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第二章
2-20
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祖国に呆れは抱いていても「狙っている」と聞かされては黙っていられず、目の色を変えたのだが、
「おぉ~と勘違いするんじゃないよぉ、先祖返りぃ♪」
ニプルはおどけて見せながら、
「今すぐ攻め込もうとか考えての話じゃない。それにねぇ」
「それに、何ですの?」
警戒感露わな彼女に、
「狙っていのはフルールだけじゃないさ」
「!?」
(まさか「アルブル」や「カルニヴァ」までが?!)
思い至った考えに慄くと、ニプルは見透かしたように、
「以外かぁい?」
ニッと小さく笑い、
「現に、ラミウム様がお隠れにならなかったら、今ごろエルブは派兵した三国による「三つ巴の惨状の地」と化していた筈さ」
「な!?」
(なんて事ですの……ですがそれが現実……)
各国間の格差など、様々な問題はあれど、共に勇者を支え、中世を守る国としての矜持があり、結束は固いと思っていただけに、
(これでは私も含め、エルブはまるで……まるで「世間知らず」ですわ……)
落ち込みを隠せずにいた。
すると、
「その「現実を知ったうえ」で、ドロプはどうするのさ?」
「!」
天世人に生み出された身と知った後とは言え、母国と呼ぶに等しい故国の体質を変えたい気持ちは、強くあった。
しかしエルブ国での彼女の扱いは、未だ「先祖返り」。
地世の導師の襲撃を押し退けた立役者の一人として、周囲の眼が以前より改善されたのは確かであったが、未だ一部に反発が根強くあり、彼女の苦言に耳を貸すとは思えず、更に言うならば、四大貴族が一子でありながら「その責」を果たさず、勇者と旅をしている身でもある。
それら全てを鑑みれば、
「わ、私が国政に口出しする訳には……」
視線を落とすと、
『そうじゃなくてさぁ』
「へ?」
「ラディの事を言ってんのさ」
「らでぃの?」
「気になってんだろう?」
「んな! んななんあなぁなぁ何を言ってますのぉ、貴方はぁあぁ!」
赤面顔で狼狽したが、
(…………)
パストリスにも、いとも容易く見抜かれたのを思い出し、
「も、もしかワタクシって……分かり易過ぎ……ますぅのぉ?」
「大概ねぇ♪」
「ッ!!!」
笑うニプルの視線から逃れる様に、両手で赤面顔を覆い隠したが、
(!)
隠したまま、おずおずと、
「あ、貴方は……どぅでぇすのニプル……。貴方だってラディを憎からず、」
「人の事はよく見てるねぇ~」
感心半分、呆れ笑いながら、
「確かに一時期な。あんな優しいヤツは、ウチの周りに居ないしな。けどな……」
「けど?」
ニプルは笑顔を見せながらも、そこはかとなく悲し気に、
「ウチは、とうに諦めた」
「どっ、どぅしてですの?!」
「分かってんだろぅ?」
「…………」
視線を落とすドロプウォート。
頭では理解していた。
「アイツは、今もラミウム様しか見ていない」
「…………」
それを受け入れるのを、心が拒んでいた。
「それにだ」
「……それに?」
やおら顔を上げると、ニプルがケラケラ笑い、
「今さらオマエ達の間に割って入って、勝てる気もしねぇしなぁ♪」
その横顔に、
「ん? 達?」
首を傾げると、
「何だい? もしかして気付いて無かったのかい?」
「?」
ドロプウォートは両目をパチクリ、しばし考え、
『まさか「ターナップ」がぁ?!』
驚き顔に、
「…………」
一瞬黙るニプル。
黙った後、
「その発想に至るオマエさん、だいぶ(同人に)染まってるねぇ」
「のッ!!!」
衝撃を受けるドロプウォート。
固まるその姿を彼女は小さく笑い、
「パスさぁ」
『パストがぁ!?』
三度驚きつつ、
「だっ、だって、パストはっ! その、前に、それに、」
頭が混乱して言葉が出て来ない。
すると何かを察したニプルが、
「何を言われたかは知らないけどさ、それは恐らくドロプ、アンタを気遣っての事だろぉ?」
「!」
「あの子も、ラディ並みに優しいからさぁ」
パストリスの屈託ない笑顔を思い出して微笑み、
「まぁ、ウチの様に諦めるも、諦めないも、アンタ達の自由さぁ。ただ……」
思い惑うドロプウォートの背を、ポンと軽く叩き、
「強力な恋敵が「意外な身近に居る」ってのをさ、忘れない様になぁ♪」
ニプルは立ち尽くす彼女をその場に残し、宿に向かって歩き出しながら、
「ウチは「どっちの味方」って訳じゃないけどさぁ、うかうかしてっと、どっかの誰かに(ラディッシュを)持って行かれちまうよぉ♪」
手を振り去って行った。
「ニプル……」
励まされた思いで、背を見送るドロプウォート。
で、あったが、急に頭を抱え、
『いきなりその様な事を言われてぇ。今からパストにぃどの様な顔をしたら良いのでのよぉおぉおぉっぉぉぉ!』
無数の星が静かに煌めく夜空に響く、一人の少女の苦悩の咆哮。
「おぉ~と勘違いするんじゃないよぉ、先祖返りぃ♪」
ニプルはおどけて見せながら、
「今すぐ攻め込もうとか考えての話じゃない。それにねぇ」
「それに、何ですの?」
警戒感露わな彼女に、
「狙っていのはフルールだけじゃないさ」
「!?」
(まさか「アルブル」や「カルニヴァ」までが?!)
思い至った考えに慄くと、ニプルは見透かしたように、
「以外かぁい?」
ニッと小さく笑い、
「現に、ラミウム様がお隠れにならなかったら、今ごろエルブは派兵した三国による「三つ巴の惨状の地」と化していた筈さ」
「な!?」
(なんて事ですの……ですがそれが現実……)
各国間の格差など、様々な問題はあれど、共に勇者を支え、中世を守る国としての矜持があり、結束は固いと思っていただけに、
(これでは私も含め、エルブはまるで……まるで「世間知らず」ですわ……)
落ち込みを隠せずにいた。
すると、
「その「現実を知ったうえ」で、ドロプはどうするのさ?」
「!」
天世人に生み出された身と知った後とは言え、母国と呼ぶに等しい故国の体質を変えたい気持ちは、強くあった。
しかしエルブ国での彼女の扱いは、未だ「先祖返り」。
地世の導師の襲撃を押し退けた立役者の一人として、周囲の眼が以前より改善されたのは確かであったが、未だ一部に反発が根強くあり、彼女の苦言に耳を貸すとは思えず、更に言うならば、四大貴族が一子でありながら「その責」を果たさず、勇者と旅をしている身でもある。
それら全てを鑑みれば、
「わ、私が国政に口出しする訳には……」
視線を落とすと、
『そうじゃなくてさぁ』
「へ?」
「ラディの事を言ってんのさ」
「らでぃの?」
「気になってんだろう?」
「んな! んななんあなぁなぁ何を言ってますのぉ、貴方はぁあぁ!」
赤面顔で狼狽したが、
(…………)
パストリスにも、いとも容易く見抜かれたのを思い出し、
「も、もしかワタクシって……分かり易過ぎ……ますぅのぉ?」
「大概ねぇ♪」
「ッ!!!」
笑うニプルの視線から逃れる様に、両手で赤面顔を覆い隠したが、
(!)
隠したまま、おずおずと、
「あ、貴方は……どぅでぇすのニプル……。貴方だってラディを憎からず、」
「人の事はよく見てるねぇ~」
感心半分、呆れ笑いながら、
「確かに一時期な。あんな優しいヤツは、ウチの周りに居ないしな。けどな……」
「けど?」
ニプルは笑顔を見せながらも、そこはかとなく悲し気に、
「ウチは、とうに諦めた」
「どっ、どぅしてですの?!」
「分かってんだろぅ?」
「…………」
視線を落とすドロプウォート。
頭では理解していた。
「アイツは、今もラミウム様しか見ていない」
「…………」
それを受け入れるのを、心が拒んでいた。
「それにだ」
「……それに?」
やおら顔を上げると、ニプルがケラケラ笑い、
「今さらオマエ達の間に割って入って、勝てる気もしねぇしなぁ♪」
その横顔に、
「ん? 達?」
首を傾げると、
「何だい? もしかして気付いて無かったのかい?」
「?」
ドロプウォートは両目をパチクリ、しばし考え、
『まさか「ターナップ」がぁ?!』
驚き顔に、
「…………」
一瞬黙るニプル。
黙った後、
「その発想に至るオマエさん、だいぶ(同人に)染まってるねぇ」
「のッ!!!」
衝撃を受けるドロプウォート。
固まるその姿を彼女は小さく笑い、
「パスさぁ」
『パストがぁ!?』
三度驚きつつ、
「だっ、だって、パストはっ! その、前に、それに、」
頭が混乱して言葉が出て来ない。
すると何かを察したニプルが、
「何を言われたかは知らないけどさ、それは恐らくドロプ、アンタを気遣っての事だろぉ?」
「!」
「あの子も、ラディ並みに優しいからさぁ」
パストリスの屈託ない笑顔を思い出して微笑み、
「まぁ、ウチの様に諦めるも、諦めないも、アンタ達の自由さぁ。ただ……」
思い惑うドロプウォートの背を、ポンと軽く叩き、
「強力な恋敵が「意外な身近に居る」ってのをさ、忘れない様になぁ♪」
ニプルは立ち尽くす彼女をその場に残し、宿に向かって歩き出しながら、
「ウチは「どっちの味方」って訳じゃないけどさぁ、うかうかしてっと、どっかの誰かに(ラディッシュを)持って行かれちまうよぉ♪」
手を振り去って行った。
「ニプル……」
励まされた思いで、背を見送るドロプウォート。
で、あったが、急に頭を抱え、
『いきなりその様な事を言われてぇ。今からパストにぃどの様な顔をしたら良いのでのよぉおぉおぉっぉぉぉ!』
無数の星が静かに煌めく夜空に響く、一人の少女の苦悩の咆哮。
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