ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
58 / 894

1-58

しおりを挟む
 思わず素っ頓狂な声を上げる二人を前に、ラミウムはフッと小さく笑い、
「良いかい、パスト。アタシがアンタに与えた天世のチカラは、あくまでアンタが中世で生きる為の「枷」なのさぁね」

「枷?」

「おぅさ。アンタが、地世のチカラを飼い馴らせる様になるまでのねぇ」
「で、でぇも……」
 自信無く、不安げな表情に、
「飼い方を身に付けな」
「…………」
「そしてチカラを「使うべき時が来た」と思った時、躊躇なく「枷」を外して使うんだ。良いね?」
「はぁい……」
 返事を返しつつ、

(ボクなんかに出来るのかな……失望させてしまうんじゃ……)

 不安しかない表情に、ラミウムは満面の笑顔で以って、
「自信をお持ちぃな、パスト! アンタは、このアタシが見込んで「チカラを分け与えたオンナ」だよ!」
「え!?」
(もしかしてボクぅ、両親以外の人に初めて評価されたぁ!?)
 パストリスは曇りが晴れた様な笑顔を見せ、ラミウムもその表情に満足げな笑みを浮かべつつ、

「ただし!」

「!」
「感情任せに「地世のチカラ」を求め過ぎるんじゃないよ。下手をすると、今の姿に戻れなくなっちまうからねぇ」
「ハぁイ!」
 未来を見据える眼差しに、
「良い返事さぁね」
 横たわったまま、嬉しそうにパストリスの頭を撫でまわすと、未だ納得出来ない様子でソッポを向くドロプウォートに、

「アンタも分かったかぁい? アンタは、頭はイイが「頭でっかち」に物事を捉え過ぎ過ぎなのさぁね。目先の知識や体裁に囚われて、心の眼まで曇らせんじゃないよ」
「…………」

 しかし応えは返らない。
 するとパストリスが意を決してバッと立ち上がり、

「ドロプウォートさん!」 

 右手を差し出し、

「もしボクがまた暴走したらぁ、今度こそアナタの手でぇ、容赦なく斬って下さぁい!」
「………」

 決意を以って差し出された右手を、黙って見つめるドロプウォート。
(この子(パストリス)が良い子ですのは十分過ぎるほど分かっていますわ……ですが私は「国と民」を護る四大が一子。危険な要素があると知りながら、それを放置など……)
 内なる葛藤に苛まれていると、惑う背中を押す様に、ラディッシュが優しく微笑みながら、
「ドロプウさぁん」
 握手を促し、促されたドロプウォートも、
(ラディ……)
 心は大きく揺らいだが、
(でも……それでも、やはり私は……)
 唇の端をキュッと噛み、凛然とした表情は崩さず、

「言葉だけでなら、何とでも言えますわ」

 差出された手を握る事無く背を向け、
「少し一人にして下さいですわ」
 家から出て行ってしまった。
 握ってもらえなかった右手を胸元で握り、
「…………」
 閉ざされた玄関扉を悲し気に見つめるパストリス。

 するとそんな彼女の傍らに、ラディッシュが優しく立ち、
「納得は出来ないけど、理解はしてくれるってさ」
 微笑みに、
「……はぁい」
 不安の残る笑顔を返した途端、

 バァン!

 閉ざされたばかりの玄関扉が勢いよく跳ね開き、

「家が武装した村人たちに取り囲まれてますわァ!」

 血相を変えたドロプウォートが飛び込んで来た。
「「「!」」」
 急ぎ扉を閉め、窓辺に駆け寄るラディッシュとパストリス。
 窓から、そぉ~と外の様子を窺うと、

「「!!!」」

 ドロプウォートの言う通り、家の周囲は既に「中世人の姿となった村人たち」に、遠巻きで囲まれていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...