ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第二章

2-30

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 今日も森の中を進む六人――
 
 いつもと変わらずドロプウォートを先頭に、後に続くラディッシュ達であったが、一つ変化を上げるとすれば、体調を取り戻したハクサンが、自らの足で歩いている事であろうか。
 その「彼は」と言うと、

「はぁ~女子成分が足りないよぉおぉ~」

 五人の後ろをボヤキながらついて歩き、
(((((…………)))))
 イラッしながらも「話し相手になると余計に面倒」と思い、五人は無視して歩き続けていた。
 相手をするだけ、無駄に疲れるから。
 
 すると、急に大人しくなるハクサン。
「…………」
 前を歩く女子三人の、絶えず動き続ける尻に目を留め、
 パストリス:
(うんうん。安心安定の「合法ロリのお尻」は、キャワウィ(可愛い)いねぇ~)
 ドロプウォート:
(立派で悪くはないんだけど……お尻にも色気の無さが出ちゃってるのが残念だよねぇ~)
 ニプル:
(うん……残念……ただただ残念……ホント残念だ……)
 鍛え上げられた尻に、うつむき加減でため息を吐いた途端、

『狩りのエサにしてやろうかぁ?』

 殺意を感じる声と共に、首筋に当てられる怪しく光る刃。
 その刃の向こうには、暗殺者の様な冷徹な眼を向けるニプルが。
「あは、あは、あはははは」
 笑って誤魔化すハクサン。
 追い詰められた状況下でありながら、それでもなおイケメンスマイルを見せ、
「ぼ、ぼくぅの思ってる事が分かっちゃうなんてぇ、もしかしてぇぼくぅ事が気になるぅ?」
 そんな彼を、ニプルはキレるでもなく、憐れな者を見る眼差しで、無言で、鼻先でフッと小さく嘲笑った。

『それはヤメテぇ! それはマジで凹むからぁ!』

 半泣きで訴えるハクサンに、ラディッシュは苦笑を浮かべながら、
「思ってる事が全部口から出ちゃってたよぉ」
「へ?」
 気付けば、憤怒の形相したターナップに護られる様に、羞恥の赤面顔でお尻を抑えるパストリスと、赤鬼の様な顔して自身の尻を抑え睨むドロプウォートの姿が。
「あは、あは、あははは、ぼくぅって正直者だからぁ♪」
 笑って誤魔化したが、怒れる女子からの鉄拳制裁は不可避。
 そんな中、森の切れ間の向こうに、

『あっ!』

 体よく砦を見つけるハクサン。
「アレはフルール国の関所だよぉ!」
 あからさまに話を逸らすと、屈強な女騎士たちが警備する関所に向かって駆け出し、
「ホラぁみんなぁ早くぅ! ぼくぅに付いておいでよぉ! まごまごしてると冬が来ちゃうよぉ!」
 その露骨な「話題逸らし」には、怒り心頭であったターナップ達も毒気を抜かれ、
「ったく調子のイイ天世様っスねぇ」
 ヤレヤレ笑いを浮かべ合い、彼の後に続いた。

 しかし、
「…………」
 一人、浮かない顔はニプル。
 帰国であるにもかかわらず。

 その理由は、言わずもがな。

 母国で彼女の存在は、快く思われていなかったから。

 似た扱いを、自国で長く受け続けて来た経験を持つドロプウォートは、彼女の抱えた苦悩が痛いほどよく分かったが、
(それでも私には「お父様とお母様」がおりました……)
 自身以上の辛酸を嘗めて来たであろう彼女を思い、
(私たちが「その分の支え」になって差し上げねばいけませんですわぁ!)
 思いを新たにしつつも、呆れ顔で何かを見つめ、
(まぁ、そのぉ、彼(ハクサン)を除いて……)
 視線の先、久々となる「新たな女子たちとの出会い」に、有頂天の満面の笑顔で「門兵女子」に話しかける、デレ顔したハクサンの姿が。
 そしてフルール国と言う、新たな土地に足を踏み入れた六人は、

『『『『『『どうして?』』』』』』

 投獄された。

 現実を受け止めきれないラディッシュ。
「なっ、何か懐かしいねぇこの感じぃ♪」
 引きつり笑顔に、
「言ってる場合ですのぉおぉ?!」
 思わず苦笑いでツッコム、ドロプウォート。
 聖職者のターナップにとっても「罪人扱いで投獄」など許し難い扱われ方であり、原因を作ったと思われるハクサンにヤンキーばりのイキ顔して、
「やいテメェ、彼女たちに何を言いやがった!」
 食って掛かると、ハクサンは心外そうに両頬を不機嫌でぷっくり膨らませ、

「嫌だなぁ! ぼくぁ自己紹介しただけだけどぉ。ぼくぁ「百人の天世人のハクサンだよ」ってぇ!」

 憤慨すると、牢番の女性兵士が高笑いをしながら、

「天世様を語る「不届き者」は数々いるが、この国で「ハクサン」を語るとは、阿呆以外の何者でもないなぁ♪」

 馬鹿にした物言いに、エルブの高位の四大貴族であるドロプウォートは悔し気に、

『貴方は「この国の女王」に、いったい何をしましたのぉおぉぉお!』

 ハクサンに詰め寄りながら、
「ニプル! これはいったいどう言う事ですのぉ! 話を秘匿にしておく場合ですの!」
 するとニプルはバツが悪そうに、
「ほっ、本当のこと言うと、ウチも、その……「ハクサンのせいで陛下が不老になった」としか知らなくて……」
 その場の勢いで「知ったかぶりをした」のを暴露。
 会話が聞こえた牢番は、
「ニプルだぁ?」
 不愉快そうな顔してニプルを見つめ、
「あぁ~その頭(髪の色)は、あの「鼻ツマミ」の真似までしてんのかぁい? 馬鹿な奴等だよ。心象は最悪、こりゃ重刑確定かねぇ~♪」
「…………」
 視線を逸らすニプル。
 
 努めて無表情を貫いてはいたが、得も言われぬ「悔しさ」も滲ませていた。
 
 付き合いも長くなり、彼女の口には出さぬ「悔しさ」を感じ取るラディッシュ達。
 パストリスは、そんな彼女に優しく、そっと寄り添い、過去の自身の姿とダブらせたドロプウォートは怒り心頭、

『私達の仲間を愚弄する事は、エルブの四大が一子! このドロプウォートが許しませんでぇすわァアァ!』

 声高らかに宣言。
 事の真偽は別として、フルール国民にとって、エルブ国は目の上のたん瘤的存在。
 しかも、その国を統括する四大貴族となれば怒りは更に増し、

『エルブの四大だとォオォォッ!』

 武器を手に、鉄格子越しに一触即発。
 ラディッシュは、毎度となった「荒事の予感」に、
(はぁ~入国初日で「お尋ね者」かぁ~)
 嘆きをこぼしたが、そんな彼を尻目に、

『フルールだか何だか知らねぇが上等だぁゴラァ!』

 やる気満々、聖職者とは思えない、ヤンキー顔を見せるターナップ。

 そんなさ中、ハクサンがいきり立つ牢番の女性に、

『そんな怖い顔をしていると「美人が台無し」だよぉ♪』

 イケメンスマイルを向け、
「びっ、美人……って、調子のイイ事を言ってんなぁ!」
 彼女は満更でもない顔で怒った。
 
 ラディッシュのお陰(せい)で「イケメン耐性」が出来ているドロプウォート、パストリス、ニプルはともかく、男性は家で家事と言うお国柄に加え、男性と接する機会が過度に少ない牢番と言う職業がら、男性耐性が皆無の彼女には、ハクサン程度の「普通レベルのイケメンスマイル」でも効果てきめん。
 ハクサンは「牢番女子の戦意が萎えた」と判断するや、すかさず彼女に小声で何かを耳打ち。
 言われた彼女は一瞬戸惑いを見せたが、
「そっ、それを伝えれば良いのだな!」
「勿論♪ 約束しますよぉ♪」
 ウインクすると、彼女は慌てた様子で入り口を警備する女性兵士に何かを伝え、警備兵も慌てた様子で走って行った。
 その「ただならぬ背中」に、
「ねぇ、ハクさん……」
「何です、ラディ?」
「何を言って、何を、約束をしたの?」
 首を傾げたが、ハクサンは、
 
「今度、彼女たちと「お茶をご一緒する約束」をしたのですが……何を「理由に」かは、ナイショです♪」
 
 ニコリと笑いながら、
「ですがぁあと少しでぼくぅ達は、以前に「ぼくぉ話した通り」に、女王陛下の下へ直通で送られるでしょう」
「誤解が解けるんだねぇ♪」
「やる時ぁ、やるじゃねぇかハクサンよぉ♪」
 男子二人が手放しで喜ぶ一方、
「「「…………」」」
 一抹の不安を残す女子たち。
 ハクサンと女帝フルールの間に、何があったか不明な故に。
 
 程なく、青空の下を高速で駆け抜ける荷馬車に揺られ、風を感じるラディッシュ達。
 ハクサンは風を感じながら自慢げに、
「どぅだぁい♪ ぼくぉ言った通り、女王の下へ直通で運んでもらえただろぅ?」
 ターナップも風を感じながら満面の笑顔で、
「あぁ、そぅだなぁ♪」
 引きつり気味に、

『鉄格子付きの檻の中だけどなァ!』

 半泣きでハクサンの胸倉を掴み上げた。

 「国賓」ではなく「重罪人」として首都へ緊急移送されるラディッシュ達。
 女子たちの不安は的中。
 ラディッシュは雲一つなく、スッキリと晴れ渡った秋空を見上げ、
(僕、どぅなっちゃうんだろ……)
 嘆きを呟いた。
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