ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第二章

2-47

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 その日の夜――

『うぅ~~~ん』

 唸り声をあげていたのはラディッシュ。
 自室の机で、
(あんなに「良い人」なのに、なんで悪評ばっかり先行するんだろぅ……)
 要所要所で他者に対する気遣いを見せる「ニプルの笑顔」を思い返し、思い悩んでいた。

(どぅすれば、みんなに「本当のニプルさん」を見てもらえるのかなぁ……)

 天井を見上げて見たが、見上げたところで「群集心理を変える妙案」など、そうそう浮かぶ筈も無く、
(僕はやっぱり無力だ……)
 雪解けの頃には「天法修行」も終わり、ラディッシュ達はフルール国から旅立つ。
 そうなれば、リブロンの様に仲間達からの信頼が厚く、女王フルールの傍らに常に立てる訳でもないニプルは、一人に逆戻り。
 それを思うと、

「何とかしてあげたいなぁ~」

 思わずにはいられなかった、そんな頃、

『クソォ面白くねぇ!』
 ドガァ!

 不機嫌声で椅子を蹴倒す「地位向上漢会」団長の男。
 団員達も困惑顔で、
「これからどうしますか、団長ぉ?」
「あのガキ(ラディッシュ)のせいでケチが付いてぇ、何処に行っても笑い者ぉ」
「これじゃ今までみたいな活動も、」
 出来ないと言いかけた時、団長がポツリと、

「(この国に居るのは)潮時かも知れねぇなぁ」

 浮かべた不敵な笑みに、
「「「「団長?」」」」
 首を傾げると、団長はおもむろに懐から黒いガラス球を取り出した。
 大きさは「握り拳」ほどであろうか。

「明日の昼間、コイツを使って「憂さ晴らし」をして、こんな国ともおさらばだ」

 ニヤケ顔で黒いガラス球を見つめたが、団員たちは訝しげな表情で、
「それって、団長がこの間、怪しげなローブ姿のヤツから買ったヤツですよねぇ?」
「本当に、そんなガラスの中に、汚染獣がしまってあるんスかぁ?」
「団長は見かけによらず「騙され易い」からぁ」
 四面楚歌に、

『うるせぇ!』
「「「「!」」」」

 団長は一喝し、
「何が出ようが出まいが構わねぇのさ! どの道この国とはオサラバするんだ! 出るモンが出て、騒ぎにでもなれば、それこそ面白ぇ結構な話じゃねぇぇぇかぁ!」
「「「「確かに!」」」」
 男たちは不敵に笑い合った。


 一夜明け――

『結局、何も浮かばなかったなぁ~』

 自嘲気味の笑みを浮かべるラディッシュの姿は、城下町にあった。

 稽古開始までの空き時間を利用して一人で町に出た彼は、
(とりあえず今は、みんなに感謝を伝える「贈り物」を買おう。その後で、何か「良い案」が浮かぶかも知れないし)
 昨日のアクセサリショップを小走りで目指した。
 その頃、城下町のとある一軒家で、

『そんな事は止めてスティンク!』

 悲鳴にも似た女性の声が上がると、学ランに似た制服を纏った「例の団体(地位向上漢会)」の構成員の一人と思しき男が、
「俺はぁ「この国」にも、「この国の体制」にも、もぅウンザリなぁんだよォ!」
 制止する女性を振り払い、
「俺たちの「本気ってヤツ」を見せてやるゥ!」
 捨て台詞を吐き部屋から飛び出すと、
「待ってぇ!」
 女性も後を追い、部屋から駆け出した。

 不穏な空気の足音がヒタヒタと迫る中、それに気づく筈も無い町の人々。
 近づく「祭り」に向け、家を彩り豊かに、煌びやかに飾り立てるのに余念なく、町は「おとぎの国」の様相を呈していた。

 まるで絵本の中を駆けている様な気分のラディッシュ。
 浮かれ気分、そのままに、

『約束通りに来ちゃいました♪』

 笑顔を見せたのは、先日立ち寄った露店。
「本当に来てくれるとは、嬉しいねぇ♪」
 女店主は満面の笑顔で迎い入れ、そんな彼女も、店も、町の雰囲気に合わせて着飾っていて、
「凄く似合ってますよ♪」
「よしとくれよぉ、おだてたって値段は負けないよ♪」
「アハハハ。バレました♪」
 笑い合っていると、

ドォオオオオォッォオォーーーーーーンッ!!!

 突如、爆発音と地響きが。

「何だい?! 何事だぁい?!!!」

 店主が軒先から窺い、ラディッシュは胸を駆ける不穏な感覚に、
(この感じは汚染じゅ……違う、もっと濃い……これは……)
 エルブ国の惨劇が脳裏をよぎり、

(地世のチカラだぁ!)

『おばさん! 荷物をまとめて早く逃げてぇ!』

 緊急避難を促すが先か、音がした方から、

『みんな逃げろぉおぉ! 化物だぁあぁっぁぁぁぁあああぁ!!!』

 近づく祭りに浮かれ気分であった人々が血相を変え、ラッシュ時の駅のホームの様な怒涛の流れで逃げて来た。
 正に天国から地獄。
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