ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
269 / 895
第四章

4-43

しおりを挟む
 時は今のラディッシュとドロプウォートに戻り――

 ハクサンの存在を階下に感じながら、回廊を走る二人。
 それはケンタウロス達の猛攻を退けた結果であり、次なる戦場(いくさば)に向かっている「緊迫のさ中」であったのだが、何故か互いに、
「「…………」」
 どこか気恥ずかしげな赤い顔。

 見た目のなりふりを、強いて言うなら「付き合いたてのカップル」か。

 そんな、謎の初々しさを見せる二人は扉の開け放たれた「とある一室」に駆け込み、
「「!?」」
 そこは入り口の大きさからは到底想像できぬ、巨大な地下空間。
 ちょっとした城が一つ入りそうな程の空間に、天井を支える支柱などは見当たらず、真上に巨大な城が建っていると思えぬ光景に息を呑む中、
「「!」」
 目に留まったのは、全身青アザだらけの剣豪サジタリアとグラン・ディフロイスの姿。

 入って来た二人にも気付けない様子で、剣を支えに肩で息を切らせ、

「ワレ、左腕は、どうした?!」
「利き腕を、庇った拍子に、潰されたダケ、だよ、先輩♪ ホント、それに、血止めは、したしねぇ」

 ハクサンを追い詰めた筈が、追い詰められた状態であるのが一目瞭然であった。
 素顔を晒したグラン・ディフロイスと対面するのは初めての二人。
 しかし、

((この気配は、あの時の!))

 瞬時に同一人物であると理解し、同時に並外れた剣士であるのを、その身に纏う存在感から改めて感じ取りもした。
 そして、その様な「剣豪二人」に、片膝を地に着かせそうなほどのダメージを与えたのは、当然、

((ハク(さん・サン)ッ!))

 用途不明の操作パネルの前に立ち、その身を白き輝きに包む彼であった。
 息一つ乱した様子も見せず、余裕の半笑いさえ浮かべながら、満身創痍の方の二人を見下ろし、
「キミ達ぃ、ぼくぉナメ過ぎじゃない? 何だい、その中途半端な攻撃はぁ? ぼくぁ「百人の天世人」の「序列一位」なんだよぉ?」
 嘲笑ってから、
「!」
 新参の入室者二人(ラディッシュとドロプウォート)に視線を移し、
「随分と手間取ったようだねぇ♪」
 皮肉を口にした途端、
「?!」
 何かに気付いて、

『ハーハッハッハッ!』

 突如、愉快げに大笑い。
 肩で息を切らせるほど疲弊したサジタリアとグラン・ディフロイスは、笑いの意味が分からず、

(なんだ……?)
(なんだろ……?)

 視線を交わし合う中、彼は「愉快」が収まらない様子で、

「キミ達ぃ「誓約」はどぅしちゃったのぉ♪」

 ラディッシュとドロプウォートを指差し、
「すっかり消えちゃってるじゃないかぁ♪」
「なんだとっ?!」
「ウソでしょっ?!」
 慄くサジタリアとグラン・ディフロイス。

 先に感じた「チカラの波動」は二人がよく知る「誓約の輝き」に他ならず、ハクサンの冷やかしを含んだ物言いに疑いを以て、疲労困憊の表情で新参の二人を振り返り見たが、姿を見るなり古参の二人は、

『なんと!』
『有り得ない!』

 驚愕して続ける言葉を失った。
ハクサンの言った通り、二人からは誓約を済ませた者たちが持つ特有の「チカラの波動」や「輝き」が全く感じられず、

『よっ、よもやワレは!』

 とある考えに至るサジタリア。
 同じに考えに至ったグラン・ディフロイスも、

『まさかの「仮誓約」ぅ!?』

 呆れ交じりの声を上げると、ドロプウォートは「ラディッシュの頬にキス」した一場面を発作的に思い出し、
「ッ!」
 羞恥で真っ赤な照れ顔して、

『手も繋いでおりませんのにぃ公衆の面前で「接吻」などぉ出来ませんですわぁあぁっぁ!』

 同じ顔したラディッシュと二人揃って、両手で顔を覆い隠した。
 誓約に必要な物、それは「勇者と誓約者」の「誓いのキス」であった。

『「手繋ぎ」などとぉワレは童(わらべ)かぁ!』
『ホントぉ、公衆の面前ってぇ馬人(ケンタウロス)が二人ダケでしょが!』

 堪らずツッコミを入れる二人に、

『『恥ずかしいモノは恥ずかしいん(でぇす・でぇすわ)!』』

 逆ギレ気味に訴えるラディッシュとドロプウォート。
 この戦いは、世界の命運が懸かった戦いである。
 その重大局面にありながらの、まさかの「初(うぶ)過ぎる反応」に、

((駄目だコレは……))

 絶句するサジタリアとグラン・ディフロイス。
 このままでは「敗戦の色が濃い」と悟った二人は、余裕を以て見下ろすハクサンを、腹を括った表情で見据え直し、
「どぅやらワレは此処(ここ)で、」
「ホント、死ぬ気で戦うしか無いようだねぇ」
 新たな「勇者」と「誓約者」に見切りをつけ、その「事実上の戦力外通告」に、

『ぬぅわぁんですってぇえぇ!』

 闘争心に火が点いた眼の色に変わるドロプウォート。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

処理中です...