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パストリスの家を後にして数時間のち――
ドロプウォートを先頭に、城を目指して不帰の森をひた進む一行は、やがて少し開けた場所に出た。
ラミウムと地世の導師との関係は、未だ聞けないまま。
久々に全身で浴びた太陽の陽射しは優しく、かつ温かく、全ての憂いを消し去ってくれるようであり、晒した恥を重ねに重ね、悶々と歩いていたドロプウォートの心をも、
「何て清々しい青空ですのぉ~♪」
晴れやかな気分にし、
「ここでぇお昼といたしましょう、ですわ♪」
その屈託を感じさせない笑顔に、
「そうだね♪」
ラディッシュも笑顔を返しつつ、心の中では、
(良かったぁ~、やっ~とショックから立ち直ってくれたみたい)
小さく苦笑い、
「それに……」
自身の背に、チラリと視線をやり、
「いい加減にラミィを、ゆっくり寝させてあげたいしね」
背中では疲れ切ったラミウムが、静かな寝息を立てていた。
日頃の「勇ましい彼女」からは到底想像出来ない可愛らしい寝顔を、パストリスも見つめ、
「そうでぇすね」
笑顔で頷くと、ラディッシュは荷物を降ろし始めたドロプウォートに、
「ドロプさん、干し肉が少し減って来たから、少し多めにお願い」
「分かりましたわ♪」
ドロプウォートは笑顔を返し、掛けヒモの付いたボストンバッグ程の木箱を肩に担ぎ、森の奥へと消えて行った。
「…………」
森へ向かった背を見つめ、
(ドロプウォートさん(女性)が、狩りへ?)
不思議に思うパストリス。
この世界(中世)においては珍しい役割分担であり、違和感を覚え、
「あ、あのぉ……」
「ん? どうかしたのパストリスさん? 改まって」
「そ、その……ドロプウォートさん(女性)が……狩りにぃ?」
顔色を窺いながら尋ねると、
「そうだよ」
笑顔の即答に、
「ラディッシュさん(男性)は?」
「家事だけど?」
「え?」
「へ?」
しばし、キョトン顔で見つめ合う二人。
返答に少し困ったような顔して黙るパストリスに、何かを察したラディッシュは、
「もしかして……へん?」
「あっ! いえ! そのぉ……」
しかし、今日まで目にして来たチカラ関係を改めて思い返すと、
「…………」
(あぁ~なるほどぉ、それは確かにそぅなりますでぇすよねぇ~~~)
妙に腑に落ち、
(それに、ラディッシュさんが居た異世界では、そう言う分担もあるのかも知れないでぇすしぃ~)
自己完結し、
「いえ。アリだと思いますでぇす♪」
屈託ない笑顔で頷いて見せた。
意図しない所で(この世界における)男子力評価を下げられたラディッシュではあったが、否モテ属性の彼に「乙女心の微妙な変化」など受信出来る筈もなく、
(アリなら良いかぁ♪)
落ち込む様子も見せずに、
「ねぇ、パストリスさん」
「は、はい?」
「僕が前側に背負ってるカバンの中から、網を出してもらえる? 今、ラミィを降ろす訳にはいかなくてぇ」
「大丈夫でぇすよ」
頷きつつ、
(網?)
言われるがまま、リュックを開けて中を探り、
「これでぇすか?」
取り出すと、
「うん。それで悪いんだけど、その網の両端に付いてる紐を、それぞれ別の木の幹に括り付けてもらえるかなぁ?」
「はい……」
(日よけ? 風よけ?? それともぉ物置???)
謎は深まったが、一先ず広げて見て、
「あ! これはラミウム様が寝る時に使っていた寝床籠でぇすね!」
「うん。本当は僕がやれば良いんだけど……」
申し訳なさげな顔して、背中で熟睡するラミウムをチラと見やり、
「この格好じゃ、ちょっとねぇ」
苦笑い。
するとパストリスは、
「大丈夫でぇすよ、ラディッシュさん。ずり落ちない様に「太い枝の付け根」とか「ウロ」に引っ掛けると良いんでぇすよねぇ?」
軽やかな笑顔を返した途端、眩しい位の、
≪ありがとう、パストリスさん♪≫
スキル【キラキライケメンスマイル】が無自覚発動。
「!」
唐突にキラッキラを浴びせ掛けられ、
(はぁうあぅ!)
ボッと顔を赤らめる、新参の箱入り娘。
下落しきっていた「ラディッシュ株」が、再び高騰に転じるかと思われた矢先、
(ぼっ、ボクの理想は強い人ぉ! ボクの理想はぁ強い人ぉ!!!)
パストリスは自身の心に強く言い聞かせ、強制的に分別を取り戻すと、努めて冷静に両端のヒモをそれぞれ別の木に括り付け、上に毛布を敷いた。
「…………」
(これで良いのかなぁ……?)
完成したハンモックをしばし見つめていたが、風にそよぐ寝床籠に、
(……どんな寝心地なんだろぅ……)
不意に興味が湧いて来て、仕上がりが気になる気持ちが半分と好奇心半分(※むしろこちら側が大きい)の二つの気持ちから、恐ごわラディッシュに、
「あ……あのぉ……ずり落ちないか乗って確かめてみても……」
尋ねてみた。
当然である。
神に等しい天世人の使用する寝具に「横になりたい」と言っているだから。
ドロプウォートを先頭に、城を目指して不帰の森をひた進む一行は、やがて少し開けた場所に出た。
ラミウムと地世の導師との関係は、未だ聞けないまま。
久々に全身で浴びた太陽の陽射しは優しく、かつ温かく、全ての憂いを消し去ってくれるようであり、晒した恥を重ねに重ね、悶々と歩いていたドロプウォートの心をも、
「何て清々しい青空ですのぉ~♪」
晴れやかな気分にし、
「ここでぇお昼といたしましょう、ですわ♪」
その屈託を感じさせない笑顔に、
「そうだね♪」
ラディッシュも笑顔を返しつつ、心の中では、
(良かったぁ~、やっ~とショックから立ち直ってくれたみたい)
小さく苦笑い、
「それに……」
自身の背に、チラリと視線をやり、
「いい加減にラミィを、ゆっくり寝させてあげたいしね」
背中では疲れ切ったラミウムが、静かな寝息を立てていた。
日頃の「勇ましい彼女」からは到底想像出来ない可愛らしい寝顔を、パストリスも見つめ、
「そうでぇすね」
笑顔で頷くと、ラディッシュは荷物を降ろし始めたドロプウォートに、
「ドロプさん、干し肉が少し減って来たから、少し多めにお願い」
「分かりましたわ♪」
ドロプウォートは笑顔を返し、掛けヒモの付いたボストンバッグ程の木箱を肩に担ぎ、森の奥へと消えて行った。
「…………」
森へ向かった背を見つめ、
(ドロプウォートさん(女性)が、狩りへ?)
不思議に思うパストリス。
この世界(中世)においては珍しい役割分担であり、違和感を覚え、
「あ、あのぉ……」
「ん? どうかしたのパストリスさん? 改まって」
「そ、その……ドロプウォートさん(女性)が……狩りにぃ?」
顔色を窺いながら尋ねると、
「そうだよ」
笑顔の即答に、
「ラディッシュさん(男性)は?」
「家事だけど?」
「え?」
「へ?」
しばし、キョトン顔で見つめ合う二人。
返答に少し困ったような顔して黙るパストリスに、何かを察したラディッシュは、
「もしかして……へん?」
「あっ! いえ! そのぉ……」
しかし、今日まで目にして来たチカラ関係を改めて思い返すと、
「…………」
(あぁ~なるほどぉ、それは確かにそぅなりますでぇすよねぇ~~~)
妙に腑に落ち、
(それに、ラディッシュさんが居た異世界では、そう言う分担もあるのかも知れないでぇすしぃ~)
自己完結し、
「いえ。アリだと思いますでぇす♪」
屈託ない笑顔で頷いて見せた。
意図しない所で(この世界における)男子力評価を下げられたラディッシュではあったが、否モテ属性の彼に「乙女心の微妙な変化」など受信出来る筈もなく、
(アリなら良いかぁ♪)
落ち込む様子も見せずに、
「ねぇ、パストリスさん」
「は、はい?」
「僕が前側に背負ってるカバンの中から、網を出してもらえる? 今、ラミィを降ろす訳にはいかなくてぇ」
「大丈夫でぇすよ」
頷きつつ、
(網?)
言われるがまま、リュックを開けて中を探り、
「これでぇすか?」
取り出すと、
「うん。それで悪いんだけど、その網の両端に付いてる紐を、それぞれ別の木の幹に括り付けてもらえるかなぁ?」
「はい……」
(日よけ? 風よけ?? それともぉ物置???)
謎は深まったが、一先ず広げて見て、
「あ! これはラミウム様が寝る時に使っていた寝床籠でぇすね!」
「うん。本当は僕がやれば良いんだけど……」
申し訳なさげな顔して、背中で熟睡するラミウムをチラと見やり、
「この格好じゃ、ちょっとねぇ」
苦笑い。
するとパストリスは、
「大丈夫でぇすよ、ラディッシュさん。ずり落ちない様に「太い枝の付け根」とか「ウロ」に引っ掛けると良いんでぇすよねぇ?」
軽やかな笑顔を返した途端、眩しい位の、
≪ありがとう、パストリスさん♪≫
スキル【キラキライケメンスマイル】が無自覚発動。
「!」
唐突にキラッキラを浴びせ掛けられ、
(はぁうあぅ!)
ボッと顔を赤らめる、新参の箱入り娘。
下落しきっていた「ラディッシュ株」が、再び高騰に転じるかと思われた矢先、
(ぼっ、ボクの理想は強い人ぉ! ボクの理想はぁ強い人ぉ!!!)
パストリスは自身の心に強く言い聞かせ、強制的に分別を取り戻すと、努めて冷静に両端のヒモをそれぞれ別の木に括り付け、上に毛布を敷いた。
「…………」
(これで良いのかなぁ……?)
完成したハンモックをしばし見つめていたが、風にそよぐ寝床籠に、
(……どんな寝心地なんだろぅ……)
不意に興味が湧いて来て、仕上がりが気になる気持ちが半分と好奇心半分(※むしろこちら側が大きい)の二つの気持ちから、恐ごわラディッシュに、
「あ……あのぉ……ずり落ちないか乗って確かめてみても……」
尋ねてみた。
当然である。
神に等しい天世人の使用する寝具に「横になりたい」と言っているだから。
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