ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-15

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 村内を歩くラディッシュ達――

 初めて目にしたアルブル国の村の家々は国の端にありながらも、定規を多用して建てたが如くに整然と立ち並び、地面には塵一つ無く、清掃が行き渡った清潔感があり、「国外れの田舎村」と言った印象は無く、潔癖な印象を受ける程に整備されていた。
 王都に至ってはどれほど美しく、どれほど秩序正しく整えられているのか、想像もつかせない「神経質」と思えるほど整った村の中を、ぞろぞろと、そぞろ歩く。

 しばし歩いて後、
「失敗したなぁ……」
 ラディッシュが嘆くようにこぼすと、
「ですわねぇ……」
「そうっスねぇ……」
「でぇすでぇすねぇ……」
「そう、さねぇ……」
「そうだな、ですわよねぇ……」
 ドロプウォート達も続けて嘆くようにこぼし、

((((((門兵に、警備隊駐在施設の場所を聞けば良かったぁ……))))))

 今更ながらに後悔していた。
 しかし、

((((((でも、戻って聞くのは恥ずかしい……))))))

 シャイな似た者同士の集まりであった。

(おやぁおやぁ)

 小さく苦笑する、ハクサン。
 見兼ねた様に、
「この国はね、重要な施設ほど町の中央に置いてるから、たぶん「村の真ん中」を目指せば何かあると思うよぉ」
 至極まっとうな答えに、

「…………」

 物言いたげな眼を向けるドロプウォート。
「ん?」
 気付いた彼が振り向くと、

「何故だか……とても腹立たしいですわぁ」

 ターナップも、

「奇遇っスね、姉さん。俺もっス」

 腑に落ちない様子で、
「極々たまぁ~に「まともな事」を言われると、なんか無性に腹が、」
「ちょっ!」
 憤慨するハクサン。
 毎度のやり取りが勃発するかと言う刹那、

『居やがったぜぇ!』
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 お世辞にも「品が良い」とは言い難い、男の声が。

 振り返ると、そこにはテンプレートで描いたような、ガラの悪い男達が半笑いでラディッシュ達を見ていた。
「何ですの「このモブ」はぁ?」
 ドロプウォートのため息に、

「モブって、言うんじゃねぇ!」

 この世界に無かった言葉に一人が即応し、同人誌愛読者仲間の匂いを漂わせつつも、

『大人しく、そこの「二匹のガキ」を渡しやがれぇ!』

 出会い頭の悪態に、
(狙いはキーメとスプライツ?!)
 ギョッとする父親(ラディッシュ)。
 その一方で「可愛い我が子を差し出せ」と言われて、黙っていられる母親が居る筈も無く、

『もぅ一度、言ってみなさいなのですわァアァ!』

 父親が手加減を要求するより先、母親(ドロプウォート)は悪漢たちを既にボコボコに殴り倒し、

((((((可哀想に……))))))

 憐れむラディッシュ達の前で、悪態吐いた男の胸倉を鬼の様な形相で掴み上げ、

「「「「「ひぃ~いぃぃぃぃっぃいぃ! ごめんなさぁあぁぁい!」」」」」

 泣いて平謝りする仲間の男達に、

『二度とワタクシたちの前に現れるなァですわァアァ!!!』

 怒り心頭の御様子で軽々投げつけ、
「「「「「ぐへぇ」」」」」
 呻き声を上げる、男達。
 しかし人質(仲間)が解放された事で、今の今まで土下座しそうな勢いで謝罪していたにもかかわらず、即座に立ち上がり、

『俺たちに「こんな事」して、タダで済むと思うなよ!』

 強気を前面に押し出し、
「俺たちは正式な「冒険者」だぞぉ!」
「これは「正式な依頼」なんだぞぉ!」
「「そうだぁそうだぁ!」」
 負け惜しみとしか取れない苦言を喚いたが、怒れる母親は動じる様子も見せず、むしろ更に怒りを増し、

 ダァアアァン!

 憤怒の表情で激しく地面を踏み鳴らし、正規の冒険者だと名乗った男達は、

「「「「「ひきぃ!」」」」」

 恐怖のあまり、飛ぶように震えあがると、

『『『『『おっ、覚えてろよぉおぉぉおぉぉおっ!』』』』』

 負け犬の遠吠え、よろしく逃げて行き、

『一昨日来やがれぇなのですわァ!!!』

 母は塩でも撒く様に吐き捨てた。
 その一方で、父には気になる事が。
「ねぇ、ハクさん。あの人達が言ってた「冒険者」、」
 尋ねようと振り返ると、
(?!)
 ハクサンは問い掛けに気付かないほど、
「…………」
 あまり見た事の無い真顔で、何ごとか思い耽っていた。

「……ハクさぁん?」

 更なる問い掛けに、
「ん? あ、何か言ったのかい、ラディ?」
 彼の表情は瞬時に、いつも通りに戻り、その異変も気掛かりの一つではあったが一先ず、
「う、うん。その……冒険者って?」
「あぁ、冒険者ね。何処の国にもある組織の一員で、国からの雑務を請け負って報酬を得る、要は「何でも屋」の事だよ」
「そうなの?」
 ニプルやカドウィードにも問うと、この世界では常識の事らしく、二人は補足の一の句も無く頷いた。
 しかしそれは逆に言えば、

(この国が二人(キーメとスプライツ)を誘拐しようとしたって事ぉ?!)

 話は急に大ごとになり、背筋が冷たくザワついたラディッシュは、

「ハクさん!」

 解説を求めようとしたが、ハクサンは彼が二の句を告げるより先、

「理由なら、ぼくぃも分からないよ」

 いつになく真剣な表情で、
「ただ、この国が絡んでいる可能性があるとなれば、二人を警備隊に渡すのは危険な気がするね」
 怯えた表情で父ラディッシュと母ドロプウォートにしがみつくキーメとスプライツを見つめた。
 平穏に思われた時間は瞬く間に崩れ去り、ラディッシュは、

『一刻も早く村からも出よう!』

 追いつ、追われつの、世間一般的非日常的の、彼ら彼女たちにとっての日常に戻って行った。
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