ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-11

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 村を目指しての移動を開始するラディッシュ達――

 困惑顔して歩くパストリス、ニプル、カドウィード、ターナップ、ハクサン。
 その背後には、屈託ない満面の笑顔の幼子二人を間に挟んで、手をつなぎ歩く、ドロプウォートとラディッシュの姿が。

 日頃の凛とした彼女は何処へやら、浮かれた顔して歩くドロプウォートと、正面からチクチクと刺さり来る、女子組からの「物言いたげなチラ見」に、バツが悪そうな笑顔を見せるラディッシュ。
 しばしの間は笑顔で誤魔化し歩いていたが、流石にいたたまれなくなり、

「む、村に着く前に、ちょ、ちょっと軽い食事にでもしようよぉ♪ 小さい子も居ることだしぃ、大人の速さで歩き続けるのはちょっとさ♪」

 体よく休憩を提案し、針のむしろからの脱却を画策した。
 当然の如く、ドロプウォートは少々残念そうではあったが、
「確かに二人が疲れてしまいますわね」
 思い改め同意すると、仲睦まじい親子の様な姿を見せつけられ続けた女子組も、

「でぇすでぇすねぇ♪」
「そぅさねぇ♪」
「そうだ、ですわねぇ♪」

 一先ずの親子状態解除に、笑顔を見せた。

 
 食事の準備を始めるラディッシュ達――

 いつも通り、ターナップが竈の準備に、ラディッシュの調理補助であるパストリスを除いたドロプウォート達女子組が狩りに出かけようとすると、
「今回は、狩りは大丈夫だよぉ」
 ラディッシュが笑顔で呼び止め、
「あり物で作った軽食で済ませようと思うから」
 するとキーメとスプライツが興味津々、

『『パパが作るなぉ?!』』
「う、うん」

 少々気圧され気味にではあるが、笑顔で頷きはしたものの、
(やっぱり「パパ呼ばわり」は慣れないなぁ、身に覚えも無いのにぃ……)
 内心で苦笑しながら、
「美味しく出来なかったらゴメンねぇ♪ と、言う事で、」
 竈作りの真っ最中であるターナップに視線を移し、

「タープさん」
「ん?」

 手を止め振り向いた彼に、
「竈作りはドロプさん達にお願いして、タープさんには「コレ」を、お願いします」
 箸が刺さった、両手サイズの木鉢を差し出した。
「ソレはなんスか、ラディの兄貴?」
 受け取ると、中には卵数個分の卵白が。
(?)
 意味が分からず、

「え、えとぉ……兄貴は俺に、コレをどうしろと???」

 向けるキョトン顔に、
「僕が「イイよ」って言うまで、ひたすらかき混ぜて欲しいんだ」
 それを聞いた調理補助のパストリスも不思議そうに、
「かき混ぜるだけならボクが、」
 しかしラディッシュはすかさず、

「ううん。これは多分、タープさんが適任で、タープさんだからこそ「成功率が上がる料理」なんだ♪」
「!」

 そこまで信頼されて「漢ターナップ」が上がらない筈も無く、弾けんばかりの笑顔で、

『やらせて欲しいっス! 任せて欲しいッス!! ラディの兄貴ィ!!!』

 意気揚々、箸を振り被って卵白を仇敵の如くに睨み付け、
「ラディの兄貴が感動する「完璧な混ぜ」を披露して見せるっスゥ!」
 気合いと共に、

『ウヲォオォォォッォオォォオッォオラァアァッァ!』

 眼にも止まらぬ高速でかき混ぜ始め、
 シャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャーーーーーーッ!
 快音を響かせたが、
「う、うん。お願い……」
 少々不安げな笑顔を見せるラディッシュ。
(最初から、こんな勢いで飛ばして……大丈夫なのかな?)
 そして数分後、

『フワっフワっ、なのぉ♪』
『モっコモコ、なんのぉ♪』

 感嘆の声を上げるキーメとスプライツ。
 二人の前にあったのは、液状であったのが嘘のような、木鉢からこぼれんばかりの「泡の山」と化した卵白であった。
いわゆる「メレンゲ」である。
 その傍らには、ゼェハァ肩で息を切らせ、

「ハァ、はぁ、ハァ、こぉ、これでぇ、イイんス、よねぇ兄貴ぃ……」

 期待に応えようと過剰に飛ばし過ぎたターナップが、疲れながらも達成感に満ちた笑顔を見せたが、ラディッシュは、
「ごめん……」
「へぇ?」
 申し訳なさげな笑みを浮かべながら、
「まだ工程の半分なんだ……」
 完成したと思われたメレンゲの中に、卵黄と白糖代わりの果汁を流し込んだ。

(まぁ、マジっすかぁ……)

 心が折れそうになるターナップ。
 炎(やる気)も消えかけたが、
(!)
 パストリスの期待の眼差しと、

「「がんばってなぉ、おにいちゃん♪」」
(!!!)
 双子の声援に、
(お兄ちゃん、だぁとぉおぉおッ!?)
 心が焔となって燃え盛り、

『任されたぁあぁっぁぁっぁぁぁぁぁあぁぁぁ!』

 息を吹き返してエンジン全開、フルスロットル。
 シャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャーーーーーーッ!
 疲れを感じさせぬ「高速かき混ぜ」に、

『『おにいちゃん、ガンバなぉ♪』』

 双子の更なる声援に、

『うっぉおぉおおぉっぉおおぉぉおぉおおぉ!!!』

 限界突破。
 更にギアを上げるターナップ。
 その一方で、困惑笑いのラディッシュ。
(そんなにチカラを込めなくて良いんだけどぉ……)
 内心で思ってはいたが、もはや気力だけで泡立ている彼の心を折る訳にはいかず、あえて生温かく見守った。
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