ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-55

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 視線の先にあったのは、黒狐ハクサンの無数の分身体(ぶんしんたい)。

 頭数を数えただけで戦意が萎えそうになる量ではあったが、サイズは本体より幾分小さく、感じる存在感も本体よりは弱めであった。
 しかし、謁見の間に出現した強力な合成獣キメラを遥かに凌ぐ威圧感から、戦闘力の高さを覚え、

『こんなのぉ、どうやって黒狐に近づけば良いんだよぉ~』

 思わずラディッシュは、いつも通りの「弱気な嘆き」を上げた。
 先程までの「英雄らしい勇ましさ」は何処へやら。
 とは言え現状を鑑みれば、彼が嘆きたくなる気持ちは最もで、剣豪サジタリアは呆れる事なく、

『案ずるでない!』

 弱きを一蹴する強気で以て、
「彼奴(きゃつ)の下までは、ワレとグランで道をつけてやる」
 御指名を受けたグラン・ディフロイスも、
「ホント、その勝手な略称は止めて欲しいんだよねぇ、先輩♪」
 お約束になりつつある苦言を呈した上で、
「勝率を上げるには、まぁそうなるよねぇ♪」
 愛らしい笑顔を見せると、四人は、いつ襲い掛かって来てもおかしくない黒狐軍団と対峙して身構え、再びとなる激戦の火ぶたが切って落とされようと言う刹那、

≪天世より授かりし恩恵を以て我らは戦う!≫ 

 唐突に響いた聞き覚えのある声に、
「「!」」
 ラディッシュとドロプウォートが瞬間的に笑顔を見せ合うと、

≪天雷夜行ッ!≫

 耳をつんざく激しい雷撃が地を駆け抜け、小黒狐(しょうこっこ)軍団の一部である数匹を巻き込み焼き消し、

『待たせたねぇ! ラディ! ドロプ!』

 現れたのは頼れる仲間たち。
 術を放ったニプルを先頭に、パストリス、カドウィード、そしてターナップに護られる様にチィックウィードの姿も。
 誰一人として欠ける事なく、大きな怪我も無く、ラディッシュとドロプウォートは仲間たちの無事な姿から活力を得て、

「僕たちも負けてられないねぇ!」
「無論ですわぁ!」

 満面の笑顔で気勢を上げると、

『行こう、ドロプ!』
『ハイですわァ!』

 頷き合い、

(((((どっ、ドロプぅ?!)))))

 駆け付けた仲間たちが抱いた「素朴な疑惑」をよそに、

≪我がチカラァ! 内なる天世のチカラを以て、≫
≪誓約の理より生まれし我がチカラ! 真なるチカラを以て、≫

 二人は声を揃え、

≪≪立ち塞がりし脅威を打ち払わぁん!≫≫

 爆発したかの様な眩き「白き輝き」を全身から放ち、
「ドロプ!」
 ラディッシュが何事かアイコンタクトすると、
「ハイですわ!」
 ドロプウォートは以心伝心で頷き、右手を仲間たちに、左手をサジタリアとグラン・ディフロイスにかざし、

≪光の護り!≫

 彼ら彼女たちは、
「「「「「「「!」」」」」」」
 その身が「白き輝き」に包まれた。

 戦闘力を底上げすると同時、黒狐ハクサン軍団が放つ過剰に濃密な、地世のチカラに汚染されない為の加護である。
 その光はどこまでも温かく、

(((((ラディの輝き)))))

 笑みを浮かべる仲間たちの姿に、
(戦士には向かぬ男よな……)
 変わらぬ鬼瓦の口元に、微かな笑みを浮かべるサジタリア。
 そして、
(ホント、甘いねぇ。敵である私にまでさ……)
 裏腹に、彼の優しき天世の光に纏われ、思い耽った穏やかな笑みを浮かべるグラン・ディフロイス。
 過ぎ去りし遥か過去に、思いを馳せ。
 浮かぶは「当時の魔王」討伐の折、共に戦った仲間たちと、激戦の合間に見せ合った屈託ない笑顔。

 それぞれに感じた何かはあったものの、時は容赦なく、足踏みしている間にも無辜(むこ)なる人々の命は次々奪われている筈であり、ハクさんとの決着を急ぐラディッシュは気勢を以て、

『行こう、みんな!』

 再会の喜びも束の間、ニプルたちは気合の入った頷きを返すと、小黒狐たち目掛けて四散し、戦闘は開始された。
 その戦いぶりには安定感があり、ラディッシュのチカラの加護があるからとはいえ、強敵キメラ軍勢を退けた自信からか、一回りも二回りも成長した「鬼神」と呼ぶに相応しい強さで、より強敵である筈の小黒狐を次々斬り消し、殴り消していく。

 中でも目を見張ったのは、チィックウィード。
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