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第三章
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その日の夜――
暗がりに乗じて、教会に侵入する何者か。
灯りが落とされ、ひと気が無くなった礼拝堂の先、主祭壇に足音を忍ばせ近づく。
そこには、触れる事を許さぬ柵に四方を護られ鎮座する、直径十五センチほどの、淡い光を放つ水晶にも似た真球の鉱石が。
村の「大切な御神体」であるのは誰の目にも明らかであったが、何者かは躊躇う事なく柵を乗り越え、無造作に球を手にし、
(コイツを持ちだして奴らに渡せば、俺は汚染獣に襲われる事も無く大金持ちだぁ♪)
窓から差し込む月明りに、男が下卑た笑みを浮かべたその頃、
『そこまでするなど私は聞いてなァい!』
声を荒げたのは現王カルニヴァの、異母の弟ビフィーダ。
ひと気の無い、薄暗いとある一室で苛立ちを露わにすると、まるで部屋の闇に紛れているかの如く姿を隠す何者かが、
「革命は次の段階に入ったのですよ、ビフィーダ殿下」
闇にいざなう、男の仄暗い声。
「しかし!」
何事かに対し、異を唱えようとすると、
「すでに賽は投げられたのです」
静かなれど「決意を求める物言い」に、
「…………」
しばし黙するビフィーダであったが、やがて重々しく口を開き、
「そ……それは本当に……「アルブリソ卿」の指示……なのだな……」
「御意にございます」
即応に、
「……分かった。ならば、私も覚悟を決めよう」
決心を口にこそしたが、その心の内では、
(兄の失態と失脚を狙っての「謀の数々」ではあったが……今までと比較にならないコレを決断して、本当に良かったのか……)
惑いを抱き、
(村ごと、勇者一行を汚染獣に襲わせるなど……)
招くであろう惨劇に、自らが下した冷酷な決断に、恐怖して小さく身震いした。
その時、
『そこに居るのは誰ですか!』
毅然とした声と共に、薄暗い教会内で、右手に宿した「天法の灯り」を掲げたのは、村の司祭。
「やべぇ!」
焦りの声を上げた不法侵入の男は、向けられた灯りを手で遮り逃げ出そうとしたが、暗がりに慣れた目で「天法の輝き」を直視してしまったが故に目が眩み、柵に足を取られ、
「うわぁ!」
ド派手にこけ、こけた拍子に男の手から離れ宙を舞う、御神体の球。
『あぁ!』
悲鳴にも似た声を上げる司祭。
暗がりでも血の気が引いたのが分かる彼の目の前で、球は地に落ち、
パァーーーン!
無情にも、破裂するが如く粉々に砕け散り、
『何て事をぉおぉ!!!』
嘆き叫ぶ彼を尻目に男は一目散、その場から脱兎のごとく逃走し、
「ヤベェヤベェ! この村にはもぅ居らんねぇ!」
村からも飛び出し、
(早ぇとこ街道に出ちまえば、今ならまだ汚染獣にも!)
出くわさないと思った矢先、
(!?)
男の思考は終わりを遂げた。
夜闇の中から不意に現れた、汚染獣の一撃で。
屠った男の血を鋭い爪先から滴らせ、赤黒い両眼を闇に光らせながら、
『グゥルゴォアァアァァアァ!!!』
雄叫びを上げる汚染獣。
その背後の森の奥には、同じ光を放つ数え切れないほどの目が。
村は、既に包囲されていた。
まるで示し合わせていたかのように集まっていた、汚染獣たちによって。
その頃、ラディッシュ達は宿の大部屋で明朝の出発に備え、談笑を交えながら準備作業をしていたのだが、
「「「「「「ッ!」」」」」」
異変を素早く察知し、顔色を急変させた。
しかし、
「?」
気付けぬプルプレア。
緊張を纏った表情に急変したラディッシュ達に、
「ど、どうかしたのか、みんな揃って?」
少々気圧されたが、ハッと何かに思い至ると冗談めかして、
「もしかしてぇ、自分を脅かしてるつもりかぁ?」
笑って見せたが、ラディッシュは余談許さぬ表情のまま、
「汚染獣の群れが来るよ」
「…………」
それでも、現実感が持てないプルプレア。
手の込んだ演技とでも思ったのか「ハハハ」と軽く笑い、
「この村は御神体で護られてるんだろぅ? ならぁラディッシュが昼間に心配してた話なんて、そうそう簡単に、」
起きる筈が無いと言おうとした矢先、宿の外から、
カァンカァンカァン! カァンカァンカァン!
けたたましい半鐘の音と同時、
『汚染獣の群れが四方八方から来るぞぉおぉぉおぉぉぉおぉ!』
物見櫓からと思われる男の絶叫が、穏やかな夜更けを迎えつつあった村に響き渡った。
暗がりに乗じて、教会に侵入する何者か。
灯りが落とされ、ひと気が無くなった礼拝堂の先、主祭壇に足音を忍ばせ近づく。
そこには、触れる事を許さぬ柵に四方を護られ鎮座する、直径十五センチほどの、淡い光を放つ水晶にも似た真球の鉱石が。
村の「大切な御神体」であるのは誰の目にも明らかであったが、何者かは躊躇う事なく柵を乗り越え、無造作に球を手にし、
(コイツを持ちだして奴らに渡せば、俺は汚染獣に襲われる事も無く大金持ちだぁ♪)
窓から差し込む月明りに、男が下卑た笑みを浮かべたその頃、
『そこまでするなど私は聞いてなァい!』
声を荒げたのは現王カルニヴァの、異母の弟ビフィーダ。
ひと気の無い、薄暗いとある一室で苛立ちを露わにすると、まるで部屋の闇に紛れているかの如く姿を隠す何者かが、
「革命は次の段階に入ったのですよ、ビフィーダ殿下」
闇にいざなう、男の仄暗い声。
「しかし!」
何事かに対し、異を唱えようとすると、
「すでに賽は投げられたのです」
静かなれど「決意を求める物言い」に、
「…………」
しばし黙するビフィーダであったが、やがて重々しく口を開き、
「そ……それは本当に……「アルブリソ卿」の指示……なのだな……」
「御意にございます」
即応に、
「……分かった。ならば、私も覚悟を決めよう」
決心を口にこそしたが、その心の内では、
(兄の失態と失脚を狙っての「謀の数々」ではあったが……今までと比較にならないコレを決断して、本当に良かったのか……)
惑いを抱き、
(村ごと、勇者一行を汚染獣に襲わせるなど……)
招くであろう惨劇に、自らが下した冷酷な決断に、恐怖して小さく身震いした。
その時、
『そこに居るのは誰ですか!』
毅然とした声と共に、薄暗い教会内で、右手に宿した「天法の灯り」を掲げたのは、村の司祭。
「やべぇ!」
焦りの声を上げた不法侵入の男は、向けられた灯りを手で遮り逃げ出そうとしたが、暗がりに慣れた目で「天法の輝き」を直視してしまったが故に目が眩み、柵に足を取られ、
「うわぁ!」
ド派手にこけ、こけた拍子に男の手から離れ宙を舞う、御神体の球。
『あぁ!』
悲鳴にも似た声を上げる司祭。
暗がりでも血の気が引いたのが分かる彼の目の前で、球は地に落ち、
パァーーーン!
無情にも、破裂するが如く粉々に砕け散り、
『何て事をぉおぉ!!!』
嘆き叫ぶ彼を尻目に男は一目散、その場から脱兎のごとく逃走し、
「ヤベェヤベェ! この村にはもぅ居らんねぇ!」
村からも飛び出し、
(早ぇとこ街道に出ちまえば、今ならまだ汚染獣にも!)
出くわさないと思った矢先、
(!?)
男の思考は終わりを遂げた。
夜闇の中から不意に現れた、汚染獣の一撃で。
屠った男の血を鋭い爪先から滴らせ、赤黒い両眼を闇に光らせながら、
『グゥルゴォアァアァァアァ!!!』
雄叫びを上げる汚染獣。
その背後の森の奥には、同じ光を放つ数え切れないほどの目が。
村は、既に包囲されていた。
まるで示し合わせていたかのように集まっていた、汚染獣たちによって。
その頃、ラディッシュ達は宿の大部屋で明朝の出発に備え、談笑を交えながら準備作業をしていたのだが、
「「「「「「ッ!」」」」」」
異変を素早く察知し、顔色を急変させた。
しかし、
「?」
気付けぬプルプレア。
緊張を纏った表情に急変したラディッシュ達に、
「ど、どうかしたのか、みんな揃って?」
少々気圧されたが、ハッと何かに思い至ると冗談めかして、
「もしかしてぇ、自分を脅かしてるつもりかぁ?」
笑って見せたが、ラディッシュは余談許さぬ表情のまま、
「汚染獣の群れが来るよ」
「…………」
それでも、現実感が持てないプルプレア。
手の込んだ演技とでも思ったのか「ハハハ」と軽く笑い、
「この村は御神体で護られてるんだろぅ? ならぁラディッシュが昼間に心配してた話なんて、そうそう簡単に、」
起きる筈が無いと言おうとした矢先、宿の外から、
カァンカァンカァン! カァンカァンカァン!
けたたましい半鐘の音と同時、
『汚染獣の群れが四方八方から来るぞぉおぉぉおぉぉぉおぉ!』
物見櫓からと思われる男の絶叫が、穏やかな夜更けを迎えつつあった村に響き渡った。
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