ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
277 / 895
第四章

4-51

しおりを挟む
 隔絶を応用した立方体の攻撃を一瞬でも緩めれば、懐に入り込まれ、致命傷を免れない緊迫の状況下、

「さあラディ! 疲れの見えて来たキミは、いったい何処まで持つのかなぁ?!」

 未だ勝ちを確信した余裕の笑みを「獣の顔」に浮かべると、

『ハァクゥサァァァン!』

 怒りの籠もった叫び声が。
「ッ!」
 妖狐ハクサンは咄嗟に反応、即座、反射的に立方体の幾つかを眼前に集め、

 ズゥドォドォオォォォ!

 何かが直撃して爆裂。
 派手な爆炎こそ上がったが、

『今さら小賢しいぃ!』

 ダメージは無く、苛立ち露わにしたが、サジタリア達の攻撃に気を取られている場合ではなかった。
「ッ!」
 その様な隙を見せようものなら、ラディッシュが間隙を縫って直接攻撃が可能な距離に入り込んでしまうから。
 しかし事態は、彼にとって都合の良い方へ。

『ガルァア!』

 狂戦士ラディッシュの敵意は、強敵との戦いに水を差す形となったサジタリアとグラン・ディフロイスに向けられたのである。
 獲物(強者)を「横取りされる」とでも、本能的に思ったのか。
 常軌を逸した彼の表情からでは、獣と化したハクサン以上に、その真意を測る事は不可能であったが、

『ガァルゥラァアァア!』

 彼は確かな怒りを以て、迫りつつあった二人の方へ駆け出した。
 これは起こりうる可能性のあった事態であり、自滅希望としか思えない彼らの行為に、
「浅はかだねぇ♪」
 獣の顔で、嘲笑う妖狐ハクサン。
(ぼくぁ手を下す必要もない♪)
 高みの見物を決め込んだ刹那、白銀の光にその身を包み駆け迫っていたサジタリアが、

≪ワレ、天世の恩恵を以て!≫

 白銀の輝きを更に増し、迫りつつあった狂戦士ラディッシュに人差し指を差し向け、

≪五体緊縛ッ!≫

 指先から鎖のように連なる白銀の光が、

『ガルァア!?』

 蛇の如く体に巻き付き、動きを封じ、彼がその場に倒れると、
 妖狐ハクサンは、
「クックックッ♪」
 不敵に笑い、

『好機!』

 動きを止められた狂戦士ラディッシュに、立方体をぶつけようと試みた。
 しかし、意識を彼の方に向けた途端、

『ホント、そんな無粋なマネはさせないよ♪』

 眼下で、剣を向け構えたグラン・ディフロイスの姿が。
 いつの間に、距離を詰めたのか。

「!!!」
(しまった! コイツには気配無く一瞬で間を詰めるはコレ(天技)があった!)

 ラディッシュへの攻撃を即座に中止し、今まさに一撃を喰らわせようかと構える眼下のグラン・ディフロイスに向け、
「ぬっくぅ!」
 慌てて立方体を操作し、ぶつけた。

 足下から立ち昇る激しい土煙に、勝ちを確信する妖狐ハクサン。
 獣の口をニヤリと歪めたが、

『ホント、戦術に関しては甘々だねぇ♪』
「!」

 土煙の中から横っ飛びで、愛らしい笑顔のグラン・ディフロイスが飛び出し、
「クッ!」
 妖狐ハクサンが悔し気な表情で睨んだ途端、

『ワレは、何処を見ておるか』
「ッ!」

 側面からサジタリアの一刀が顔面に迫り、
『ちょこまかと鬱陶しいぃ!』
 苛立ちながらも立方体を素早く動かし攻撃を加えようとしたが、それは彼の一刀はフェイント。
 斬ると見せかけ刀を止め、

≪天(あま)の光(ひかり)!≫

 刀身から爆発的な白銀の光を発光し、妖狐ハクサンの眼を、ほんの一瞬だけ眩ませると、

『ホント、こっちが本命なんだよねぇ♪』

 グラン・ディフロイスが背後から斬り掛かり、しかし、

『その程度ぉ!』

 妖狐ハクサンは立方体の攻撃に加えて、尾による攻撃も追加。
「うわぉっとぉ♪」
 おどけながら回避。
「ホント、流石に簡単には、首を取らせてはくれないかぁ~♪」
 二人が反目し合っているとは思えぬ、絶妙なコンビネーションで妖狐ハクサンの注意を引き付けていた頃、動きを封じられた狂戦士 ラディッシュの下に近づく人影が。
 それは、

『ガァルァアァァ!』

 捕えられた猛獣のように、あがく彼を、
「ラディ……」
 悲し気な表情で見下ろすドロプウォート。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな
ファンタジー
 王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。  それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。  死んだはずの私が目覚めたのは・・・

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...