下ろし、
「アンタはァ! 調子に乗って森を炭に変えちまったのぉもぅお忘れでかァい!」
「もっ、森を炭にぃいぃぃ?!」
慄く少女を前にドロプウォートは体裁を保とうと、言い訳がましく、
「あっ、アレは、少々チカラが入り過ぎてしまっただけで、」
「巨木をなぎ倒して森の一部を丸坊主にした事もかぁい!」
更なるツッコミに言い返す事も出来ず、
「むぅうぅうぅうぅぅううぅ!」
両頬を不機嫌にぷっくり膨らませると、
「何も初対面の方の前で「些細な失態」を上げ連ねなくても良いではありませんかぁ!」
赤面顔で逆ギレし、
「ワタクシにも「四大貴族令嬢」としてのプライドがありますのよぉ!」
「お馬鹿をお言いでないよ! アレが「些細」だってんならぁ天災のほとんどが小事になっちまうさぁね!」
「何ですってぇ!」
「何だァい!」
「ちょ、ちょっと止めなよ二人ともぉ!」
慌てふためき間に割って入るラディッシュは、少女のドン引き視線に、
(ま、マズイよ! このままじゃ村に入るのを断られちゃうかも! そしたらラミィの食事のチャンスが!)
不安が脳裏をよぎり、精一杯の笑顔(引きつり笑顔)で、
「だっ、大丈夫なんだよっ! こんな二人だけど「意外と人畜無害」だからっ!」
精一杯のフォローをしたつもりであったが、はたから聞けば火に油。言葉の選択ミス。
当然の結果のように、
『『どう言う意味(だァい・ですのォ)!!!』』
女子二人に凄まれ、
「ヒィ! ごめんなさい! ごめんなさぁい!! いごめんなさぁーーーい!!!」
頭を抱えて縮こまる、勇者。
正に、喜劇。
そんな三人の漫才を、
「…………」
物言いたげなジト目で静観する少女。
かねてより思い描いていた天世人と勇者、そして誓約者の理想と現実に、
(この人達ってホンモノなぉ?)
自身の怪しげな素性は棚に上げ、戸惑いを覚えたが、
(で、でも役割は果たさないとでぇす!)
とある意図を以って腹を括り、
「あ、あのぉ! ボクの名前は『パストリス』と言いまぁす! 皆様にお礼がしたいのでぇ是非にボクの村に来て下さぁい!」
訴えかける様に叫ぶと、女子二人に発言の真意を責められ縮こまっていたラディッシュが、愛らしい少女の前で下げに下げ続けた「男性株価」を、ここぞとばかり上げようと、
「そっ、そうなんだよぉ二人とも!」
ガッと勢いよく立ち上がり、
「パストリスさんが、お礼をしたいから村に来て欲しいってぇ!」
チカラ強く擁護して見せたが、地元民ドロプウォートは、
(不帰の森に「村がある」ですってぇ?! 聞いた事もありませんわ?)
訝し気。
しかし更なる高得点を狙うラディッシュに、彼女の懸念など気付ける筈も無く、満面の笑顔でパストリスに向き直り、
「でもパストリスさん、本当に「お礼」なんて気にしなくて良いんだよぉ。僕は、当然の事をしただけなんだしぃ、村に案内してもらえるだけで十分なんだよぉ」
少々格好つけ気味ではあるが、謙虚に謝礼を断ってみせると、
「素晴らしい考え方ですわ、ラディ!」
ドロプウォートが疑念も忘れて感動し、
「流石は「私の」日頃の教育のたまものですわ♪」
「「え…………」」
呆気にとられるパストリスとラディッシュを前に、自画自賛。
すると、
『何を言ってんだぁい、アンタはぁ』
ラミウムが小馬鹿にした笑顔でニヤリ。
「?」
振り返ると、愉快そうにニヤニヤしながら、
「コイツが、んな殊勝なタマかぁい? おおかた本音は、知らない人間たちに取り囲まれるのが「怖いダケ」なんだろぉさねぇ~」
「そぉんなぁまさかですわぁ~」
軽やかに笑い飛ばし、
「いくらラディでも「謝意を伝えたい方」に対して、そこまで臆病ではぁ、」
視線を移すと、
「…………」
無言で、スッと眼を逸らすラディッシュ。
その姿に、ドロプウォートは「ラミウムの推測」が真実であったと悟り、恨めしそうなジト目でラディッシュを見つめ、
「私の感動を、返して頂きたいですわぁ……」
「キッシッシッ」
ラミウムは楽し気に一笑い。本音が晒され、肩身狭そうにラディッシュがうつむく中、
「それよりねぇ「襲われ少女」ぉ!」
(お、襲われ少女ぉ?!)
驚くパストリスに顔を寄せ、
「アンタの村に「教会」は、あんのかい?」
「襲われ少女って、」
「イイから、在るのかい?! 無いのかぁい?!! どぉっちなんだァい!!!」
気圧され、
「えっ、あ、は、はぁい、ありまぁすぅ!」
答えると、ラミウムは少年の様な満面の笑顔でニカッと笑い、
「そぅかい♪」
寝床籠からさっそうと飛び降り、
「ほらアンタら何をチンタラしてんだぁい! さっさと準備をおし! 村に行くよォ!」
いつになく張り切る姿に違和感を持ったラディッシュが、
「何を、そんなに焦ってるの?」
急くラミウムと温度差のある呑気顔で首を傾げると、パストリスが何か思い当たった様子で「あっ!」と気付きの声を上げ、
「だからラミウム様はそんなに弱っ、」
「誰が「弱い」ってぇ!」
咄嗟に、話を途中で喰らうラミウム。
(コイツ、アタシの「気」を読んだのかぁい?!)
内心に焦りを覚えたが、表面上は怒りのイキ顔で少女の胸ぐらを掴み上げ、
「だぁ~れが弱いってぇ。アタシの目ぇ見てぇもっぺん言ってみぃ~なぁ」
「ひぃぅ~~~! 違います違いまぁすでぇすぅ!」
怯えるパストリスは半泣きで激しく首を左右に振り、
「ボクはぁそんなつもりで言ったのではぁなくぅ!」
「言い訳してんじゃないよォ!」
「ひぃう!」
一喝し、自身の額をパストリスの額に押し付け、
「舐めた事をお言いでないよ『あの同人』みたいに、ひん剥かれたいかぁい!」
「ひぃいぃ! 『あの同人』が何か分かりませぇんけどぉごめんなさいぃごめんなさぁいごぉめんなさぁーーーい!!!」
訳も分からず泣きながら許しを乞うと、ラミウムは耳元に凄みを利かせた小声で、
(これ以上、余計な事を二人に言ったらぁマジでタダじゃおかないからねぇ)
顔面蒼白のパストリスは怯えきった表情で、無言でコクコク何度も何度も激しく頷き応え、その様な密約が交わされた事など露と気付かぬ、ラディッシュとドロプウォートは、毎度の「ラミウムの癇癪」と思い込み、ヤレヤレ笑いを見合わせていた。
そんな中、ラミウムは念押しする様に、怯え顔のパストリスに睨みを利かせた一瞥くれてから手を離すと、不機嫌が嘘であったかの様な満面の笑顔に急変し、
「んじゃ村に行こうかねぇ、オマエ達ィ!」
上機嫌の気勢を張り上げ、
「チンタラしてるヤツぁ捨ててくよぉ♪」
「「「…………」」」
些か、納得いかない三人ではあったが、城を目指していた筈の一行は「鶴の一声(ラミウムのワガママ)」により、一路パストリスが暮らす村へと進路を変えた。
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