ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-16

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 森の中を進むラディッシュ達――

 誰が敵で、誰が味方かも分からぬ国の真っ只中で、人目を避けつつ、アルブルの城を目指す九人。
 幼子二人を、大人の背丈ほどの藪から守りながら進む中、ラディッシュが前を行くハクサンの背に、
「ねぇハクさん」
「?」
「聖具って……どうしても、」
「揃って無いと困るのはキミだよ」
 続く言葉を遮り、

「気持ちは分かるよぉ。二人を連れて、今すぐにでもアルブルから出たいんだろ?」
(!)

 見透かされていた事に少々驚きつつ、
「う、うん……」
 するとハクサンは心情に理解は示しつつも、少し困った様な笑みを浮かべ、

「でも聖具を揃えないとラディの体に異変が起きるし、今から逆戻りして無数の敵に追われるより、元凶を絶った方が良いと思うよ。そうしないと二人は、見えない敵から延々と追い回される羽目になるよ?」
「それは、そうだけど……」

 いつ、どんな敵と開戦するかも知れない自身のソバに、幼い二人を置く危険を懸念しての惑いであった。
 するとドロプウォートも残念そうに、
「不本意ながら、今回はハクサンの言う事に一理がありますわぁ」
「不本意って……」
 苦笑交じりのハクサンを横目に、嘆くように吐露し、

「年端も行かぬ幼き二人には些か酷な現実ですが、今の二人にとって「この世界で一番安全」なのは、「私達の傍ら」と言えますわ」

 その意見には仲間たちも同意らしく、ラディッシュを見つめて頷き答え、
(やっぱりそうか……)
 ラディッシュも腹を括ると、ドロプウォートと自身の間で守られながらも逞しく、小さな手と足で藪を掻き分け進む幼子二人を憂いた表情でみつめ、
「せめて二人が「何処の町から来たのか」が分かればなぁ……」
 こぼす様に呟くと、キーメとスプライツがクルっと振り返り、

「ん?」

 二人は逃走中の身であるのを何処まで理解しているのか、まるで探検として楽しんでいるかのような笑顔で、

『『アルブレスなぉ♪』』
「あ、あるぶれすぅ?」

 首を傾げるラディッシュ。
 この世界の住人ではないが故に地理に疎く、その様な反応になるのは当然と言えたが、

『『『『『『アルブレス!?』』』』』』

 ドロプウォート達は驚愕の声と共に足を止め、
「え? 何何?? そんなに驚く事なの???」
 戸惑う彼に、

「当然なのですわ! この国の首都ですわ!! 王都ですわ!!!」
「大人の足で歩いて何日かかると思うのさ!」
「ボクでも遠いのが分かる(一般常識的な)話なのでぇすぅ!」
「有り得ない距離だ、ですのよぉ!」
「子供の足だと途方も無い距離なんだよ、ラディ」
「いったいどうやって、んな距離を歩いて来やがったんだぁ?!」

 大人たちが驚きを隠せない一方で「何を騒いでいるのか」と言わんばかりの、
「「?」」
 愛らしいキョトン顔を見せるキーメとスプライツ。

 そんな二人に、スグにでも尋ねたい疑問は次々湧いて来たが、一先ずドロプウォートが仲間たちを代表して、逸る気持ちをグッと押し留めながら、努めた笑顔で、

「御二人はぁ、どぅやって来ましたのぉ?」

 すると二人は、
「「うぅ~んとぉ……」」
「「「「「「「…………」」」」」」」
 固唾を呑んで答えを待つ仲間たちを前に、空を見上げてしばし考えた後、

『『わかんなぁい♪』』
(((((((?!)))))))

 見事な肩透かしに大きくコケたが、その「天使のような笑顔」に、母ドロプウォートの目尻は下がり、

「ですわよねぇ~♪ 分かったら苦労しませんですわよねぇ~♪」

 満面の笑顔を返しながら、二人の頭を撫で撫で。
「「くろぅしなぁい♪ くろぅしなぁい♪」」
 言葉のリズムが琴線に触れ、歌うように謎の連呼をする二人を、

『イイ子ですわぁ♪』

 笑顔で抱き締めて頬擦り。
((((((…………))))))
 そこに、正騎士さえ恐れをなした最強戦士「先祖返り」の面影は無く、

((((((親バカだ……))))))

 内心で苦笑するラディッシュ達ではあったが、これで彼ら、彼女たちの行き先は揺るぎなく確定した。
 目指すはやはり、アルブル国国王の居城が建つ「王都アルブレス」。
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