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第二章

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 するとそれまで黙って跪いていたハクサンが、満面の笑顔を上げ、
「久しぶりだねぇ、フルール。相変わらずキミは美しいねぇ♪」
『ッ!』
 笑顔のフルールのこめかみに浮かぶ微かな怒り。
 そんな彼女の思いを代弁するが如く、傍らのリブロンが火でも出そうな勢いで、

『貴方様が言えた義理ですかァ! 誰のせいでぇ陛下がこの様な御体にィイィ!』

 激昂すると、フルールが笑顔でそれを制し、
「!」
 ハッと我に返るリブロン。
 感情任せに怒鳴り散らしてしまった自身に気付き、

「しっ、失礼致しました陛下ぁ」

 慌てて頭を下げると、
「良いのじゃリブロンよ。怒れぬ妾に代わり、すまぬのぉ」
 変わらぬ妖艶な笑みで気遣うさ中、跪いたままのドロプウォートがニプルに小声で責める様に、
(ニプルぅ! いったいどう言う話になっていますの! 話が全く見えませんですわ!)
 ツッコまれたニプルも小声で、
((内事に疎い)ウチに聞くなっていったろぅ!)
 そんな二人にパストリスが小声で、
(女王様の前でぇモメちゃダメでぇすぅうぅ!)
(でぇもですわぁ~)
(だってさぁ~)
 押し問答。
 
 女帝とまで呼ばれる女王を前に小声でもめる女子三人に、ターナップが呆れて頭を抱え、ラディッシュがオロオロしていると、モメている理由を察したフルールは、仲良さげに見える「男女の内輪モメ」を愉快そうに「ふっふっふっ」と笑い、
「簡単な話よぉのぉ」
(((((?)))))
 変わらぬ気怠そうな妖艶な笑みで以て、

「其奴(ハクサン)が「無垢なる生娘」であった妾から、言葉巧みに「オナゴの初めて」を奪った挙句に逃げたのじゃよぉ」
(((((女王にまでぇ?!)))))
 ギョッとするラディッシュ達。

 まさに見境なし。

 しかも先に彼女が述べた「子供が出来ない体である」との告白から推察するに、原因はハクサンにあると直感し、

「「「「「…………」」」」」

 五人は、強烈な批判のジト目を向けた。
 すると流石のハクサンも「気心の知れた仲間達(※本人的に)」からの強烈な批判の視線にはバツが悪かったのか、
「い、いやぁ、だってぇ「不老のぼくぅと永遠に生きたい」なんて言い出してぇねぇ」
 余裕の笑顔の中に気マズさを滲ませながら、
「高位の存在と「不老の契約」まで交わして、代償として「他の男との交わり」を絶っちゃうからさぁ~」

(((((え!? 子が出来ないって、つまり……)))))

「その気持ちが重くて、怖くなって逃げちゃったぁ♪ だってぇ世界中の女の子たちが、ぼくぅを待ってるからねぇ♪」
 
 悪びれる様子も無く「テヘッ」と舌を出す彼に、リブロンは怒りを必死に堪えた表情で、ギリギリと歯ぎしりしながら、
「こっ、こんな「安く」、「薄っい男」にさえ引っ掛からなければァ、今ごろ陛下は御子やァ、御孫様ァ、ひ孫様ァとォ……!」
 憎しみを込めるが如くに、拳を握り固めるていると、
「あ、あのぉ、ぼくぁ一応「序列一位の百人の天世人」なんだけどぉ……」
 苦笑するハクサン。針のむしろの謁見の間で、話題の矛先を変えようと、

「そ、そう言えばフルールぅ! キミはまだ本を書いているのかい?」
『『!』』

 ギクリとした反応を見せるフルールとリブロン。
 しかし話の矛先を逸らそうと懸命なハクサンは、話を止める気配も無く、
(((((本を書いてる?)))))
 意外そうな顔するラディッシュ達を前に、
「ペンネームを「マツムシソウ」とか言ったけぇ?」

『『マツムシソウ先生ぇえぇ!?』』

 驚愕の声を上げたのはドロプウォートとニプルウォート。
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