ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-46

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『ハクサン様ぁ! その様な事が可能なのですかぁ!』

 事情を知らぬカルニヴァが身を乗り出すと、ハクサンは鼻に掛けた自慢顔で、
「可能だよぉん♪」
「なんと……流石は、序列一位の天世さま……」
 感嘆を漏らす彼を前に、
 
「まぁねぇ~♪」

 普通レベルのイケメンスマイルで前髪をたなびかせたが、

((((((自分は出来ないクセに……)))))

 心の中で一斉ツッコミのラディッシュ達。

 するとカルニヴァは、
「ですが、身代わりを立てるのは可能として……」
 横たえたままのプルプレアに視線を落とし、
「彼女の治療は、如何に行えば良いのか……」
 自責の念に駆られた表情をすると、
 
『じゃぁ~ん! ここで問題でぇす司祭のタープくぅん!』

 笑顔のハクサンがターナップを指差し、
「誰が「タープくぅん」だ! てぇか、人に指差してんじゃねぇ!」
 ターナップが憤慨するも、彼はどこ吹く風で、
 
「飲み物が空になった、さぁキミならぁどうするぅ???」

「相変わらず人の話を聞いちゃいねぇ」

 ムッとしながらも、
「んなぁモン、空になったんなら、注ぎ足せば……」
((((((((((注ぐっ?!))))))))))
 口にしかけたターナップ本人のみならず、ラディッシュ達も驚きを隠せず、

「そっ、そんな事が出来るのぉ、ハクさぁん!?」

 声を上げると、ハクサンは再び普通レベルのイケメンスマイルで、
「可能だよぉん♪」
 前髪をたなびかせたが、

『ただし!』

((((((((((ただし?!))))))))))

 固唾を呑んで答えを待つ一同を前に、
「元には戻せないけどねぇ♪」
((((((((((え?))))))))))
「だって考えてもみなよぉ。中世の民の「今の個人」を形作ってるのは、生まれた瞬間から受け続けた「天世の恩恵の差」と、少なからず受け続けた「地世のチカラの差」だよ? それが両方いっぺんに空っぽになっちゃった人に「新たに注ぎ直した」として、配合量が違うのに同じになる訳がないじゃない?」
 それは彼女が息を吹き返したとして、別人になっている可能性を意味し、
 
((((((((((…………))))))))))

 本人の同意も無し、その様は過酷な運命を「一方的に背負わせて良いものか」と、誰もが思い惑っていると、

『構いませぬ』

((((((((((!))))))))))

 声を上げたのはカルニヴァ王。
 驚くラディッシュ達を横目に、
「目覚めた彼女が抱くであろう「怒り」、「悲しみ」、「憎しみ」その他、全ての負の感情はオレが受ける。それが……それがオレに出来る、彼女に対する贖罪」
 苦悩に満ちた表情で視線を落とし、
「どの道、身代わりを使っての刑が執行されれば、彼女が「完全に戻った」として、この国に居場所は無い……」
 言葉尻をすぼめると、

『目覚めた彼女は僕が貰っていきます』

「なっ!?」

 ラディッシュの思い掛けない言葉に驚くカルニヴァであったが、プロポーズと紛う物言いに対し、彼以上に、
 
『『『『「僕が」ぁ、貰って行くぅ?!』』』』

 怒りを以てラディッシュを見下ろすドロプウォート、ニプル、そしてパストリスとターナップ。
 女子三人は嫉妬から、ターナップは「お嬢の純情を差し置いてか」と、批判の眼差しを一身に浴びる彼であったが、本人的には、

≪みんなの同意もなしに勝手に決めて、気を悪くさせちゃった!?≫

 独断専行に気分を害したと、思い違い。
 慌てに慌て、

「ぼっ、僕たち! 僕たち、ねぇ!」

 宥める様に訂正すると、
「当然ですわぁ♪」
「当たり前なのでぇすぅ♪」
「ウチらは仲間を見捨てたりしないさぁ♪」
「当然ッスよ♪」
 ドロプウォート達はドヤ顔を見せた半面、

(((求婚染みた物言いが気には入らないけどぉ)))

 そんな中、話にすっかり蚊帳の外であったハクサンが、待ちくたびれた様な辟易顔して、
「ハイハイハイハイ茶番はそこまでぇ~、彼女を蘇生させますよぉ~」
 手を叩いて指揮棒を振るうと、嫉妬の炎が沈下しきれていない女子三人は、

『『『何を上から目線で仕切って(ますのぉ・ますでぇすぅ・やがんのさぁ)!』』』

 すり潰しそうな「怒れる眼光」でハクサンを見下ろし、見下ろされた彼は冷や汗を垂らしながら、
「あ、あのぉ……ぼくぁ一応、百人の天世人の序列っ」
『『『はぁ?!』』』
「いえ、何でもないです……」
 小さく身を縮め、

「そろそろ始めましょうかぁ?」

 お伺いを立て、その様子に思わず苦笑するラディッシュ、ターナップ。
 そして、
(この御方は、本当に序列一位の「ハクサン様」なのだろうか……)
 一抹の不安を抱くカルニヴァ王であった。
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