ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第二章

2-29

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 数日後の早朝――

 陽の光に照らされ、ハンモックで目覚めるハクサン。
 焚き火の周りをふと見回せば、そこにラディッシュとドロプウォートの姿だけ無く、

(こ、これは「夜這い」ならぬ「朝這い」なのでは!)

 若い男女の「秘め事」が頭をよぎり、
(これは年長者として見届け、もとい苦言を呈さねば!)
 邪な責任感から、未だ眠りの中にあるターナップ達を起こさぬように気を付けながらハンモックから降りると、
(!)
 森の奥へと消える二つの足跡を見つけ、足音を忍ばせ森の奥へ分け入った。
 
 しばし歩くと、男女の荒い息づかいが。

(こっ、これは!)

 邪な感情は拍車がかかり、足はおのずと声のする方へ。
 
 茂みの向こうから聞こえる、男女の荒い息づかいと共に、
「ハァハァ、ラディ! これ位でもぅ音を上げましたのぉ!」
「はぁ、はぁ、もぅ限界だよぉドロプさぁ~ん」
「ハァ、ハァ、もう少しですわ! もっと腰を使ってぇ!」
「はぁ、はぁ、そんなぁ~」
「ハァ、ハァ、だらしないですわねぇ!」
「はぁ、はぁ、ご、ごめん、もぅ限界ぃ!」
 そんな悩ましい声に、妄想が膨らみに膨らんだハクサンは、
(少し遅かったようだけど、どれどれ女性主導の初々しい男女の、)
 茂みから顔を覗かせ、

(!)
 
 絶句した。

 そこには、木剣を手に、汗だくでへたり込むラディッシュと、額の汗を軽く拭うドロプウォートの姿が。

 邪な期待を大きく裏切られたハクさんは、隠れ潜んでいた事も忘れて飛び出し、

『若い男女が朝から二人きりで何をやってるのさァアァ!』

 手前勝手に憤慨したが、野生動物が隠れ潜んでいる程度に思っていた二人は、さして驚きもせず、
「「朝稽古(だけど・でぇすけど)?」」
 キョトン顔。
「日々の稽古を怠り、腕を落とすは愚の骨頂ですわ♪」
「僕も、誰かを守れる位に、もっと強くなりたいから♪」
 清々しい表情で笑い合うと、思い詰めた表情のハクサンは二人の肩をガシリと掴み、
「若い男女が森の中で二人きりなら、もっと他にする事があるでしょ!」
「ほか?」
 ラディッシュは首を傾げたが、ドロプウォートは同人誌で身に付けた知識から「彼の言わんとする妄想」を遺憾無く察し、

『んなっ! 何を言い出しますのぉおぉ!』

 真っ赤な羞恥の赤面顔して、
「貴方、先にワタクシに言っていたのと話が違っ!」
 ハクサン自身から「ラディッシュに近づくな」と釘を刺された話を持ち出すと、彼はかつてないほど真剣な眼差しで、
「ドロプッ!」
「!?」
「キミに、ぼくぁ異世界で学んだ「イイ言葉」を教えてあげよう!」
「え?」
 固唾を呑んで答えを待つと、ハクサンは鬼軍曹の様な表情で、熱を過分に含んだ物言いで、

『それはソレぇ! これはコレぇ!!!』

「「…………」」

 呆れ交じりで言葉を失う二人を前に説教は続き、
「だからキミ達はもっと激しく感情を!」
 恋愛指南を始めようとしたが、

『のぉっ!?』

 突如、背後から伸びて来た三つの手に襟首掴まれ、
「!?」
 何か言おうとした彼を、三つの手は容赦なく引きずり連れ去り、森の中へ姿を消す手前で二人に手を振った。
「「!」」
 手の主はパストリスとターナップ、そしてニプルの三人。
 意味ありげな「無言の笑顔だけ」残し、三人は名残惜し気なハクサンをそのまま引きずり、森の奥へと消えて行った。
「「…………」」
 嵐のように過ぎた時間に、
「な……何だったんだろ?」
 意味が分からず立ち尽くすラディッシュと、言われた意味は理解しつつも、
「でっ、ですわよねぇ……」
 乙女の立場から分からないフリをする、少し顔の赤いドロプウォートであった。
 
 その頃、森の奥へ拉致されたハクサンは地べたに正座させられ、
『いいでぇすかぁ! 人にはそれぇぞれぇ「恋の形」と言うモノがあるでぇす!』
 合法ロリから「恋愛についてのお説教」を厳しく受けていた。
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