ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第二章

2-18

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 その日の夕飯時――

 不機嫌顔してテーブルを囲むドロプウォートとニプルウォート。
 ここ数日、仲が良かっただけに「唐突な謎の不和」に、男子二人が困惑顔を見合わせていると、パストリスが二人に「推しの作家でもめている」とそっと耳打ち。
 詳細についてはあえて伏せた。
 本の中身を知らない男子二人に「BL系」、「GL系」どちらが良いかでもめているなど、話す訳にはいかなかったから。
 するとターナップが憂いなく笑いながら、
「ケンカするほど気に入ったなら、二人してフルール国に行ってみたらどうっスかぁ?」
 何を言われているか分からなかったが、
 
『『はぁ?』』

 露骨にムッとした顔して振り返る女子二人。
 
「どうしてワタクシが、この様な「粗忽な女」などとぉ!」
「そりゃコッチのセリフだ、先祖返りぃ! なんでウチがこんな「堅物」と!」

 いがみ合いに挟まれる形となったラディッシュとパストリスが苦笑していると、
 
『フルールは「同人発祥の地」でスぜぇ♪』

((どぉ!?))

 同時に驚く女子二人。
 
「「どっ、「同人」てっえぇ何の話(でぇすの・だよ)!」」
 息ピッタリの動揺。
 
 パストリスが内情を漏らしたのかと思い、二人して羞恥の赤面顔で疑惑の眼差しを向けたが、
「ッ!?」
 パストリスは慌てて首を横に振り、そんな彼女をフォローするようにターナップは「隠しても無駄」と言わんばかりの笑顔で、
 
「あの店で売ってる本の九割がたは「そっち系」の本っスからぁ♪」

『『!!!』』

 もはや言い逃れは不可能と知る女子二人。
「「…………」」
 赤い顔してうつむく中、ドロプウォートがおもむろに、
「あ、貴方は「自国のこと」ですのに……何故に(私と)驚いていますのよぉ……」

『なっ!?』
(何でウチがフルールの人間だとぉ?!)
 ニプルはギョッとした顔を上げ、
 
「んなっ、何を言ってぇんのぉさぁ、先祖返りぃ!」

 隠し切れていない動揺と共に、
「うっ、ウチはぁ、ほ、放浪の、ぼ、ぼぼぉ冒険者ででぇえ国なんてぇ!」
 元より嘘が下手なのか、素人でも分かりそうな狼狽を見せると、ドロプウォートが全てを見通す審問官の様な眼差しで以て、
「先の「牛人との戦闘」の折りに貴方が見せた立ち回り、あれは以前に交流試合で見たフルール国の流派のモノでしたわ」
「うっ……」
 追及の手は緩めず、
「加えて美しすぎる貴方の太刀筋……あれは一兵卒ではなく中央の、」
「うくっ……」
 怯んだ彼女に止めを刺すが如く、
「そぅ、言うなれば「近衛」に、」
 言葉の刃は首元にピタリと当てられ、チェックメイト。
 
『あぁ~もぅ分かったよ!』

 ニプルは降参と言わんばかりに両手を上げ、そんな彼女にラディッシュは驚きを隠せず、
「じゃ? じゃあ、ニプルさんって本当にフルール国の?!」
「そぉ、そぅだよぉ悪りぃかよ! ソイツ(ドロプウォート)の言う通り、ウチはフルールの正騎士で、女王陛下付きの近衛に籍を置いてるのさぁ」
 何処か照れ臭そうに正体を明かすと、ターナップが感心しきり、
「へぇ~あの腕っ節から「只者じゃねぇ」とは思ってたが……」
 同時に、とある疑問が首をもたげ、
「そんな偉ぇ~騎士様がぁ……何しにこの村に?」
 訝し気な眼差しを向けた。

 するとニプルは自嘲気味の笑みを浮かべて「自身の髪」を指差し、
「ウチは「こんなナリ(※一般的なフルール国民と違う髪の色)」に、こんな「ガラ(荒い性格)」だからねぇ~、嫌われて国を追ん出されたのさぁ♪」
 冗談めいて吐き捨てたものの、
 
『『『『・・・・・・』』』』

 視線をスッと逸らすラディッシュ達。
 
 その眼には、気マズさがありありと浮かび、
 
((((悪い事を聞いちゃった……))))

『誰かツッコめよぉお! ホントの話みたいになっちまうだろぅ!』

 慌てて自らツッコミを入れるニプル。
 
 そんな彼女に、ラディッシュ達はハッと我に返り、
「い、いやぁ~あんまりに真に迫ってたから本当なのかとぉ思っちゃってぇ~」
「重い話ですので、あえて冗談めかして言っているのかと思いましてですわぁ~」
「びっくりしたでぇすぅ~」
「聞いちゃいけねぇ事を聞いちまったかと思ったじゃねぇかぁよ~」
 苦笑いすると、
「アンタ達は、ウチを「そう言う目」で見てる訳ねぇ」
 ニプルは冗談を交えた、恨めし気なジト目で四人を見た。
 
 気心の知れた仲となった今だから出来る「後腐れないやり取り」ではあったが、その裏で、
(あながち「全部がウソ」って訳じゃないんだけどねぇ……)
 陰りのある笑みを微かに口元に浮かべ、その「陰り」をドロプウォートは見逃さなかった。
 
 しかし、あえて口にはしなかった。
 
 似た境遇を持つ彼女には、その辛さが、苦しさが、痛いほど理解でき、触れぬ事こそ優しさであると知っていたから。
 
 気付かぬフリした呆れ口調で、
「それでぇ本当の所は何が目的ですのぉ?」
 すると彼女は不敵に笑い、
「言わなくても分かってんだろう?」
「…………」
 ラディッシュに視線を移し、
 
「え? 何?? 僕ぅ???」

 驚く彼にニプルは、
「ラディは、」
 口にしかけた何かを一旦飲み、改めて、
「オマエは「異世界勇者の生き残り」だからねぇ、各国が気に掛けるのは当たり前の話だろう?」

「こっ、このぉ僕が世界からぁ、あ、あああ、あ、あぁ!?」

 ラディッシュは言葉に出来ない緊張からカタカタと震えだし、自覚の足りない「勇者様」を宥めてすかす、ヤレヤレ笑いのドロプウォート達であった。
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