ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-1

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 穏やかで暖かな太陽の光が降り注ぐ青空の下、巨木の枝で羽を休める小鳥たちは美声を奏で、森に目を移せば、小型の動物たちが春のうららかさを喜ぶように駆けまわり、花たちも、美しさを競い合う様に咲き誇っている。
 総じて言うならば、平和な春の日常である。
 しかし、そんな安穏をぶち壊す、
 
『テメェ! ざけんじゃないサァ!』
『どうしてくれるんだぁゴラァ!』

 聞き覚えのある、二つの金切り声が。
 一斉に逃げ出す動物たち。
 その間を、
 
『アハハハ♪ 捕まえてごらぁ~ん♪』

 付き合いたての彼女から逃げる「彼氏の如き口振り」で駆け抜けるのは、ハクサン。
 今度は何をしでかしたのか、
 
「「待てやァ、この「種蒔き男」ォ!」」

 鬼の形相して追い掛けていたのはターナップとニプルであったが、そんな三人の背に、
「何だか懐かしいね、こう言うの~♪」
「でぇすでぇすねぇ~♪」
 少し遅れて眺め歩くのは、ラディッシュとパストリス。
 生温かな眼差しで見つめていると、
 
「何を呑気な感想を述べていますのぉ、二人してぇ。またもや「野宿確定」なのでぇすわよぉ」

 呆れ声を漏らしたのはドロプウォート。
 ここは国境と国境の間に存在する、国同士の協定により造られた、幅数キロにも及ぶ「非武装・否干渉」の森林地帯。
 フルール国の国境を出た六人は予定通り「アルブル国」を避け、一路「カルニヴァ国」を目指していたのであった。
 一国を迂回するが故に旅は長いモノとなる為、消耗品や、体力回復などを目的に、公然的不法で点在する村の一つへ立ち寄る筈であったのだが、ここでもフルール国入国前と同様に、姿を消していたハクサンが複数(大多数の)女性にちょっかい。
 今回は女性たちのみならず、不法村の無法者の「父親」や「夫」、「彼氏」等々荒くれた漢達も、もれなく参戦し、前回以上に追われる身となり、その結果の今であった。
 唯一の救いは前回と違い、今が「冬ではない事」くらいであろうか。

 カルニヴァ国に着くまで「野宿な予感」に、
≪ハクサンを抱えている以上は仕方がない≫
 とも思うラディッシュ達ではあったが、その反面「以前よりもの長旅」に、女性陣には並々ならぬ懸念も。
 それは、
 
≪お風呂に入れない……≫

 流石に雪解け水が交じりキンキンに冷えた「春先の川での水浴び」は、命の危険を感じるから。
 だからと言って「意中の男子(ラディッシュ)」を前に不潔で居るのは乙女心が許さず、ニプルの過剰な怒りも、その事に端を発してであった。
 ターナップの怒りに関しては、そもそもが「硬派と軟派」でソリが合わず、苛立っていただけ。自覚なく思いを寄せるパストリスを、屋根のある所で休ませてあげたかった気持ちもありつつ、

『オメェのせいで(カルニヴァ国に)着くまで野宿だったどぉーすんだァ、ゴラァ!』

 激昂して追い掛ける彼から、
「アハハハハ。「オメェ」とはヒドイなぁ♪ ぼくぁ序列一位の百人の天世人だよぉ♪」
 笑顔で逃げるハクサンであったが、
 
(…………)

 急にビタリと足を止め、
 
「あ?!」

 追い着いたターナップが、皮肉交じりの笑みで、
「んだぁ? もぅ燃料切れかぁ?」
 こめかみに怒りを滲ませながら、
「そんならぁ詫びの一つでも入れて、」
 嫌味を言おうとしたが、
 
「ッ!」

 彼はハクサンが足を止めた理由を知る。
 追い着いたニプルも何かに気付き、
「タープ!」
 緊張感を纏った声を上げると、
 
「分かってる!」

 かつて感じた事の無い「異質な気配」に、
 
「何か……何か近づいて来やがる……」

 息を呑んだ。
 百人の天世人序列一位ハクサンと共に、未だ姿も見えていない「何か」に鋭敏に反応出来たのは、フルール国での修業の成果の賜物か。
 そこへ
 
 『誰か来るよ!』

 ラディッシュが駆けつけ、
「六人だと思う!」
 続けて駆けつけたドロプウォート、パストリスが、
「分かりますの、ラディ?!」
「スゴイでぇすぅ……」
 感嘆を漏らす中、ラディッシュの表情がいつになく険しい物に変わり、
 
『みんな油断しないで!』

「「「「?!」」」」

「僕の中のラミィのチカラが「油断するな」って言ってる気がする!」

「「「「ッ!」」」」

 先陣を切る形になっていたターナップとニプルが気配の近づく方に身構えた途端、

 シャラン! シャラン! シャラン!

 鈴の音のような音が複数、聞こえ始め、

「「「「「!」」」」」

 やがて森の奥から姿を現したのは、錫杖を手にした白装束の一団。
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