166 / 896
第二章
2-49
しおりを挟む
彼はミノタウロスから数メートル離れた所に女の子を降ろし、
「大丈夫? 痛い所とか無い?」
優しい声に、
「うわぁあっぁぁぁぁああぁん!」
彼女は安堵したのか、堰を切った様に泣き出してしまった。
女の子の涙に、
「えっ!? えとぉ! そのぉ!」
ただただ狼狽するラディッシュであったが、いつまでもその場に留まっている訳にはいかない。
何故なら、幼女にまで拳を振るう「暴虐なミノタウロス」の足元には、彼女の母親が残されていたのだから。
(この場から全員が助かる方法は……)
考えてみても答えは一つしかない。
(戦って勝つ以外に!)
ラディッシュは「ラミウムの加護」と、今日までの「修練」を胸に、強大なモンスターに恐怖する心を抑え込み、
「お母さんを助けて来るから、ここで待っててね♪」
精一杯の笑顔を「泣きじゃくる女の子」に残すと、
(こっ、怖い、逃げたい、第一僕なんかが勝てるのぉ!?)
不安の芽は次々、矢継ぎ早に、湧くが如くに生まれたが、
(それでも!)
迷いの全てを振り払う様に、全力で駆け出した。
まるで自身を「一本の矢」と化す様に。
『ブフォア!』
ラディッシュを敵と見定め、走り出すミノタウロス。
両者の距離が瞬く間に縮む中、
(思い出せ! 思い出せぇ!! 稽古で学んだ全てを!!!)
彼はドロプウォート達との稽古を走馬灯のように思い出しながら、
(ッ!)
遂に交差、剛腕が放つ初手を、
(うくっ!)
何とか回避。
(こうじゃない! 回避はもっと細かく! 大きく避けたら反撃に結び付かない!)
学んだことを十二分に活かし、次々繰り出される攻撃を、徐々に鋭さを増し回避していき、
(ここだァ!)
初の一太刀を脇腹に浴びせた。
しかし、
「なッ?!」
鋼の様な筋肉で覆われたミノタウロスには、かすり傷の程度。
『ボァファァアァ!』
怒りを増しただけで、
(攻撃も雑にしちゃダメだ! もっと鋭くぅ! より鋭利にぃいぃ!)
その姿を、露店の壁に座らされた警備隊が痛みに顔を歪めながら、
(す、すごい……)
驚き、感嘆を以て見つめる先で、攻撃の回転数を際限なく上げて行くラディッシュ。
(もっと! もっとぉ!! もっと早くゥ!!!)
回避と攻撃が同時に行われ、ミノタウロスに防御の間を与えず、四方八方から高速で次々斬り掛かり、刃が無数に描く「白き光の残像」から、「技のイメージと文字のイメージ」が脳内リンク。
≪千桜乱舞(せんおうらんぶ)!≫
彼の体が、剣が、斬撃が、「天法の前小節」すら無しに白き眩き輝きを放ち、「剣技」は「天技」へと昇華。
返す刃は一瞬とも思える速さで、無数の「白き花弁」を思わせる残像を残しミノタウロスの全身を斬り刻み、ラディッシュが動きを止め、
「…………」
身構えた刹那の無音の後、
「ブフォッ!」
ミノタウロスは短く小さな「最期の悲鳴」を漏らし、全身から血を噴き出し生命活動に終わりを告げた。
「な…………」
声が出ない警備隊隊員。己の目を疑う光景を目の当たりにし。
しかし、彼女が「勝利の驚き」の余韻に浸る間もなく、暴れていた他のミノタウロス達は、仲間が殺されたのを悟り、
『『『『ブフォアァアアァァ!!!』』』』
猛り狂い駆け、続々集まって来た。
迫るその様は、まるで怒れる山々。
警備員隊員の彼女は苦痛に顔を歪めながら絶望感に苛まれ、
「いっ、いくら何でも多過ぎだ……」
それでも職務を全うしようと、
「女の子を連れて逃げるんだぁーーーッ!」
叫び、立ち上がろうと試みるも、
「クッ!」
深手を負った体は言う事を聞かず、動く事さえ叶わない。
彼女以外の隊員も未だ姿を現さず、
(他の隊員は何故来ない! 避難誘導に手間取っているのかッ!?)
「どうしたらぁ良いんだァ!」
苛立ちと焦りを覚え、迫るミノタウロス達を口惜し気に睨んだが、
「なッ!?」
そんな彼女の両眼は何かを目撃し、驚愕で見開いた。
「大丈夫? 痛い所とか無い?」
優しい声に、
「うわぁあっぁぁぁぁああぁん!」
彼女は安堵したのか、堰を切った様に泣き出してしまった。
女の子の涙に、
「えっ!? えとぉ! そのぉ!」
ただただ狼狽するラディッシュであったが、いつまでもその場に留まっている訳にはいかない。
何故なら、幼女にまで拳を振るう「暴虐なミノタウロス」の足元には、彼女の母親が残されていたのだから。
(この場から全員が助かる方法は……)
考えてみても答えは一つしかない。
(戦って勝つ以外に!)
ラディッシュは「ラミウムの加護」と、今日までの「修練」を胸に、強大なモンスターに恐怖する心を抑え込み、
「お母さんを助けて来るから、ここで待っててね♪」
精一杯の笑顔を「泣きじゃくる女の子」に残すと、
(こっ、怖い、逃げたい、第一僕なんかが勝てるのぉ!?)
不安の芽は次々、矢継ぎ早に、湧くが如くに生まれたが、
(それでも!)
迷いの全てを振り払う様に、全力で駆け出した。
まるで自身を「一本の矢」と化す様に。
『ブフォア!』
ラディッシュを敵と見定め、走り出すミノタウロス。
両者の距離が瞬く間に縮む中、
(思い出せ! 思い出せぇ!! 稽古で学んだ全てを!!!)
彼はドロプウォート達との稽古を走馬灯のように思い出しながら、
(ッ!)
遂に交差、剛腕が放つ初手を、
(うくっ!)
何とか回避。
(こうじゃない! 回避はもっと細かく! 大きく避けたら反撃に結び付かない!)
学んだことを十二分に活かし、次々繰り出される攻撃を、徐々に鋭さを増し回避していき、
(ここだァ!)
初の一太刀を脇腹に浴びせた。
しかし、
「なッ?!」
鋼の様な筋肉で覆われたミノタウロスには、かすり傷の程度。
『ボァファァアァ!』
怒りを増しただけで、
(攻撃も雑にしちゃダメだ! もっと鋭くぅ! より鋭利にぃいぃ!)
その姿を、露店の壁に座らされた警備隊が痛みに顔を歪めながら、
(す、すごい……)
驚き、感嘆を以て見つめる先で、攻撃の回転数を際限なく上げて行くラディッシュ。
(もっと! もっとぉ!! もっと早くゥ!!!)
回避と攻撃が同時に行われ、ミノタウロスに防御の間を与えず、四方八方から高速で次々斬り掛かり、刃が無数に描く「白き光の残像」から、「技のイメージと文字のイメージ」が脳内リンク。
≪千桜乱舞(せんおうらんぶ)!≫
彼の体が、剣が、斬撃が、「天法の前小節」すら無しに白き眩き輝きを放ち、「剣技」は「天技」へと昇華。
返す刃は一瞬とも思える速さで、無数の「白き花弁」を思わせる残像を残しミノタウロスの全身を斬り刻み、ラディッシュが動きを止め、
「…………」
身構えた刹那の無音の後、
「ブフォッ!」
ミノタウロスは短く小さな「最期の悲鳴」を漏らし、全身から血を噴き出し生命活動に終わりを告げた。
「な…………」
声が出ない警備隊隊員。己の目を疑う光景を目の当たりにし。
しかし、彼女が「勝利の驚き」の余韻に浸る間もなく、暴れていた他のミノタウロス達は、仲間が殺されたのを悟り、
『『『『ブフォアァアアァァ!!!』』』』
猛り狂い駆け、続々集まって来た。
迫るその様は、まるで怒れる山々。
警備員隊員の彼女は苦痛に顔を歪めながら絶望感に苛まれ、
「いっ、いくら何でも多過ぎだ……」
それでも職務を全うしようと、
「女の子を連れて逃げるんだぁーーーッ!」
叫び、立ち上がろうと試みるも、
「クッ!」
深手を負った体は言う事を聞かず、動く事さえ叶わない。
彼女以外の隊員も未だ姿を現さず、
(他の隊員は何故来ない! 避難誘導に手間取っているのかッ!?)
「どうしたらぁ良いんだァ!」
苛立ちと焦りを覚え、迫るミノタウロス達を口惜し気に睨んだが、
「なッ!?」
そんな彼女の両眼は何かを目撃し、驚愕で見開いた。
0
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
婚約破棄から50年後
あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる